羽村祐太(はむら ゆうた)48歳求職中、恋人愛人もなく妻帯したこともなく、よって子もなく今や天涯孤独状態、
でも意外と、名探偵かもしれない。
円熟のトリックが冴え渡る、西澤ミステリの新境地かなってか?
『迷いゴミ』
50歳を目前にして勤め先を退職し、父親が遺した実家で、一人静かに暮らす羽村祐太。
ある日、高校の同級会に出席した彼は、そこで30年ぶりに再会した加藤理都子(かとう りつこ・今の苗字は膳場〈ぜんば〉)に「人前では説明しにくいアルバイト」をしないかと頼まれる。
持前の勤勉さと休職中という身から、とりあえず、アルバイトを引き受けることにしたのだが、ただそれはゴミの分別だった…。
『戻る黄昏』
羽村祐太はふとしたきっかけで、近所に住む弓削宗則(ゆげ むねのり)と懇意になった。
そもそも祐太が子供のころから、弓削家とは近所ということで、かなり親密な関係だったのだけど…。
ある日のこと弓削の二男である博雄(ひろお)の車を、祐太のガレージにとめてやることになった。
しかし弓削の話によると、博雄のいっていることは何やら怪しいと。
博雄の妻・雪子(ゆきこ)は、弓削の長女・佐智子(さちこ)主催の自然食セミナーの崇拝者で、亭主にも自然食のみ以外、絶対に食べさせない徹底ぶりであった。
そして弓削の長男・明博(あきひろ)は、居場所こそわかってはいるものの、現在音信不通も同然の状態らしい、家族間でも様々な問題を抱えているようだった…。
『その日、最後に見た顔は』
小谷野陶子(こやの とうこ)は、ふとした思い付きで、幼い頃住んでいた裏通りに足を向けたが、そこは禁断の扉を開けてしまったがごとく、彼女にとって禁忌な場所だった。
幼い頃の恐ろしい記憶が蘇ってきたのだ。
だがしかし、懐かしくも恋しい「ユウさん」との再会を果たしたのだった…。
『幸福の外側』
「――いまだから告白するけど、あたし昔、ユウちゃんのことが好き、だったんだ。うん。けっこう本気で」
この言葉は、弓削佐智子が発した言葉…。
急死した弓削宗則氏の葬儀の席での発言だった。
当時、ユウちゃんこと、羽村祐太はまだ中学生、佐智子は大学生だった。
その祐太に葬儀の最中、佐智子は言い負かせられたのだ。
自然食品にこだわる佐智子にとって、衝撃的なことであった…。
宗則氏の遺産配分で、明博・博雄の二人は、死臭漂う実家の継承を拒む。
明博に至っては、遺産相続を放棄してしまう。
ところが佐智子はその総てを了承し、なんと実家を壊し、新たに自然食品専門のレストランにする計画を練っていた。
そして、そこの店長に雪子(博雄の妻)をあて、その補佐として羽村祐太を考えていた。
佐智子は興信所に祐太のことを調査させ、結果、祐太の職歴は抜群で、県下の某大手のデパートの外商部に所属、しかも飛び抜けて優秀な営業成績を残し、四十になる前に課長に、そして昨年、勧奨退職で辞職する直前には、外商部副部長にまで昇りつめていた。
そして、そのデパートは祐太が退職した後は、業績が下落しているという。
その先を読んだ祐太の嗅覚にも、佐智子は大いに力量の凄さを見た。
茫洋として頼りない風貌からは、まったく想像できない実力を持っていた。
ただし、本人は単なる結果論で、自分の実力がなした結果なんぞと、夢にも思っていなかった。ただ希望退職を会社が募り、もう自身で限界を感じていたので、それにのっただけのことである、それに、飲食関係の経験もなかった…。
よって祐太はこの話を一笑にふし、拒むのだった…。
彼としては「接客業なんて、そんなむずかしいこと、わたしは無理です」
これは今後いったいどうなるのか…。
『卒業』
膳場詩織(ぜんば しおり)は、実は加藤理都子こと膳場理都子の娘で、大学生。
羽村祐太と母・理都子の関係を疑ったのだが、自分の祖父母・加藤清治(かとう きよはる)と加藤祥子(しょうこ)のまだら呆けのせいで、総菜を買いまくってしまうが、ゴミの分別など一切出来ず、羽村に母が頼ってしまっている現状を知り、自分も水曜日と限定された収集日に合わせて、ガレージに手伝いにくるようになっていた。
だが次第に羽村の純朴な性格に、というか自分の父親の母親に対する断然封建的な(今では絶対的に許されない!)態度と正反対の男に恋をしてしまっていたのだった。父親に対してはいつも憤懣遣るかたないのだけれども、母親のことを考え、自分に出来得る様々な補助をしてきた。
そんな詩織の感情を無視するかのように、友人の三留(みとめ)ルナ(続けるとミトメルナ)が、ずけずけと入りこんで、なんと、羽村のゴミ分別のガレージまでついてきてしまうのだった…。
『夢は枯れ野をかけめぐる』
最後は表題作で締める。
実はこの前作『卒業』の最後の方に、羽村へ電話で友人の交通事故の知らせが入り、かなり深刻な状況にあるとのふせんがある、その事故に遭遇した相手は、なんと佐智子であった…。
佐智子は自分がもう長くないとの認識を自らして、自分の財産を羽村祐太に引き継がせたいと、彼に結婚をせまる。
しかし、何か微妙に様子がおかしい…。
そこには著者の成熟した、罠が隠されていたのだった…。
誤字脱字が満載でしたので修正致しましたが、まだあるかも?
「そこに愛はあるんか~!!」
はいこれでお終いですよん(^^♪
よく雨が降りましたねぇ…。