醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより   1459号   白井一道

2020-07-08 16:37:58 | 随筆・小説



  自由という不自由に苦しむフリーランス



呑助 辻井伸行さんは盲目のピアニストとして今や世界的なピアニストになっていますね。
侘助 まさに自由が謳歌できるピアニストになっているように思うな。
呑助 才能があるということは素晴らしいことですね、
侘助 才能のない人は学校のピアノ教師になったりしているように思う。中には大学の教師になっているピアニストもいるように思うけれど。
呑助 将棋の藤井聡太さんのような才能の持ち主もいますね。17歳の高校生でありながら、年収は2000万円以上あるようですよ。
侘助 そおらしいね。才能のある人はいいね。でも大半の人にはそのような跳びぬけた才能の持ち主はいない。
呑助 自由というのは、そのような跳びぬけた才能の持ち主にのみ与えられたもののように思ってしまいますね。
侘助 そうなのかもしれないな。日程や収入にしても辻井さんなどの場合は自分の都合や希望が受け入れてもらえる場合が多いように思うな。
呑助 それに対して名の知られていない無名の音楽演奏家などの場合は、音楽事務所などの言う事を聞かなければ仕事がない状況なんでしょうね。
侘助 また収入も自分の希望する額が得られるというものでもないように思う。
呑助 落語家や色物の漫才師や手品師などの場合もフリーランスのようですが、厳しいようですよ。収入がほとんどない状況が若いころはあるみたいですから、アルバイトをしての修行生活があるみたいですよ。
侘助 コロナ禍でフリーランスの仕事をしている人々には何の保障もなく、セーフティーネットが無く、部屋代が払えなくなった人がホームレスになった人がいるようだ。
呑助 自由というのは恐ろしいものですね。
侘助 そう自由は厳しい。自由とは恐ろしい。何の制約もなく、一日を過ごすことは大変なことのようだ。人間は制約されて生活する事によって安心するようなところがあるからね。
呑助 フリーランス。この言葉は格好いいね。格好いいだけ仕事して生活するのは厳しいということですか。
侘助 別の言葉で言うと、日雇い仕事ということだからね。日雇いをフリーランスと言ってごまかしているのかもしれない。多様な働き方を推進していきたいと舛添氏が何かの大臣をしていた時話していたが、労働の現場を知らない人間の言う事のように感じたな。
呑助 働き方の自由には、何の保障もない。だから飢える自由があることを政府は何も説明しなかったということですかね。
侘助 健康保険は国民健康保険で社会保険と比べて幾分割高のようだが、自治体が運営しているので自治体によって運用が違っているようだ。都市部の豊かな自治体の場合は良いが自治体財政の厳しい自治体もあるからね。
呑助 フジテレビに勤めていた人がフリーランスになったら、勤めていた時の半分の収入を得るのも精一杯だったと話していましたよ。
侘助 新聞やテレビの業界も徐々に厳しくなってきているという話を聞くね。
呑助 それが徐々に拡大しつつあるという状況もあるということですか。
侘助 社会は悪くなっていくと言うか、確かに一部の人は良くなっていくが大半の人の生活は徐々に悪くなっていくということか起きている。
呑助 今までごく普通に生活していた人が夜の電気代を節約するために早く寝るという話を聞きましたよ。
侘助 そう、東京では都営住宅が貧しい高齢者住宅になっているらしいね。
呑助 そおらしいですよ。家を建て、出て行った方の後には貧しい高齢者が入居してくるらしいですね。
侘助 夫婦二人の高齢者がかつかつの生活している都営住宅がいくつもあるらしいからね。
呑助 私にも知り合いがいますよ。彼には息子がいました。その息子が大学二年の時に家に閉じこもり、四十歳になりましたよ。その息子と老夫婦が都営住宅に居ますよ。
侘助 世の中には身体に障害を抱えていてもそれを障害とすることなく、世界的なピアニストになる人がいる一方で家に閉じ籠ってしまう若者がいる。いや定年退職後家に閉じ籠る老人もいる。