鱗雲
遅く起き出してバナナをもそもそ食べる
空に鱗雲が広がっている
いつのまにか秋が来ている
外へ出ると
風がひやっとした
金木犀の香りがする
あわててマスクをして歩きはじめる
通りを歩く人の
話し声がくぐもっている
言葉がさだかでない
銀行の前に人が並んでいる
ATMを使う人が距離を取っているので
建物からはみ出してしまう
仕方なく一番後ろに並ぶ
空を見上げると
きっちり間隔をとった一枚一枚が
くっきりと見え
雲はさらに遠くまで延びている
とてつもなく大きな魚が
空を渡ってゆく
本当は私たち
泳いでいるのかもしれない
行き先がわからないまま
*
彼女は私と同時に「詩学」で新人になった。
彼女は同人誌を始めると、毎年1~2回送って下さった。
私は詩を書き出して、2年と3年、計5年書かない時期
があった。
その間にも、彼女は同人誌と詩集を送って下さった。
私は殆ど詩を読まないので、私の詩が続いたのは、
彼女のお陰かもしれない。
この作品は、彼女独自の堅さがなく、ゆったりと大きく
秀逸な作品だと思う。最終2連が、いい。
彼女のこれからの、作品も楽しみです。