長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

赤川次郎著【鼠、十手(じって)を預かる】

2023-01-06 16:50:01 | 本と雑誌


謎と人情が絡み合う〈鼠〉シリーズ第12作目。

江戸を騒がす大泥棒、目明しとなり悪を討つ!?

昼は遊び人の、通称甘酒屋こと次郎吉、その本業は義賊の大泥棒〈鼠〉。
恨み嫉みが蠢く町を情の光で照らすため、鼠は今日も江戸を駆け巡る。
弱きを助け、強きから「盗む」大泥棒の今宵の獲物は…---

〈壱〉『鼠、無名橋の朝に待つ』
凍えるような雨の朝、古びた橋の上にたたずむ娘「真美(まみ)」、彼女の待ち人とは。

〈弐〉『鼠、十手(じって)を預かる』
捕物に遭遇した次郎吉、成り行きで負傷した目明し「定吉」の代わりを務めることに。

〈参〉『鼠、女にかげを見る』
小袖が浪人から助けた女「紫乃(しの)」。「いずれ斬られて死ぬ身」と語るその理由は。

〈肆〉『鼠、隠居を願う』
千草が殺しの疑いでお縄に。隠居武士「藤原赤山(ふじわら せきざん)の妾(お葉)」宅で起きた事件を解き明かす。

〈伍〉『鼠、獣の眼を見る』
江戸中を恐怖に陥れた、人をかみ殺す赤い眼の狼。狼を操る女「寿賀(すが)?」の目的は。

〈陸〉『鼠、恋心を運ぶ』
奉公先で漆の箱に入った書状を託された「お里」。運び出すのは命がけで—。

浅田次郎著【兵諫(ビンジェン)】

2022-03-20 01:25:11 | 本と雑誌


謀略の生贄か、救国の英雄か。
二・二六事件の死刑囚、村中孝次(むらなか たかじ/元陸軍歩兵大尉)が語る蹶起の真相。
西安事件の被告人が訴える叛乱の首謀者。
日本と中国の運命を変えた2つの兵乱には、いかなる繋がりがあったか。

「兵諫(へいかん)」とは、兵を挙げても主の過ちを諫めること…。

日本で二・二六事件が起きた1936年。中国の古都、西安近郊で、国民政府最高指導者、蒋介石(ジャジェシイ)に張学良(チャンシュエリャン/東北馬賊の王・張作霖{チャンヅオリン}の長男)の軍が叛旗を翻すクーデターが発生。
蒋介石の命は絶望視され、日米の記者たちは特ダネを求め、真相に迫ろうとする。
日本では陸軍省軍務局長永田鉄山(ながた てつざん)が、革新将校の急先鋒である相沢三郎(あいざわ さぶろう)中佐に斬殺され、陸軍参謀本部という秘密の匣の中で、鉄山のカリスマ性を引き継いだ石原莞爾(いしわら かんじ)大佐が情報を操っており、一方中国では西安事件の軍事法廷で、張学良は首謀者ではないとする証言がなされた。
現代中国の起点となった事件の現場に起つ救世主は誰か…?

「蒼穹の昴シリーズ」第6部、事件の角度を変え、その真髄に迫る軍事法廷ミステリーで表わした、著者渾身の秀作である。

*=「蒼穹の昴 上・下」「珍妃の井戸」「中原の虹 4巻」「マンチュリアン・リポート」「天子蒙塵 4巻」


西澤保彦著【探偵が腕貫を外すとき(腕貫探偵巡回中)】

2021-07-15 22:35:38 | 本と雑誌


腕貫ってなに?うでぬき。事務仕事中に袖が汚れないように嵌める筒状の布製品。
両腕セット2000円程度で購入可能です。
安楽椅子探偵の新ヒーローは正体不明な公務員!
市民サーヴィス課・臨時出張所
ご意見、ご要望、個人的なお悩みもお気軽にどうぞ。

『贖(あがな)いの顔』
漆島和哉(うるしま ともや)は兄の浩範(ひろのり)から、勤めている福色(ふくしき)通運を辞めることを打ち明けられる。
しかも4月4日までに…。
浩範の身に生じたのは、それは一昨々年4月4日から始まる。
三年前の4月4日午後四時頃、〈ミラ・ボレロ〉というマンションに立ち寄った。
鳩が一羽406号室(ラグビー部の先輩・忠津川〈ただつがわ〉の部屋)に強烈にぶつかるのを目撃した。
後で知ったが、同じ4月4日に忠津川は、部屋のベランダから転落死していた。
一昨年の4月4日には〈タワーハウス櫃洗(ひつあらい)〉に荷物を届けにいったら。
そのマンションの4階の真ん中あたりの部屋に、鳩が猛烈に突っ込んできたのを目撃。
その部屋の住人兵本(ひょうもと)という人物が、青酸カリで服毒死していた。
そして昨年4月4日午後四時にならんとする時、〈イヒツ・レジデンス〉というマンションの401号室の和辻直(わつじ ただし)さんへ配達にいき、インタホンでちゃんと応答があったので、部屋へ向かったら、その和辻さんがミニスカート姿の小柄で華奢な女を刺し殺していた。
そして三度、鳩が部屋に突進してきた…。
浩範自身呪われているかのような恐怖を感じ、今年も4月4日が迫ってきているのだった…。

『秘密』
水無瀬清広(みなせ きよひろ)氏は、自分(佐浦滋比呂〈さうら しげひろ〉の代わりに殺人犯として服役してくれた恩人であった。
もう四十年も前の話で、爾来一度も相まみえることもなかった、その水瀬氏の死去知り、今日は葬儀に駆け付けたが…。
未だに不思議なのはなぜ水無瀬氏は、自分の身代わりになってくれたのかだった…。

『どこまでも停められて』
腕貫探偵に相談にきたのは、〈タワーハウス櫃洗〉最上階15階の角部屋住む速水本一郎(はやみ もといちろう)であった。
自分が借りている駐車スペースに、必ず月曜日の朝、よその車が駐車されている。
自分は車を持っていないが、マンションの資産価値が落ちるとの不動産屋の口車に乗ってしまい、借りている次第だが、勝手に停められるのは心外である。
ナンバーを調べて管理会社か警察に知らせようとするのだが、駐車場に降りたら、もう車はいない…。

『いきちがい』
住吉ユリエ(腕貫探偵をダーリンと慕う女子大生のお嬢様)の企画で、霧乃星(きりのほし)幼稚園の同窓会を開催した。
十年後に開封される予定のタイムカプセルが、みんな忘却していて、別の工事の折に掘り出された。
そこでユリエは1席もうけることにしたのだが、参加者は当時の担任の国香祐子(くにか ゆうこ)先生・ユリエ・小泊瀬海人(おはせ かいと)・富里奈緒美(ふざと なおみ)・村山晴子(むらやま せいこ)そして、丸茂大輔(まるも だいすけ)、彼というより彼女と表現する方があっているような、栗色のショートヘアの若い娘に変貌を遂げていた。
どうやら華の女子大生、ではなく、男子大学生らしい。トーンがやや高めの、普通の女性のものとしか聴こえない声でそう明かされても他の出席者たちはなかなか信じられないらしく、揃ってぽかんと口を半開きにしている。その胸の膨らみやウエストの括れはもちろん、ひとりひとりに丁寧に笑顔を向ける所作もいちいちコケティッシュだ。
それから、国香先生は遅れてくるとのことだった…。
さぁそれら様々な要因が、殺人事件のトリガーを引くことになろうとは、誰も予想だにしなかった…。
ユリエは今回の事件に対し、非常に心を痛めるが、ダーリンこと腕貫探偵がそれを癒してくれることだろう…。

黒いスーツとネクタイ、勤務中は装着している黒の腕貫、鉛筆のように細い腕貫探偵であるが、その黒縁めがねの奥の目は、総てを見通し、快刀乱麻を断つごとく謎を解くのである!


太田忠司著【虹とノストラダムス】

2021-06-02 22:10:22 | 本と雑誌


一九九九年、七の月
空から恐怖の大王が降ってくるだろう
アンゴルモワの大王を蘇らせる(復活させる)ために
その前後の期間、マルスは幸福の名のもとに支配するだろう(マルスの前後に首尾よく支配するために)
ノストラダムスの大予言…。
今更ノストラダムスでもないのだが、何故かこの本を手に取ってしまった。
懐かしさもあったかもしれない。

一九九九年七月に人類は滅びてしまう…。
四人の高校生(1年生)が、この「ノストラダムスの予言」を知ってしまった…。
あと25年程で、人類は滅亡する!!
上岡史生(かみおか ふみお)は:そのときが来るまで、誠実に生きよう。
高田仁志(たかだ ひとし)は:どうせ死ぬんだから、やりたいことをする。
新海恵津子(しんかい えつこ)は:何をしても意味はないの、わたしたちは滅びるのよ。
転校生・宮坂鶴文(みやさか つるふみ)は:人間なんか、今すぐ滅びてほしい。
いずれが正しいとも言えないが…。
この作品の主人公ともいえる上岡史生は、八歳の折自転車に乗っていて、トラックと衝突し死にかけた。
その時、虹の橋を見、そこに自分と同じくらいの子供が、途中に立っていた。
白い服を着て白い長靴を履いている。おかっぱ頭に白い帽子を被っていた。
顔つきだけだと男の子か女の子か、わからない。
だが、この橋を渡ると、死に向かってしまう…。
以後実際に虹を見ると史生の周りには、何か異変が起こるようなのだ。
そんな中、何故か新海恵津子が自殺未遂をした。
その後社会的には公害が話題に上る…。(恐怖の大王?)
そして、史生はやがて社会人として活動する。
自動車部品の製造販売の会社の営業マンとして、多忙な毎日であった。
高田仁志は、大学を辞めて、イタリアで料理の修行をするという。
恵津子は占い師として変貌した。
史生はSF小説の新人公募に応募するべく、せっせと書き始めた…。
しかし、落選し、なんとSF新人賞には、宮坂鶴文が受賞していた。
完璧な敗退である…。
やがて月日が経ち、史生は家族を持った、三十七歳になった。
恵津子は新興宗教を立ち上げていたが、折悪しオーム事件で、カルト集団と近隣の住民から忌み嫌われ、辛い立場に立っていた。
最後には解散せざるを得なくなってしまう。
史生も巻き込まれてしまった…。

さて、そして2011年になり、史生は五十の坂を越えた。
一九九九年七の月は何も起こらなく、普通に過ぎて行った。
再びそれぞれに苦い人生を過ごしていた、仁志・恵津子・鶴文との再会を、実に平和に果たすのだった…。

ノストラダムスの大予言については、諸説ありますのでそれを参考にして下さい。
まぁマヤ文明の残した2012年12月22日の、世界の滅亡予言もスルーしましたしね。
ただ今回のコロナウイルスの蔓延は、近代人類にとって最高の試練だとは思います。



西澤保彦著【夢は枯れ野をかけめぐる】

2021-04-29 22:30:38 | 本と雑誌


羽村祐太(はむら ゆうた)48歳求職中、恋人愛人もなく妻帯したこともなく、よって子もなく今や天涯孤独状態、でも意外と、名探偵かもしれない。
円熟のトリックが冴え渡る、西澤ミステリの新境地かなってか?

『迷いゴミ』
50歳を目前にして勤め先を退職し、父親が遺した実家で、一人静かに暮らす羽村祐太。
ある日、高校の同級会に出席した彼は、そこで30年ぶりに再会した加藤理都子(かとう りつこ・今の苗字は膳場〈ぜんば〉)に「人前では説明しにくいアルバイト」をしないかと頼まれる。
持前の勤勉さと休職中という身から、とりあえず、アルバイトを引き受けることにしたのだが、ただそれはゴミの分別だった…。

『戻る黄昏』
羽村祐太はふとしたきっかけで、近所に住む弓削宗則(ゆげ むねのり)と懇意になった。
そもそも祐太が子供のころから、弓削家とは近所ということで、かなり親密な関係だったのだけど…。
ある日のこと弓削の二男である博雄(ひろお)の車を、祐太のガレージにとめてやることになった。
しかし弓削の話によると、博雄のいっていることは何やら怪しいと。
博雄の妻・雪子(ゆきこ)は、弓削の長女・佐智子(さちこ)主催の自然食セミナーの崇拝者で、亭主にも自然食のみ以外、絶対に食べさせない徹底ぶりであった。
そして弓削の長男・明博(あきひろ)は、居場所こそわかってはいるものの、現在音信不通も同然の状態らしい、家族間でも様々な問題を抱えているようだった…。

『その日、最後に見た顔は』
小谷野陶子(こやの とうこ)は、ふとした思い付きで、幼い頃住んでいた裏通りに足を向けたが、そこは禁断の扉を開けてしまったがごとく、彼女にとって禁忌な場所だった。
幼い頃の恐ろしい記憶が蘇ってきたのだ。
だがしかし、懐かしくも恋しい「ユウさん」との再会を果たしたのだった…。

『幸福の外側』
「――いまだから告白するけど、あたし昔、ユウちゃんのことが好き、だったんだ。うん。けっこう本気で」
この言葉は、弓削佐智子が発した言葉…。
急死した弓削宗則氏の葬儀の席での発言だった。
当時、ユウちゃんこと、羽村祐太はまだ中学生、佐智子は大学生だった。
その祐太に葬儀の最中、佐智子は言い負かせられたのだ。
自然食品にこだわる佐智子にとって、衝撃的なことであった…。
宗則氏の遺産配分で、明博・博雄の二人は、死臭漂う実家の継承を拒む。
明博に至っては、遺産相続を放棄してしまう。
ところが佐智子はその総てを了承し、なんと実家を壊し、新たに自然食品専門のレストランにする計画を練っていた。
そして、そこの店長に雪子(博雄の妻)をあて、その補佐として羽村祐太を考えていた。
佐智子は興信所に祐太のことを調査させ、結果、祐太の職歴は抜群で、県下の某大手のデパートの外商部に所属、しかも飛び抜けて優秀な営業成績を残し、四十になる前に課長に、そして昨年、勧奨退職で辞職する直前には、外商部副部長にまで昇りつめていた。
そして、そのデパートは祐太が退職した後は、業績が下落しているという。
その先を読んだ祐太の嗅覚にも、佐智子は大いに力量の凄さを見た。
茫洋として頼りない風貌からは、まったく想像できない実力を持っていた。
ただし、本人は単なる結果論で、自分の実力がなした結果なんぞと、夢にも思っていなかった。ただ希望退職を会社が募り、もう自身で限界を感じていたので、それにのっただけのことである、それに、飲食関係の経験もなかった…。
よって祐太はこの話を一笑にふし、拒むのだった…。
彼としては「接客業なんて、そんなむずかしいこと、わたしは無理です」
これは今後いったいどうなるのか…。

『卒業』
膳場詩織(ぜんば しおり)は、実は加藤理都子こと膳場理都子の娘で、大学生。
羽村祐太と母・理都子の関係を疑ったのだが、自分の祖父母・加藤清治(かとう きよはる)と加藤祥子(しょうこ)のまだら呆けのせいで、総菜を買いまくってしまうが、ゴミの分別など一切出来ず、羽村に母が頼ってしまっている現状を知り、自分も水曜日と限定された収集日に合わせて、ガレージに手伝いにくるようになっていた。
だが次第に羽村の純朴な性格に、というか自分の父親の母親に対する断然封建的な(今では絶対的に許されない!)態度と正反対の男に恋をしてしまっていたのだった。父親に対してはいつも憤懣遣るかたないのだけれども、母親のことを考え、自分に出来得る様々な補助をしてきた。
そんな詩織の感情を無視するかのように、友人の三留(みとめ)ルナ(続けるとミトメルナ)が、ずけずけと入りこんで、なんと、羽村のゴミ分別のガレージまでついてきてしまうのだった…。

『夢は枯れ野をかけめぐる』
最後は表題作で締める。
実はこの前作『卒業』の最後の方に、羽村へ電話で友人の交通事故の知らせが入り、かなり深刻な状況にあるとのふせんがある、その事故に遭遇した相手は、なんと佐智子であった…。
佐智子は自分がもう長くないとの認識を自らして、自分の財産を羽村祐太に引き継がせたいと、彼に結婚をせまる。
しかし、何か微妙に様子がおかしい…。
そこには著者の成熟した、罠が隠されていたのだった…。

誤字脱字が満載でしたので修正致しましたが、まだあるかも?「そこに愛はあるんか~!!」

はいこれでお終いですよん(^^♪
よく雨が降りましたねぇ…。