毎夏、実家へ子連れで行っていた頃
父が同年の友人が剣道を教えている
道場へ連れて行ってくれた
父と共に老いた友人の
剣の仕種は
身を放したように
かるくかるく
見ほれた
87で父が亡くなり通夜の際
実家の玄関で
妹と並んで手をつき頭を下げていたら
その友人が
木の根のような太い杖にすがり
支えられて
のっと玄関を上がり
(おゝ
あなたは
と声をかけた
痩せた体はさらにかるいはずなのに
全重量は重かった
この方も
じきにとかなしかった
それでも通夜に来て下さったのだ
かるい剣さばきと
木の根のような太い杖を忘れられない
R3.3.20