長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

西澤保彦著【幽霊たち・The Ghosts】

2020-01-24 19:07:10 | 本と雑誌

この著者の特徴として、登場人物の名前が実にややこしいことである!
さて、40年前、資産家・岩楯(いわたて)一族を壊滅した秘密と嘘と誤解が、今、再び血の惨劇を引き起こす!
幽霊が、犯人を庇う!?
見えなかった復讐と、更なる復讐。
しなくてもいい殺人の果てない果て。

死んだ者たちと交信可能な特殊能力を持つミステリ作家・横江継実(よこえつぐみ)のもとを刑事・鬼追(きおい)が訪ね「加形野歩佳(かなたのぶよし・33歳)を知っているか?」と訊く。
加形野歩佳は多治見康祐(たじみこうすけ・57歳)を殺害し、早々に自首。
殺された多治見は、横江の元同級生で、加形は横江の親戚の息子だった。
彼は、自首はしたが動機を語らず、ただ「理由を知りたければ横江継実に訊いてくれ」と語っているという。
横江は加形と面識もなく存在も知らなかったが、加形の父・広信(ひろのぶ)や多治見と過ごした40年前、幾つもの血族の婚姻が相関する岩楯一族と暮らした子ども時代を思い出す。
すると記憶とともに饒舌な幽霊たちが入れ替わり立ち現れたのだった…。
予測不能な展開と最後はどんでん返しの本格ミステリ!!
読後は色んなモヤモヤを抱えることになるだろう…。

山本一力著【桑港(そうこう)特急】

2020-01-10 18:27:52 | 本と雑誌

桑港とはサンフランシスコの事である。
すなわち、桑港特急=San Francisco Express.
と言っても列車ではない、砂金輸送のために設えた、六頭立ての馬車で、金色に塗装された堅固な造りになっている。
これに、有能な五人のガンマンが乗り込み警護するのであった。
そう、事の発端は1848年5月21日日曜日に、サム・プラナンという男が言った、アメリカ川で砂金が取れる、その話に乗った一攫千金を狙った人々が、大挙押し寄せる、ゴールドラッシュにあった。
日本・アメリカ・中国、三カ国の男たちの命を賭けた大勝負!
江戸末期の文政年間、小笠原の父島に漂流した娘とアメリカ人の元捕鯨船乗りの間に生まれた兄・丈二(じょうじ)、弟・子温(しおん)。
米国の捕鯨船フランクリン号の副長だった弱冠二十歳の日本人・ジョン・マン(マンジロウ・ナカハマ)との運命的な出会いにより、大航海への夢を二人は募らせていく。
当時、海の向こうのアメリカは西部のゴールドラッシュで沸いていた。
一攫千金を夢見た人々が殺到し、一族の事業拡大を狙う中国人のチャンタオも、片腕ルーパンとサンフランシスコ(桑港)へ向かう、但し狙いは大陸横断鉄道敷説工事にあった。
途中立ち寄った父島では、丈二と子温の素質を見抜き船に乗せた。
無事にたどり着いた新天地で、ルーパンはパンダ作業着店を開業。
店を手伝う丈二と子温たちが、妻を殺したサントス一味に復讐を誓うリバティー・ジョーと出遭った事から思わぬ展開に・卑怯な手段も辞さず罪なき人々も簡単に命を奪うが、用心深い極悪集団を相手にはじまった大作戦。
日・米・中の友情と勇気が仕掛けた死闘の行方はいかに!?
若き兄弟が夢と勇気を胸にゴールドラッシュに沸く新大陸へ挑んだ!!
From Ogasawara⇒To San Francisco
「おまえたちが船で向かう先は、なんていう名の町なのだ?」
「ダッドはサンフランシスコがいいと言っています」
丈二が英語風の発音で答えた地名が、淳之介には「ソーホーシスコ」と聞こえたようだ。
立ち上がり、矢立と半紙を持ってきた淳之介は、耳にした地名に漢字をあてて記した。
「桑方西斬哥」と書かれていた。
「桑はソウ、方はホウ、あとの西斬哥は一文字ずつシスコと読むのだが、なんとも長いの」
苦笑いを浮かべた淳之介は、サンフランシスコはどんな町かと訊ねた。
「坂が多くて、海に面した港町だそうです」
漁師も多く暮らしており、カニが名物ですと、父親からの受け売りを淳之介に伝えた。
「ならば丈二、短く詰めて桑港(そうこう)と記そう」
淳之介は新しい半紙の真ん中に、ひときわ大きく「桑港」と書いた。
国境を越えた家族愛と冒険が魂をゆさぶる、著者渾身の大長編スペクタクル!