長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

赤川次郎著【三毛猫ホームズの証言台】

2018-06-20 18:08:15 | 本と雑誌

いや久しぶりである、赤川次郎の小説を読むのがである。
それも三毛猫ホームズシリーズ、なんと今回で第51弾ってどこまで続くのこの作品?
第一作目の『三毛猫ホームズの推理』を知っている人は、今は少ないかもしれないのだが…。
若い頃には赤川作品はよく読んだものだったが、最近はとんとご無沙汰だった。
つい懐かしさに手に取ってしまった…。
ある殺人事件の証言から始まった物語は、新たな悲劇を招く…。
過去の因縁を乗り越え、片山義太郎と三毛猫のホームズが難事件に挑む!!
(S商事)社長の千葉典子が殺された。
夫の克茂が殺人容疑で逮捕されるが、出会い系サイトで知り合った森川礼子の証言によって無罪となる。
社長の座を引き継いだ克茂はその礼子と結婚する。
一方、片山義太郎のお見合い相手の加賀涼子は、車にひかれかけた辻川友世をかばって怪我をし、辻川夫妻や片山たちと〈高原ホテル〉で療養することに。そこに辻川夫妻の友人である千葉夫妻も同宿する。だが、千葉の妻・礼子の元夫・森川誠二は殺人の罪で追われる中、〈高原ホテル〉に乗り込んで…。過去の因縁と複雑な人間関係が絡み合う…。
大体こういうような話であるが、もちろん、片山義太郎の妹、しっかり者の晴美もそして猫恐怖症だが、大食漢で気は優しくて力持ちの石津刑事、それに片山兄妹の叔母である、義太郎に見合い話を持って来ることが生きがいの児島光枝も登場する。
片山義太郎は警視庁捜査一課の刑事、ひょろ長い体形で肩はなで肩、顔はおよそ刑事とは思えぬ優しい顔立ちの童顔、心もやさしい、血を見ると貧血を起こすし、高所恐怖症で女性恐怖症。
なんでこんな人間が刑事をやってられるかというと、本人は何度も辞表を出しているのだが、課長の栗原警視がもみ消してしまうからなのだった。
そして、今回はホームズの妹分とでもいうべきか、『パリ』と名付けられた三毛猫の子猫も登場する。
ニャンコ大好きの私としては、なんともたまらん一冊である(^^♪

東直己著【疾走】

2018-06-15 22:05:58 | 本と雑誌

『残光』の続編、再びオールスターキャストで贈る作品。
二つの命を救うため、あの男が再び帰って来た!
凄腕の人殺しだった榊原健三は、今は静かに山小屋で、ひっそり独り暮らしをしていた。
久々に谷に降りてみて、すっかり雰囲気が変わっているのに驚いた。
〈未来エネルギー環境整備開発機構〉〈低レベル廃棄処理研究施設えびす〉が出来たせいだ。
谷はえびすの建設に反対だったが、しかし皮肉にも、そのえびすのおかげて潤ってもいたのだ…。
複雑な人間模様が展開されてギクシャクしていた。
そのえびすに丸高建設の寮の子供たちらが、見学会に誘われて、バスに乗って赴いたのだった。
その中にはあの高見沢恵太が乗っていた…。
健三の嘗ての恋人、今は高見沢多恵子になっている彼女の一人息子…。
健三はえびす見学のチラシを見て、きっと恵太も来ると信じ、再び谷へ降りて、今の恵太の姿を見ようとした。
バスに乗った見学者一行は、えびすへと入って行ったのだが、そこで見てはいけない光景を見てしまったのだった。
見学者一行は、見学を断り、早く帰りたい旨告げるが、なかなか帰してもらえない。
やっと帰してくれることになったのだが、恵太は以前の怖い経験からか、何故かバスに乗り込まず、橿木純江とともに逃走した。
バスはその後タンクローリーにぶつかられて、谷に落ちた…。
その音を恵太も純江も聞いた。
死体が二人足りないことを確認した、えびす側のHKSSの警備員が二人の後を追う…。
健三は恵太の成長した姿をバスごしに見て、もう山へ帰ろうとしていたが、何か様子がおかしいと察知し、動き出した。
恵太と純江は道に迷い、二進も三進もいかなくって、HKSSの警備員に捕捉される寸前、健三が救い、それから三人の逃走劇が始まる。
HKSSは健三を少々甘く見ていた、ただの初老の男、林秀和としか認識していなかったので、きりきり舞いさせられた。
一方桐原組の桐原は、丸高建設の子弟ら26名を乗せたバスが行方不明のニュースを見て、恵太が乗っていれば必ず健三が動くと読んだ。
そこで便利屋(つまりススキノ探偵シリーズの〈俺〉)を呼べと部下に命じたが、なんと彼は恋人の華と一緒に竹富島に行っているということだった。
脊髄小脳変性症で寝た切りの相田に代わり、ブッチョこと賀茂田がいっぱしのやくざとして、片腕になって動いている。
桐原は、持谷探偵事務所として健三とのパイプがある。
いつ連絡が来るかわからないので、臨戦態勢に入った。
いち早く健三からの連絡で、バス事故には生存者が2名いるのを察知した桐原。
桐原からの電話で状況の説明を受けた、便利屋は電話での連絡係を務める。
これがかなり微妙で、なかなか難しい役どころだった。
ついでに便利屋は北日の松尾にも、電話で状況を説明した。
便利屋のいない分、実は今回畝原がいっちょうかんで来る。
多彩な登場人物で、今回は健三たちの逃走を援護することになるが…HKSSも必死でいろん手をうって来るのだ、ついに最終手段にうって出て来た…。
実はえびす側が何故こんな卑劣なことを、それも執拗に行うかは、驚くべき真実が隠されているからなのであった!
もちろん警察はあてにならない!
果たして、ひたすら札幌をめざす健三と恵太と純江は、この窮地から脱出出来るのだろうか…?

東直己著【流れる砂】

2018-06-07 19:02:52 | 本と雑誌

1999年11月8日 第一刷発行
私立探偵・畝原シリーズ。
誰も触れるな、誰も近づくな、もう、誰も喪うな。
流れる砂に足を突っ込んだら、もう逃れることは出来ない!
その事件は、些細なマンションの苦情から始まった。
次第に拡がる、現代の深い闇。
依頼人は、自分ただ一人。
マンション・ペルエア琴似の管理人垣元が、どうやら3階に住む住人の部屋に女子中学生や高校生のように見える娘たちが出入りしているらしい、調査して欲しいと畝原に依頼があった。
その住人は森英司で白郷区役所に勤務で、二十七歳独身。
調査の結果、森英司の不純な異性行為は明らかであった。
ところが、正体不明の柾越という人物がそこに介入してきた。
柾越は森英司の父親を脅迫して金をせしめようと考えているらしい…。
しかし、森英司の父親森英勝は、息子を刺し殺し、自分も喉を斬って自殺した。
畝原の眼前での出来ごとだった。畝原は止めようしたが、同行していた柾越に阻まれた。
警察の事情聴取を受けて解放された畝原を、若菜という若者が待っていた、SBCの近野が用があるとのこと。
近野には随分世話になっている。
近野に中年のおばはんがインタビューに答えるビデオ見せられ、感想を訊かれた。
近野は当時中学三年生だった本村薫失踪の事件を追っていた。ビデオのおばはんは薫の母親本村康子だった。
とても我が娘が失踪しているとは見られない、不遜な態度で終始にやけた顔で喋っていた。
近野は森英司と本村家の関係を調べて欲しいとのことだった…。
その直後、柾越も不審な死を遂げた。
そして、近野も死んだ、自殺ということになっているが、畝原は納得しない。
近野の死体の近くに、なんと白骨化した本村薫の死体も発見された。
大荒れに荒れた畝原は,その夜酔って自身を失ってしまった!
役所内の不正に連続保険金殺人、そして怪しい新興宗教がからみ、話はどんどん入り組んでくる。
釈然としない畝原は自ら依頼人となり、探偵仲間の「アイ横山探偵事務所」の横山に、調査の開始を願い出るが、既に畝原の身辺にも危険な兆候が…。
果たして、畝原は膨大な組織相手に、総ての謎をを解き明かすことが出来るのか?
渾身の書き下ろし1000枚!!