杉村三郎シリーズ第5弾!
今回は杉村三郎vs.“ちょっと困った〟女たち。
自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳ありの家庭の訳あり新婦、自己中なシングルマザー。
そこには職業探偵としての杉村に対し、正にプロとしての試練が待ち受けていた…。
『絶対零度』
杉村探偵事務所10人目の依頼人は、50代半ばの婦人筥崎静子(はこざき しずこ)だった。
一昨年結婚した27歳の娘、佐々優美(ささ ゆうび)が自殺未遂をして入院後、面会ができず、1ケ月以上もメールが繋がらないのだという。
どうやら優美の夫の佐々知貴(ともたか)が、強固な壁のごとく立ちはだかっているようである…。
『華燭』
近所に住む小崎佐貴子(こさき さきこ)夫人の中学2年の娘、加奈(かな)の付き添いとして、結婚式に出席することになった杉村は、会場で想定外の事態に遭遇する。
結婚するのは加奈の叔母の娘(つまり従姉)の、宮前静香(みやさき しずか)24歳である。実は小崎佐貴子夫人はある事が原因で、実の両親や実妹とは絶縁中なのだった…。
『昨日がなければ明日もない』
表題作。
29歳の朽田美姫(くちだ みき)から「子供の命がかかっている」という相談を受ける。
彼女は16歳で最初の子、漣(さざなみ)を産み、別の男性、鵜野一哉(うの かずや)との間に6歳の子供、竜聖(りゅうせい)がいて、今は別の“彼〟串本憲章(くしもと けんしょう)と同棲中だった。
漣(自分では“れん〟と呼んで欲しいらしい)の父親が、当時17歳の高校中退・無職無業の少年とはなっているが、実際誰かは判っていないと推測される。
また美姫の本名は三紀である…。
杉村三郎は朽田美姫に対して、経験不足からの青過ぎる非常に甘い考えをして、ラストは痛恨のミスに繋がり、衝撃的な結末になってしまうのだった…。
杉村は、世の中にはどれだけ誠実に、どれだけ理路整然と説明しても、まったく他人(ひと)の意見など聞く耳を持たない人種が、信じられないけども実際に存在する事実に直面するのだった…。
今回は新たなレギュラーキャラクターとして、警視庁刑事部捜査一課継続捜査班・四十代後半の立科吾郎(たてしな ごろう)警部補が登場する、一癖も二癖もありそうなまったく食えない人物…。
今後この男がどう、杉村三郎に関与するかは未知数であるが、面白い人物が加入したと思える。
あなたは、杉村三郎を無能で間抜けでどんくさい、私立探偵と思いますか?
いやいや私は、なかなかの頭脳の持ち主で、一方まだまだ純真な心を残し、だがこれから先は枯れていき経験値で鋭い探偵になるのかも?
杉村三郎として、これまでの事件に遭遇した経験は、ただ甘すぎたくらいの認識に至ったと思える。
さて、立科吾郎警部補の登場で、犯罪は私立探偵ごときが、オンリーで解決は不可能であるのを、杉村はよく知ったのである。
この先の展開は宮部みゆき次第だろうと思うが、時代小説に固着していたこの作家が、現代のミステリを描いているは、やはり面白いとは感じている次第であります(^^♪
初版本限定にはなりますが、”杉村三郎シリーズガイド〟の付録がついています、といってももう遅いかな?