はじめに木があった
なにがかなしいのかわからなかった
なぜいたいのかも
だから
さびしかった
木はじぶんをしらない
わたしが
じぶんをしらないように
いつか
こどもはみな
こどものように泣けたのだろうか
そして
おとなになったこどもは
あのときよりはとつぶやき
こどものようには泣けなかったのだろうか
ここは
踏切ですよ
とだれがおしえてくれるのだろう
すきまをぴしりととじる唖の木
のまえにいた
(佇とうと して、
描写することができない
慎ましく
くらんでゆくすくい
などない
から
わたしは
これからは
いつまでも
口のなかでつぶれる
はじめましての
木とともだちでいられる
H10.11.13