この著者の作品には、必ず、ばかみたいに美女が登場するってさ。
あっちみたいな莫連女は出てこないってわけかねぇ。
小笠原諸島・父島、人口二千人の洋上の楽園に、殺人事件は似合いやしないのさ。
木村洋介二十歳が今回の主人公さね。
東京の大学に通ってて、二年ぶりに二十六時間かけて小笠原に帰ってきたってわけなんだけどさ、それがなんだかきっかけのように、父島ではよっく考えれば、太平洋戦争以後初めての大事件が勃発することになるわけさ。
洋介と同級生だった一宮和希が、三日月山の展望台から転落して死んだ。妊娠四カ月…。
それから、その和希にストーカーしていて、わざわざ小笠原までやってきていた、真崎仁が一宮家の墓の前で死んでいた。
どうやらスパナで頭を殴られたらしい。
そんなわけで、父島の島中大騒ぎってわけさねぇ。
さて今回登場する美女は、丸山翔子、洋介の同級生にして憧れの女性だが、白血病で余命いくらもなく、もうガリガリに痩せ細っていて、美女も台無しだぁね。
その外は洋介の父親が有名な画家で、今回の作品のモデル契約して東京からやってきた、干川雪江。
洋介の同級生で、今は漁師をやっている山屋浩司の彼女で、板戸可保里。
棚橋旬子も洋介の同級生だが、いつも化粧をしないで真っ黒に日焼けしていて、気がいいんだが、とても美女とはいかないねぇ。
民宿の女将同然に働いている。
物語は小笠原・父島の自然の豊さを、存分に描写して、洋介をどんどん事件の渦中に巻き込んでいくってさ。
実はこの作家先生の描く女たちゃぁ、莫連女ばかりなのさ、だから今回はこんな口調になったのさ、おあいにくさまだったねぇ。
登場する男たちも貞操観念なんて、欠片も持ち合わせちゃぁいねぇのさ!
人の命って、実際に海の泡のような、切ないもんだってさ!!