長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

近藤史恵著【インフルエンス・INFLUNCE】

2020-07-30 20:36:38 | 本と雑誌


インフルエンス=景況を及ぼす人。 あくまでも、当ブログの筆者kagetora98(長尾景虎)による主観であります、悪しからずご了承願います。

戸塚友梨(とつか・ゆり)、坂崎真帆(さかざき・まほ)、日野里子(ひの・さとこ)。
大人になった三人の人生が交差した時、衝撃の真実が見える。
「誰にも知られてはいけない。私たちが繋がっていることを」

それは一通の手紙が、女流エンタメ作家に届いたことから始まる。
実は、お手紙を書いたのは、先生がわたしたちの話に興味を持つのではないかと思ったからです。同い年ですし、女同士の関係のことをよく書いてらっしゃいますから。わたしと友達ふたりの、三十年にわたる関係は絶対あなたの興味を引くと思います。
女流作家は一読して、単なるナルシストと一笑にふすつもりだったが、さっと読んだときは、読み落としていたが、文末にこんな一文があった。
実はひとりに、膵臓癌が見つかりました。
彼女が亡くなったあとには、もう話すことはできません。もし間違っていても、彼女は訂正できないからです。
どうか、一時間だけでも時間を取っていただけないでしょうか。
以前新聞で、大阪にお住まいだと読みました。
わたしも大阪です。興味を持っていただけましたらメールや電話などいただけるとうれしく思います。
これらの一文を読み、単なるナルシストではなく、真摯な気持ちがこもっていると思い、一度会ってみることにしたのだが…。
待ち合わせをしたのは、ホテルのラウンジだった。
彼女はおとがいの尖った小さい顔をした痩せた女性だった。
戸塚友梨と名のった。
結局その日だけでは終わらず、あと二日間、計三日間に分けて語られた話は驚愕の内容だった!
彼女の小学生から中学生・高校生・大学生・社会人にわたる、坂崎真帆と日野里子との壮絶な関係と繋がり…。
女流作家も途中で気づく、自分も彼女らと同じ中学で同じ時間を、クラスは違えどもすごしていたことに。
そして、今目の前にいる女性が、母親が持ってきた卒業アルバムより、戸塚友梨とは似ても似つかない別人であることも…。

「あのね、よく聞きなさい。団地で男の人が殺されたの」
知っている。わたしが殺したのだ。
母は続けてこう言った。
「警察に里子ちゃんが連れて行かれたの」

三人の少女を巻き込んだ不可思議な事件。
現代社会の焦燥感と緻密な心理サスペンス!
著者渾身の傑作長編エンタテインメント!

赤川次郎著【7番街の殺人・SLAUCHTHR ON .7TH AVENUE】

2020-07-16 20:36:07 | 本と雑誌

「君は、お祖母さんが誰かに殺されたって知ってる?」
元劇団の女優・三枝彩乃は今、十九歳。
母・佑香は四十六歳になった ところである。
彩乃はひょんなきっかけで、有名女優の中原真知子の付き人を務めるようになった。
ある日知り合った初老の刑事・三ツ橋に、「君は、お祖母さん(厚木邦子)が誰かに…」と訊ねられたのだ。
元々は、ちょっとした!?事件に係わった彩乃は、警察署に呼び出されて、担当の若い刑事の町田進に事情を訊かれていたのであったのだが、無案内な署に着いて最初に応対してくれた三ツ橋に、今度はこのように声をかけられたからだ。
当時は刑事たちの間で「7番街の殺人」と呼称されていたらしい。
しかし、その祖母が殺されたという「望丘(のぞみおか)団地」の同じ部屋「7号棟〈302号室〉」が、なんとドラマのロケ地の中心地になってしまった。
そしてーーー彩乃のお祖母ちゃんの殺害現場。
二十一年前の未解決事件が、カメラの前で今よみがえる!
中原真知子のお世話、母・佑香が入院したのでその看病、どうやら若い女性(山田安奈・しかも妊娠しているらしい)と一緒に失踪した、父・三枝勇介の後始末で超多忙な彩乃の周囲では不審死が続発した、彩乃の祖母の事件を密かに調べていたらしい、三ツ橋刑事の不可解な死、そして団地の管理人・梶谷の踏切での奇妙な死。
そして悪意の手はついに彩乃に迫り来るのであった…。
時を超えて張り巡らされる罠。
ノンストップ青春ミステリー、十九歳~二十歳の三枝彩乃の恋模様も描かれている。
リズミカルでスピーディな赤川次郎のミステリーワールドを、十分にご堪能下さい♪


有栖川有栖著【こうして誰もいなくなった】

2020-07-08 22:50:01 | 本と雑誌


さてさて「有栖川小説の見本市」でござい!とくとご覧あぁれ♪

『館の一夜』
ホラー小説的な展開を見せ、ミステリ風コントのようなオチが付いている。
しかし、全体としてはファンタジーとして読めるのではないか?

『線路の国のアリス』
本書の中で最もはっきりしたファンタジーである。
少女アリスが奇妙な鉄道に乗って冒険をする「不思議の国のアリス」のパロディ。

『名探偵Q氏のオフ』
ふわふわととりとめのない話で、ホラーやミステリとは言いがたいのでファンタジーということに…。

『まぶしい名前』
一種のホラーの一編。

『妖術師』
ダークなファンタジー。
物語の導入部は、谷崎潤一郎の短編「魔術師」の冒頭を少しなぞって、タイトルも谷崎作品に似せてある。

『怪獣の夢』
著者の小学生時代が怪獣ブームの真っ只中だったそうで、怪獣は大好物。
〈著者が考えた最強の怪獣〉に大暴れさせてやろうと試みるも、その目論見に失敗した。
限られた枚数で、〈最強の怪獣〉をある程度の説得力をもって描けなかった。
作中の「熱海には怪獣がよく似合う」は、著者の思いが込められている。

『劇的な幕切れ』
本作の幕切れには救いがないのか、微かにあるのか、読む側に見解の相違があるだろう…。

『出口を探して』
この寓話をホラーと呼ぶのは無理があるかもしれない…。

『未来人F』
江戸川乱歩の「少年探偵団」のパロディ。
本作は乱歩の文体模写をしている。
文字遣いも著者なりに真似ているが、原典を読んでも表記の法則が掴みにくかったようで、あまり読みにくくならない程度に抑えてある。

『盗まれた恋文』
少ない枚数で「恋文をテーマ」にしたミステリなんて無茶振りされて、窮した著者は苦肉の策で「探偵を出せば何とかなる」の境地に至る…。

『本と謎の日々』
著者がまだ専業作家になる前は本屋に勤めていたそうで、その体験をいかして執筆した。
冒頭のエピソードは店頭に立っていた時の経験を、最後の謎は本社の商品部にいた時の経験を基にしている。
作中に登場する「恐妻家のお客」は実際にいたそうである。
以外はまったくの創作。
著者には珍しい、北村薫風の香り漂うような作品である。

『謎のアナウンス』
著者が会社員時代の見聞を材料にして書いたもの。

『矢』
降りしきる雨を通して、私は・・・・窓から見たんです。
雨合羽を着て庭に穴を掘る男。
その背中をめがけて、何かが一直線に飛び次の瞬間、男は穴へ転げ落ちました。
つまり犯人は、あの庭に立ち入ることなく、崖の上から射たのです
以上の言葉が散らばりながら、まるでデザイン画のように2頁にわたって描かれている。

『こうして誰もいなくなった』
「全員死刑。命をもって罪を償ってもらいます」
三重県伊勢湾に浮かぶ、通称「海賊島」に招かれた10名の男女。(春山美春・黒瀬源次郎・石村聖人・早乙女優菜・二ツ木十夢・双子の弟、二ツ木慈夢・有働万作・榎友代・海賊島のホテルの従業員である茂原勤及び茂原カヲリ夫婦)
仮想通貨で巨万の富を得た大富豪「デンスケ」の招待によるミステリアスなバカンスは、予想外の断罪で幕を開けた。
死亡事故を起こしたモデル、ブラック企業の社長、その肩を持つ政治家、「悪の食物連鎖の頂点に立つ」弁護士…。次々と暴かれる招待客達の悪行、そして恐るべき殺人事件が…。
著者があのアガサ・クリスティーの名作「そして誰もいなくなった」を再解釈し、大胆かつ驚きに満ちたミステリに仕上げた中編の表題作。
これは実に興味深く、かつ、予想を超えた面白味に満ちた作品に仕上がっている!