この著者唯一の時代小説シリーズ。
二代目米造を襲う江戸の闇。
武士を捨て、鉄扇ひとつを身に帯びて、二代目米造がゆく…。
有名料亭の娘の不審死を追う米造に襲いかかる江戸の闇。
強欲な与力、衆道狂いの札差、謎の浪人、山伏くずれの博徒…。
米造に強い殺気を送り消えた、長身痩躯の謎の浪人の思惑は…。
真木倩一郎は武士を捨て船宿「たき川」へ婿入りし、二代目米造を襲名してすでに、三月近くたつ。
船宿の亭主といっても実態は江戸の目明し三百人を束ねる、蚯蚓(みみず)御用の元締め。
蚯蚓御用とは地の底に身をひそめ江戸の治安を守る役目、というほどの意味らしく、三代将軍家光の世に松平伊豆守が定めた制度だという。
ミミズとは目見えずの転化、目の見えないミミズを皮肉って目明し、または蚯蚓の字から虫を外して丘を岡に読みかえたことから、蚯蚓御用を「岡っ引き」と呼称する。
倩一郎は小野派一刀流佐伯道場の師範代として、同じく師範代の七之助と佐伯の青鬼・赤鬼と名を馳せた。
しかし今回この二人の腕をも凌ぐ、凄腕の三枝多門と名乗る謎の浪人者が登場する…。
二人の距離が一間にまで迫り、突如多門の口から野犬の絶叫に似た、「きえーっ」という気合がほとばしる。
同時に多門の躰が二尺ほど宙に浮き、ふりかぶった刀が米造の頭頂めがけて、稲妻のように打ちおろされる。
米造は腰の鉄扇を抜き、左腕の肘で額をかばいながら、多門の打ち込んだ刃を鉄扇の親骨で、がきっと受ける。
…多門が二の太刀に備えて刀をひけば、米造がその間合いで多門の懐へ飛び込み、鉄扇に仕込んである小柄で相手の腋の下をえぐる。
また逆に、米造のほうからその技を仕掛ければ一拍だけ多門の側に余裕が生じ、米造の肩から背中は深々と斬りさげられる。
息詰まる両者の攻防…。
「真木倩一郎、お主が小野派一刀流に合わせて、富田流小太刀まで使うとは、知らなんだわ」
「俺も示現流にお前さんのような太刀筋があるとは、知らなかった」
「俺の剣など生まれつきの我流だ。だが真木、お主がなんと思おうと、俺は田沼の飼い犬でないぞ。そのことだけは、心得ておくがいい」
田沼意次が老中の世、賂がまかり通り、札差が横行し…。
そんな世に蚯蚓御用はいかに動くのか?
二代目米造がひきいる蚯蚓御用は、初代から受け継ぎ、決して没義道を許さない!
それにしても、蚯蚓御用かなんか知らんが、どれだけ酒飲んでるねん!
なんかいうたら酒飲んどるで…とひとのことはいえない、私もなにかと酒を飲んでいるのである(^^♪
しかしそれがこの著者の矜持かもしれぬ!
第一作とは違い、真木倩一郎から二代目米造に変身した、その後はなかなかかじ取りが難しい…。