長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

【デアリングタクト&コントレイル】

2020-10-27 23:10:02 | 日記・エッセイ・コラム

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まずはレディファーストで、デアリングタクトから(^^♪

史上初無敗の三冠牝馬誕生。(桜花賞・オークス「優駿牝馬」・秋華賞)5戦5勝
血統背景:父親エピファネイアはシンボリクリスエス産駒で、遡ればヘールトウリーズン系になる。
     菊花賞やジャパンCに勝利している。
     エピファネイアの母親は日米オークスを制覇したシーザリオ。
     シーザリオはスペシャルウイーク産駒で、これまたヘールトウリーズン系になる。
     デアリングタクトの母はデアリングバードで、自身の現役の実績は大した記録はない。
     デアリングバードの父は日本ダービー馬・キングカメハメハでミスタープロスペクター系、一方母はデアリングハート(GⅠ勝ちはないが、重賞勝利あり)、こちらはサンデーサイレンス産駒なので、結局ヘールトウリーズン系になる。
三冠とも圧勝、今秋の秋華賞を振り返れば、後方待機でやがでジワジワと上がってきて、最後は余裕で後続に1馬身1/4差での勝利、稍重馬場で勝ち時計は2:00.6(上がり35.8)と記録的には伸び悩んだが1番人気に応えた。
2着は10番人気のマジックキャスト(上がり35.8)、3着は9番人気のソフトハート(上がり35.7)、4着は12番人気のバラスマテナ(上がり35.8)、5着は16番人気のミスニューヨーク(上がり36.7)
2番人気のリアアメリアは13着、3番人気のウインマイティーは9着、4番人気のマルターズディオサは7着、5番人気のウインマリリンは15着と、1番人気デアリングタクト以外の人気上位がいずれもふるわなかった。

さて次はコントレイル(^^♪
史上初!父子2代の無敗三冠を達成。(皐月賞・日本ダービー「東京優駿」・菊花賞)7戦7勝
しかしながら、コントレイルはそれでけではなく、2歳ホープルSに勝利し、史上初の無敗での四冠馬にもなる。
この四冠制覇は、過去にナリタブライアンが成し遂げているが、無敗ではなかった。

血統背景:父親は、かの化け物ディープインパクト(サンデーサイレンス産駒)である。
     やはり遡ればヘールトウリーズン系になる。
     母親ロードクロサイト(現役時は未勝利に終わった)は、ミスタープロスペクター系である。
過去の二冠(2歳戦を加えれば三冠)は強い勝利だったが、今秋の菊花賞はやや苦戦を強いられた結果となった。
2着のアリストテレス(4番人気)との差はわずかクビの辛勝であった。
時計的(3:05.5)にも平凡に終わったが、中段からの待機で、四角から一気に先頭に上がって(上がり35.2)いったのだが、同じく伸びてきたアリストテレスに追いすがられて(上がり35.1)しまった。
菊花賞苦戦は父ディープインパクトも同じだった、一度目の正面コースで、鞍上武豊が馬が首を上げてしまうほど手綱を引いて、必死で抑えなければならなかった、その分最後のいつものような跳ぶ脚が、やや鈍っていたのは否めなかった。
しかし、ディープインパクトの場合、三冠達成最大のピンチは、皐月賞でゲートから出た折、落馬しそうになったことにあった。鞍上武豊は必死で摑まってなんとか凌いだのだった。
さほどに、無傷で三冠馬になるのは至難の業なのであった。
さて今秋の菊花賞で、その後から入線した馬は3着が5番人気のサトノフラッグ(上がり35.2)、4着は7番人気の逃げたディープボンド(上がり36.1) 、5着は14番人気のブラックホール(上がり35.4)だった。
2番人気だったヴェルトライゼイデは7着で、3番人気のバビットは10着に終わった。
史上初、デアリングタクトとコントレイル2頭の、牝馬牡馬両方での無敗の三冠達成劇であったが、私にとってそんな日が訪れるとは夢想だにしなかった、希代の大珍事と表現してもよいのではとも考えている。
多くの競馬ファンたちが、JRA(日本中央競馬会)の歴史を変える、その瞬間に立ち会ったのであった。
牝馬牡馬の王者の今後の行方が、楽しみでもあるが、各陣営には慎重で十二分な考慮の上に判断すべきだろうと、私としてはやや憂慮しながら願っている。
さて、春でのコントレイルにとっての最強のライバルはサリオスだったが、菊花賞を回避し古馬と初対戦の毎日王冠に出走して、古馬たちを尻目に稍重馬場をものともせず好時計(1:45.5・上がり34.1)で完勝した。
6戦4勝(2着2回)2歳朝日フューチュリティの勝者なので、コントレイルと並び2歳王者でもある。
それにコントレイル以外には負けていない。
サリオスは、やはりスピードが身上なので、3000mの長距離戦(菊花賞)には向いていなかったのだろう。
血統背景:父親はハーツクライ(かの化け物・ディープインパクトに初めて黒星をつけた馬・日本馬では唯一無二のただ1      頭)の更に父は、サンデーサイレンスなので、結局はヘールトウリーズン系になる。一方その相手の牝馬(父母)     はアイリッシュダンスでトニービン産駒なので、ナスルーラ系になる。ちょっと興味深いのは、アイリッシュダン     スの母親サロミナの血統は面白い。
     父系はノーザンダンサー系で、血統の経路には名馬ニジンスキーの名もある。
     一方の母系は、これまたノーザンダンサー系なのだが、ダンジグから流れているので、短距               離のスピード系である。このあたりにサリオスの今後の進路への、重要な鍵が隠されている               のでは?
今後の目標は、天皇賞(秋)か?マイルCSか?あるいは香港(中国の国政でどうなるか判断しがたいが)か?
もしかして、ダミアン・.レーン騎手がオーストラリアから日本に戻ってくれるのを、待っているのかも?
サリオスの今後も、実に楽しみであると同時に、先行きの憂慮すべき事態を、私の老婆心ながら、熟慮検討した上でのローテを組んでもらいたいものだと願っている次第。
かの、シンボリルドルフとビゼンニシキとの明暗、そんな悲劇は繰り返して欲しくはない!!



山本一力著【牛天神・損料屋喜八郎始末控え】

2020-10-20 22:21:50 | 本と雑誌


お馴染みの人気シリーズ(累計65万部)で、今回で番外編も含め五作目となる。
「損料屋喜八郎始末控え」「赤絵の桜」「粗茶を一服」「(番外編)梅咲きぬ」
深川人情にあふれる物語。

頭脳と男っぷり!あの男が帰ってきた!
不況の嵐が吹き荒れる江戸…同心を辞し、庶民相手に鍋釜や小銭を貸す「損料屋」として暮らす喜八郎(きはちろう)。
与力や仲間たちと力を合わせ、巨大な敵と渡り合う!

『うしお汁』
喜八郎が営む損料屋とは通りを挟んで向かい合わせにある、質屋の小島屋の跡取り息子・与一郎(よいちろう)は、遊郭通いが止まない。
当代の当主五代目善三郎(ぜんざぶろう)は、そのことに深く悩んでいた。
ある日こと、喜八郎は善三郎に呼び出され、自分は今年限りで隠居するので、小島屋六代目を引き受けてもらいたい、その上で息子の与一郎は、喜八郎の下で鍛えてやって欲しいと願うのだが…。

『つけのぼせ』
両替商の大店近江屋の三番番頭・以蔵(いぞう)は、喜八郎の損料屋の番頭・嘉介(かすけ)と懇意であった。
ある日、嘉介が日課である朝の散歩に出て、黒船稲荷に参ろうと、黒船橋を渡ろうとした時に以蔵を見かけた。
いつもなら気さくに声を掛けるのだが、どうもそれは憚れるようだった。
以蔵は何やら様子がおかしい、何か余程の屈託を抱えているように嘉介は感じた…。

『仲町のおぼろ月』
人情の町に巨大安売り市場がやってくる…。
二千坪の土地を牛耳る黒幕の目的は?
危機感をつのらせる深川の住人たち…。
喜八郎がいる深川に、手強い敵・鬼右衛門(おにえもん)の魔の手が忍び寄る、さぁこの難局を深川衆はどうやって乗り切るのか…。

『にごり酒』
深川で手痛い大敗を喫してしまった鬼右衛門は、どう意趣返しをしようかと思案する。
やがて、手練れの配下の者たちに、深川で画策した主謀者を探らせ、損料屋の喜八郎に辿り着く。
鬼右衛門の敵は、喜八郎と炙り出されていた…。
そして今度の標的を江戸屋に絞った…。

『牛天神(うし・てんじん)』
江戸屋の仲居頭・すずよは、五日連続で小石川の牛天神へ願掛け参りにいくことを決意した。
鬼右衛門の魔の手が、今度は江戸屋に伸びようとしている、そのための願掛け参りであった。
しかし、このすずよの牛天神詣でが、意外にも鬼右衛門の復讐に燃える、荒み切った心を揺るがすのだった…。


有栖川有栖著【カナダ金貨の謎】

2020-10-07 21:20:28 | 本と雑誌


ずいぶん久しぶりに読む、この著者の〈国名シリーズ〉である。
「ロシア紅茶の謎」「スウェーデン館の謎」「ブラジル蝶の謎」「英国庭園の謎」「ペルシャ猫の謎」「マレー鉄道の謎」「スイス時計の謎」「モロッコ水晶の謎」「インド倶楽部の謎」と続き、本書は第10作目となる。
実は、私がこの著者・有栖川有栖氏の作品と出会った最初が、「スウェーデン館の謎」であった。
その後、相当の時間を開けて、著者のデビュー作となる「月光ゲーム」を読むことになる。
「国名シリーズ」を全部が全部、読破出来てはいないが、機会があれば未読の作品にも挑戦してみたいと思っている。
お馴染みの臨床犯罪学者・英都大学社会学部准教授である火村英生(ひむら・ひでお)と推理作家・有栖川有栖のコンビが、警察の犯罪捜査を手伝う。火村教授にとってはこれこそがフィールドワークで、臨床犯罪学者の所以でもあるのだ…。
「国名シリーズ」には長編ものもあるが、短編集となっているのもある。
本書は中編3作が間に短編2作を挟んでいる形式で、エラリークイン流に表せば「アリスのフルハウス」となる。

『船長が死んだ夜』
火村准教授が免停にあい、今回は有栖の運転で、三年前の事件関係者に面会するため、兵庫県丹波市、朝来(あさご)市、養父(やぶ)市を回った。
そしてその後、予約していたロッジに宿泊した翌朝、養父市で殺人事件が発生したことをテレビで知る。
近くなので寄ってみるかといってみたらば、現場で二人とは馴染みの樺田(かばた)警部と出くわす。
こうなると、捜査に加わらざるを得なくなった…。
自宅で果物ナイフで刺殺されたのは、小郡晴雄(おごおり・はるお)、彼は引退したとはいえ、元船乗りだった。
犯罪現場のある笠取(かさとり)町は、およそ殺人事件とはかけ離れた長閑な里山でありながら、被害者の通称は「船長」だったそうだ…。

『エア・キャット』
有栖と作家の先輩・朝井小夜子(あさい・さよこ)とが、飲みにいったバーのマスターのテーブルマジックに付き合った。
マジックは見事なものだった。
バーを出た二人は、喫茶店に寄って、さっきのマスターのマジックについて話しているうちに、有栖が以前に火村准教授が解決した事件について思い出した。
それはさっきのマジックにつながる話であった…。

『カナダ金貨の謎』
表題作である。
この物語はこの著者にしては珍しいパターンで始まる。
倒叙もの(犯人の視点から描かれたミステリ)である。
まぁつまり、最初から犯人が判っている状態で物語が展開する。
「刑事コロンボ」やら「古畑任三郎」のパターン。

民家で発見された男性の絞殺体…持ち去られていたのは、一枚の「金貨」だった。
部屋には、二万八千円超の現金が入った財布がクレジットカードにも手つかずで残されていた。
金貨自体の値打ちは七、八万ほどだそうであったが、何故財布は手つかずであったのか…?
火村准教授が犯人を、見事なお手並みで追い込んでいく!

『あるトリックの蹉跌』
この物語は、そもそもの話、英都大学の学生時代に、有栖と火村の二人が如何に知り合ったか?である。
十四年前の五月の麗らかな日、講義中であるのにも拘らず、有栖は小説の執筆に勤しんでいた時、隣に(他にいくらでも席は空いているのに)座っていた火村が、「この続きはどうなるんだ?」と声を掛けられたことから始まる。
有栖が書きあげた原稿を、知らぬうちに火村が読んでいて、執筆に追いついてきたのだった。
その後、学食へ一緒にカレーを食べにいき、そこで火村によって、まだ執筆中にも拘らず、真犯人を的中されてしまった…。

『トロッコの行方』
物語の冒頭に「トロッコ問題」が登場する。
“トロッコが暴走を始めた。そのいく手の線路上で五人が作業に没頭している。生命の危機が迫りつつあることに気づいておらず、〈あなた〉が危険を報せるために叫んでも、遠すぎてその声を五人は聞けない。〈あなた〉はポイントのそばに立っており、線路を切り替えてトロッコを待避線に誘導することができるのだが、そちらにも一人の作業員がいて、やはり「逃げろ!」の声は届かない。何もしなければ五人がトロッコに撥ねられて命を落とすのは確実で、ポイントを切り替えれば間違いなく一人が死ぬが、犠牲者は五人から一人になる。どの作業員とも面識はなく、いずれも赤の他人であるとして、この状況で〈あなた〉ならどんな行動を取るか?そういう問い掛けである”

さて、浮田真幸(うきた・まさち)という31歳の女性が、何者かに歩道橋の上から階段へ突き落され死亡した。
疑われる人物の事件当時のアリバイは、揃いも揃って不完全だった。
が犯人である確証も持てない。
それぞれに事情聴取しなければ、判断できないので、火村と有栖はそれぞれに会って話を聞くことに。
同行する刑事たちや有栖が首をかしげてしまうくらいに、のらりくらりと火村は意味不明ともとれる質問をしていくのだが、いつしか術中にはまってしまう人物が出る…。
この物語は冒頭の「トロッコ問題」が主題となる…。

5作それぞれにフーダニットあり倒叙ものありで、手を替え品を替えをコンセプトに、なかなか良質に仕上がっている物語でありまして、著者も年齢を重ねて、老獪さが増しているようにも感じました。
もしも、今現在あなたが殺人を犯した人物であったのなら、決して火村という男に対して隙を見せてはいけません!!
英都大学社会学部准教授・火村英生は、殺人者にとっては容赦ない恐ろしい人物でもあるのだ。


ご注意、物語に登場する有栖川有栖と著者である有栖川有栖氏とは、決して同一人物ではありませんよ♪