この著者の作品には、毎度絶世の美女が登場するのだが、残念ながら今回はそれなりの美人しかでてこない。
「知る」ことで、あなたは不幸になった。
真実を知ることは哀しみの始まり。なのになぜ、ひとは身を切られる痛みの中で、それを求めずにはいられないのか。
ボクさんこと福田幸男さんは四十歳独身のアパート大家(幸福荘)。
少しとろい(ボクさんと呼ばれる所以)けれど、ご近所(小学校の同級生だった沢渡京子と母親であるトキは、「沢渡屋」という総菜屋をやっている。幼き頃よりボクさんを知る二人だけはサッちゃんと呼ぶ)や店子の皆に愛されて幸福に暮らしている(そう本人は思っていた)。
ある日、入居者の女(栗村蓉子・四十一歳)が殺された。
屋根の修理で梯子に上り、窓から死体を発見したボクさんは地面に落下、そのまま四日間昏睡状態が続いた(脳挫傷もないので、原因不明)。
病院(共愛会)で目覚めると、アパートの店子全員が失踪していた。
やがて彼は、自分を取り巻くものが善意だけではなかったことを知る。
退院した、頭に大きなこぶができて、その他躰に擦り傷や打撲が残るボクさんは、担当の女刑事・目貫百合江から失踪した店子たちの、その意外な素性を聞かされることになる…。
団子木真司、雨貝孝作、物船逸郎、青沼文香、軽井勇の五人全員がアパートから姿を消した事実に、ボクさんは次第に翻弄されていく…。
ひとは何を以て幸福になるのか。「知る」ことの哀しみが胸に迫る。
だがしかし、物語の最後には、大どんでん返しが用意されていた!!
題名の本当の意味を知ることになるだろう…。
著者渾身の書き下ろしミステリー。