長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

横溝正史著【花園の悪魔】

2018-01-29 20:49:34 | 本と雑誌

昭和51年11月10日 初版発行
昭和20年代を舞台にした、レトロな探偵小説である。
しかしながらも、この横溝正史の世界に魅了され、私はミステリ小説に目覚めたのである。
「金田一さん事件ですよ!」
『花園の悪魔』
東京近郊のS温泉は四季折々の花造りの本場である。
なかでもいちばん大規模なのは、花乃屋旅館経営の花壇で、広さが千坪もある。
その朝早く、園丁(えんてい)の山内三造は園内の見廻りに歩いていた。
ちょうどチューリップの花壇にさしかかった時、彼は異様なものを発見した。
花壇のまんなかに全裸の女があおむけに寝ている。
不審に思った彼は、そばに行って見て呆然とした。
女の首には、なんと、太い紫色の紐の跡が!
『蝋美人』
法医学界の名物男、天才とよぶひともある反面、山師とののしる学者もすくないといわれている問題の人物畔柳(くろやなぎ)貞三郎博士が、身元不詳の白骨死体に肉づけをして、ありし日の姿を再現しようというだいたんな試みは、わが国の法医学界ならびにジャーナリズムに大きな話題を投げかけた。
そして再現されたその顔は、かつて和製マリリン・モンローとさわがれた銀幕の妖花・立花マリ、そのものであった。
のちに結婚して作家伊沢信造の妻となり、しかも昨年の春、良人を刺殺して逃亡中と信じられている問題の女性ではないか…。
『生ける死仮面』
上田秋成の名作「雨月物語」のなかに「青頭巾」という短編が入っている。
秋成は男色に興味をもっていたと見えて、雨月物語のなかには、ほかにもそれに関する短編が入っているが、青頭巾は男色のなかでももっとも凄惨な事実について語っている。
〈下野の国、富田の里の上の山に一宇の寺があり、そこになにがしの阿闍梨が住んでいた。
この阿闍梨もとは篤学修行の聞こえもめでたく、里のひとともふかく帰依していたが、あるとき、越の国より見目うるわしい童児を連れてかえってより、年来のつとめも、いつとはなしに怠りがちになった。
そして、ひたすら童児の寵愛にふけっていたが、かりそめの病いがもとで、その童児がむなしくなってからというもの、悲嘆のあまり心狂い、気みだれて、死体を葬ることもせず、生きていた日にたがわず戯れていたが、やがて肉がくさり、ただれることを惜しんで、肉をくらい、骨をなめ、はては死体をくらいつくして、生きながら鬼になったというのである〉
昭和2×年8月28日の朝刊は、この「青頭巾」を彷彿たらしめる事件を報道して天下の耳目をおどろかせた…。
『首』
岡山県と兵庫県の境に近い山里から、さらに十数丁奥に入った山中。
三百年前に起こった事件で獄門岩とよばれるようになった、その岩にまたまた生首が乗せられる事件が発生した。
三百年前、農民より神のように尊敬されていた、名主・鎌田十右衛門が何者かに殺害され、その首は滝の右側に屹立する屏風岩の中ほどから、たたみ二畳は敷けそうな平らな岩が滝のなかに突き出ているが、そこにのっけらていた。
そして胴体は下手の淵に浮いていたそうな…。
その事件が再び三度と再現されてしまうのだった…。
村人は「クニシン様のたたり」と恐れた…。
以上のような、非常にノスタルジックな犯罪、そして捜査推理がここに蘇る!
昭和20年代と言えば、犯罪捜査にそう科学的捜査がなされていなかった時代である、そこはまだ星の数よりメンコの数、捜査員の年期と感が頼り、だが小説ではなにより、快刀乱麻を断つような鋭い明察力を持つ名探偵の登場が必要である。
しかしながら、コナンドイルのホームズのように颯爽と現れるはずの、その名探偵が、なんと年齢は三十五、六であろうか、セルの一重によれよれの袴をはいて、頭は雀の巣のようにもじゃもじゃしている。小柄で風采のあがらぬ男、それでいて、にこにこ笑っているその顔に、妙にひとをひきつけるところのある、その名も金田一耕助の登場である。
この貧相な男こそが、鋭い洞察力を持つ名探偵なのである。
この意外性が、このシリーズの原点と言えよう。
元々横溝正史は昭和ダンディズムな小説を書いていたが、一変して金田一シリーズでは旧家の確執等を描いた。
私もそこに魅了されたひとりである。
お馴染みの、警視庁捜査一課等々力警部も、『首』では岡山県警の古狸・磯川警部も登場する。
東直己著【探偵はバーにいる】シリーズは、正史ほど舞台は古くないが、スマホはおろか携帯電話もない、インターネットも発達していない当時の物語という設定で、やはりレトロな雰囲気である。
このあたりが、私の琴線に触れているのかもしれない、世の中機械の発達で、なんだか忙しくなってませんか?
インスタ映えするとかいって、直ぐに撮ってSNSに投稿って、あんまりに味気ないように思う。
それに、面白かったらなんでもいいと思っている輩も多い、動画サイトに投稿する内容が、それは法律に触れてますよって、分からないでやってる者が多い。
やった後に訴訟やなにかで、後悔してるって、本当に間抜けているなぁと、私は常日頃思っています。
私は昭和20年代には生まれていませんが、でも戦後の混乱期の時代のほうが、大変だったけれども、今よりましなのかもしれない、などと思ってしまっています。
正史の【犬神家の一族】では、金田一耕助が泊まる宿に、米を渡します。
旅館といえども、米は配給で余分なものはない!米持参でないと泊めてもらえない時代背景を顕していました。
日本人なら米をくえってな言葉があったが、今や米は角砂糖何個分の糖質があり、なんて避けられるようになっている。
だいたい、スマホ万能の時代で、パソコン入力ができない若者が増えているそうだが、本末転倒であると思う。
ちゃんとセキュリティーの行き届いた、パソコンに入力してこそ、データの保全が保障されるのである。
目上という感覚がないので敬語が使えない、明らかに自分のミスなのに上司に対して誠心誠意謝るということも知らない、そんな若者が多い世の中、日本は滅びますよ!!
原因はその親にあり!!!
今一度横溝正史の小説読み、のんびりと古きよき時代を思い起こしてはいかがかな?
科学は万能ではありません!!

東直己著【探偵法間・ごますり事件簿】

2018-01-18 21:06:00 | 本と雑誌

ご依頼ありがとうございます!
不肖ワタクシ法間謙一(ノリマケンイチ)、すぐにでも参上致しますでございます!!
口からついて出るのはお世辞、オダテに阿諛追従(あゆついしょう)。
こんな探偵みたことない!
法間のことを「ノリマ」と正しく呼ぶ人間はあまりいない。
たいがいの知り合いは、「ホウカン」と呼ぶ。
つまり「幇間」、太鼓持ち。
とにかくお世辞の達人で、どんなに不機嫌な人でも、ついニヤリとさせてしまうほどの技の持ち主である。
立て板に土砂崩れの勢いで轟々と音を立てて流れ落ちる、阿諛追従お世辞に褒め言葉!!
しかしその洞察力は、只者ではない、実は探偵としては優秀であるのだった…。
『ほちわ』
一代で巨万の富を築いた杉原穣が、認知症になってしまって、介護を受ける身となっていた。
そして、何故か「ほちわ」と呟き続けている…。
『マラソンの夜』
前珠別百キロマラソンを完走し、パーティーにも出席した荘野は、いつもの行きつけの〈居酒屋 大将〉行った、そこで妙な男と相席になる…。
『美しい目』
法間は手芸の講師をやっている女性から、息子の恋人の調査を請け負ったが…。
『二十個のケーキ』
法間は杉原穣の子息の杉原元治教授から、パーティ中に消えた20個のケーキについて調査依頼を受ける…。
『捨てられなかった』
投資会社ニューライフ・ウエイ”にひとりのホームレスが突然襲撃してきた…。
『時カクテル』
薪谷銀座にある、バー〈のせ〉に初めて入った法間…。
『アロハ』
広告代理店業界の巨漢・全通の元企画調整局局長の有岡。
この男の周辺の不気味なウワサ、有岡邸で行われているホームパーティ、そして不透明な収入を調べたいと依頼を受ける法間…。
「探偵はバーにいる」のシリーズと合わせて好評の新シリーズである。

禁酒をしたことありますか?

2018-01-18 18:13:51 | 日記・エッセイ・コラム
わたくし、体調を崩し、酒とたばこを断っていた時期があります。
およそ4カ月の間、たばこも酒も断っていました。
酒の方は、徐々に飲み始めたのですが、たばこは完全に止めました。
現在定期的行っている血液検査では、肝臓に関する数値は正常です。
ただ不思議なことに、子供ころ小児喘息だった喘息持ちが、たばこを吸うようになって収まっていたのですが、止めてから何度も喘息になってしまいました(笑い)…。
人間の体ってのは、医学だけでは解明できないものですね…。


東直己著【探偵はひとりぼっち】

2018-01-12 11:00:15 | 本と雑誌

1998年4月10日初版印刷 1998年4月15日初版発行
みんなに愛されていたオカマのマサコちゃんが、マンションの駐車場で全身をめった打ちにされて殺された。
やがて、若いころ愛人同士だったという北海道選出の代議士に、スキャンダルを恐れて消されたのではないかという噂が流れはじめる。
マサコちゃんの友人だった〈俺〉は、周囲が脅えて口を閉ざすなか果敢に調査に乗り出すが、身辺に次々と奇怪な出来事が…!
ススキノの便利屋探偵がかつてない強敵に挑む。
殺された友のために、立ち上がれる奴はいないのか!
誰に脅されようが諭されようが、忠告されようが、みんなに総すかんをくらおうが、〈俺〉は頑固に突き進む!
お馴染みススキノ探偵シリーズで、映画「探偵はBARにいる2」(大泉洋と松田龍平のコンビ)の原作である。
今回の〈俺〉は、相棒の高田も負傷し、孤軍奮闘、ピンチの連続である…。
ついにはススキノにも居られず居場所もなくなり、〈俺〉は札幌の街を彷徨うが、次から次へと〈俺〉を狙う奴らがやってくる!
それでも、敵に一泡吹かせてやらないと気が収まらない〈俺〉がいた…。
アル中の酔っぱらいがまた、ススキノを舞台に小説を書いた。


東直己著【バーにかっかてきた電話】

2018-01-11 15:52:39 | 本と雑誌

いつものバーでいつものように酒を呑んでいた〈俺〉は、「コンドウキョウコ」と名乗る女から電話で奇妙な依頼を受けた。
ある場所に伝言を届け、相手の反応を観察して欲しいらしい。
一抹の不安を感じながらも任務を果たした帰り道、危うく殺されそうになった〈俺〉は、依頼人と同姓同名の女性が、地上げにまつわる放火事件で殺されていたことを知る…。
お馴染みススキノ探偵シリーズ第二弾、この作が映画「探偵はBARにいる」の初作の原作となる。
軽妙なタッチでいながら、なかなかのハードボイルド。
いったい、電話を決まって〈ケラー〉にかけてくる「コンドウキョウコ」とは誰なのか?一連の殺人に謎が深まるが、〈俺〉は面倒と思いながらも事件の何故か中枢に足を踏み入れていて、またボロボロになりながら…。
さすがに著者がアル中だけに、読み進めば進むほどに、こちらも酔っ払ってきそうである(^^♪