長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

浅田次郎著【兵諫(ビンジェン)】

2022-03-20 01:25:11 | 本と雑誌


謀略の生贄か、救国の英雄か。
二・二六事件の死刑囚、村中孝次(むらなか たかじ/元陸軍歩兵大尉)が語る蹶起の真相。
西安事件の被告人が訴える叛乱の首謀者。
日本と中国の運命を変えた2つの兵乱には、いかなる繋がりがあったか。

「兵諫(へいかん)」とは、兵を挙げても主の過ちを諫めること…。

日本で二・二六事件が起きた1936年。中国の古都、西安近郊で、国民政府最高指導者、蒋介石(ジャジェシイ)に張学良(チャンシュエリャン/東北馬賊の王・張作霖{チャンヅオリン}の長男)の軍が叛旗を翻すクーデターが発生。
蒋介石の命は絶望視され、日米の記者たちは特ダネを求め、真相に迫ろうとする。
日本では陸軍省軍務局長永田鉄山(ながた てつざん)が、革新将校の急先鋒である相沢三郎(あいざわ さぶろう)中佐に斬殺され、陸軍参謀本部という秘密の匣の中で、鉄山のカリスマ性を引き継いだ石原莞爾(いしわら かんじ)大佐が情報を操っており、一方中国では西安事件の軍事法廷で、張学良は首謀者ではないとする証言がなされた。
現代中国の起点となった事件の現場に起つ救世主は誰か…?

「蒼穹の昴シリーズ」第6部、事件の角度を変え、その真髄に迫る軍事法廷ミステリーで表わした、著者渾身の秀作である。

*=「蒼穹の昴 上・下」「珍妃の井戸」「中原の虹 4巻」「マンチュリアン・リポート」「天子蒙塵 4巻」