希望の地を目指し海を渡った少年二人。
新天地から始まる果てしなき道へ。
運命に導かれ、それぞれの楽土を目指せ。
満州の怪人・甘粕正彦、男装の麗人・川島芳子、欧州に現れた吉田茂。
昭和史最大の事件「日中戦争」前夜、大陸に野望を抱き、夢を摑もうとする者たちが動き出す。
そして、希望の光をまとい、かつての英雄が中原の彼方に探し求めた男がついに現れた。
その名は…。
関東軍は白虎張(パイフーチャン)こと、東北王(トンペイワン)張作霖(チャンヅオリン)を謀殺した。
そして張作霖が制覇した東北を、まんまとかすめ取り、そこに満州国を打ち建てた。
そして共和制をしき、清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀(アイシンギョロ・プーイー)をその執政とし、やがては王政に変えるつもりであった。
表向きだけ設えたが、その実は日本の属国、傀儡国家であり、国際連盟は満州国を独立国家とは決して認めようとはしなかった。
だが日本国内では、満州は王道楽土ができたとして、一旗揚げたいってな輩は、とにかく行けと浮かれていた。
執政溥儀にとって、痛打となったのは、関東司令官及び関東長官及び駐満全権大使を兼務した、頼みの武藤大将の急死だった。
ここにもなにか謀略あったのでは?…。
張作霖の息子であり、その跡を継いだかつての東北王の張学良(チャンシュエリャン)は、軍を蔣介石(ジャンジェシイ)に託しイギリスに逃れた。
阿片中毒も治り、ようやく体重も増え体は回復したが、心はまだ病んだままだった。
一方、蒋介石は日本軍と戦わず、紅軍(ホンジュン)共産軍と攻防を続けていた。
その紅軍を指揮するのが毛沢東(マオヅオトン)であった…。
むしろ日本軍と闘っていたのは、かつて張作霖の側近であった馬占山(マーチャンシャン)率いる馬賊たちだった。
神出鬼没の活躍で、中国民たちに人気があった。
蒋介石も馬占山も、張学良が戻ってくることを、強く希んでいた。
さて、天命の具体・龍玉(ロンユイ)を預かる、かつて東北軍の将軍だった李春雷(リチュンレイ)は、野に下ってひっそりと中原の虹の彼方に白虎張が探しあぐねた人が現れるのを、ひたすら待っていたのだった…。
第四巻に続く…。(近日公開予定)