長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

北村薫著【ヴェネツィア便り】

2018-08-31 20:50:08 | 本と雑誌

著者が送る、ショートショートから中編までの、表題を含む全15編を集録した、面白文学集。
『麝香連理草』はショートショートの幻想小説か?『誕生日・アニヴァェルセール』は双子の兄弟が人生を二分するような話。
『くしゅん』は猫と飼い主の話かな、『白い本』は、ショートショートで、誰にも読まれなかった歌集の話かな?
『大ぼけ、小ぼけ』はショートショートで、ちょっとほのぼのとした話かな?
『道』は中編で、定年後の男の生き方の話かな?
『指』は短編の幻想小説かな?『聞く』『岡本さん』『ほたるぶくろ』は、ホラーって表現してもよいだろう。
『機知の戦い』は中編のミステリかな?
『黒い手帳』は短編の、一種のホラーかな?『白い蛇、赤い鳥』は、著者得意の短編の文学ミステリかな?
『高み』は中編のノスタルジックな、ある種邂逅の物語かな?
『ヴェネツィア便り』これは、表題にもなっているが、ある女の人がヴェネツィアに訪れた思いを、30年後の自分に対して手紙を書き、30年後の自分が自分宛に返信するという、中編になっている話?
以上、お話の玉手箱みたいな文学集でありますよ♪

柴田よしき著【激流】

2018-08-24 20:50:00 | 本と雑誌

2005年10月31日 初版
わたしを憶えていますか?
澄み切った音色でフルートを吹いていた少女は、修学旅行中、消息を絶った。
二十年後、同級生たちに突然届いたメール。
少女は生きていたのか…!?
京都 修学旅行でグループ行動をしている、東京から来た七名の中学三年生。
知恩院に向かうバスで、その中の一人の女生徒、小野寺冬葉が失踪し、消息を絶った…。
二十年後、三十五歳となり、それぞれの毎日を懸命に生きるグループのメンバーに過去の亡霊が甦る。
「わたしを憶えていますか?」
突然、送られてきた冬葉からのメール。
運命に導かれて再会した同級生たち。
彼らに次々と降りかかる不可解な事件。
冬葉は生きているのか?
そして、彼女の送るメッセージの意味とは…。
二十年前はほんの小さなセセラギのような澄んだ緩やかな流れだったものが、二十年の時を経て濁った激流と変貌した…。
彼らはその流れに、いつの間にか翻弄されていたのだ…。
七名がそろう時、この物語は終焉する!!
結末は辛いので覚悟してください!
実に長い、原稿用紙千枚クラスの大作なので、なかなか手が出なかったため、もう既読の人やドラマを見た人には何を今更と思われるかもしれません。
しかしまだドラマも見ていないし読んでもいないという方には、よくできた話なので、是非とも読んで頂きたいと思う次第です。
文庫本も出版されていますので。

有栖川有栖著【狩人の悪夢】

2018-08-02 17:58:35 | 本と雑誌

人気ホラー作家・白布施正都に誘われ、ミステリ作家の有栖川有栖は、京都・亀岡にある彼の家、「夢守荘」(ゆめもりそう)を訪問することに。
そこには、「眠ると必ず悪夢を見る部屋」があるという。
しかしアリスがその部屋に泊まった翌日、白布施のアシスタントが住んでいた「貘ハウス」と呼ばれる家で、右手首のない女性の死体が発見されて…。
俺が撃つのは人間だけだ!
彼は、犯罪を「狩る」男。
臨床犯罪学者・火村と、相棒のミステリ作家・アリスが、悪夢のような事件の謎を解き明かす!
「あなたにとって喧嘩かもしれませんが、私にとっては”狩り”です」(火村英生)
アリスが事件に巻き込まれ、そこに火村が登場するというパターン。
今回は“狩り”がテーマ、最後は犯人=獲物を狩りのように追い詰めていく…。
とまぁ書きましたが、本心をいうと、これ最悪の駄作である。
まず、犯人とその動機が当初から見えていた、後にどんでん返しがあるかと期待していたが、フーダニットに反するのを恐れたか、最終の謎解きていうか、犯人を狩る場面は、言い訳めいていた。
殺害現場に色々と謎がちりばめていたが、そんなことどうでもよいってなってしまった。
あとがきに、著者は〈倒述〉の手法をとろうとしたが、駄目だったので云々が書かれていたが、つまり古畑任三郎や刑事コロンボのような、犯人目線で描こうとして無理だとわかり、今回のような作品になったようだ。
”狩り”なんて、目くらましでしかない、本当に痛々しいほどのできの作品であった…。
これほど痛烈に批判するのは、著者に奮起して頂きたい一心からであります。
私は本格ミステリを敬愛する一人であります!!