九編からなる短編集。
1日一編、寝る前にじっくり読む、そんなことを書いてあったので、9日間かけて読了。
『正月の決意』
前島達之・康代は、夫婦二人きりになっていたが、正月には書初めをし、お屠蘇を飲むのを習慣にしていた。
午前6時、近くの神社に初詣に行く。
ところが、神社の賽銭箱の前に、なんと町長が倒れていた。
警察を呼んで、さぁ大騒ぎとなるが…。
『十年目のバレンタインデー』
峰岸は、嘗ての恋人だった津田知理子に突然食事に誘われた、なんとバレンタインデーの日だった。
しかもフランス料理を、御馳走してくれる。
そしてバレンタインデーのチョコまでもらった。
しかし彼女には、ある目的があったのだった…。
『今夜は一人で雛祭り』
三郎は娘真穂の婚約者木田修介の両親と、高級料亭で食事をした。
俊介の家は東北でも屈指の総合病院を経営していて、大変な資産家だった。
東京で研修医をしいる俊介は、研修期間終了後東北に戻り、父親が院長をしている、その病院で働くという。
つまり、出版社を辞めて真穂もそれについていき、専業主婦となるのが条件だった。
真穂は夢を捨て、東北にいってしまうことになる。
面食らう三郎だったが…。
『君の瞳に乾杯』
三十路前の内村は恋人もなく、場外馬券場かパチンコ店に通うだけの、実につまらない人間。
嘗て大学時代の友人であった柳田と、偶然場外馬券場で出くわした。
そして内村の現状を知り、柳田は合コンに誘ったのだった。
相手はモデルのグループらしい。
今度の火曜日、場所は六本木、その日は内村もあいていた。
内村は喜んで参加することにした。
そして当日、内村の向かい側に座ったのは、モデルにしては小柄な、なんだかアニメキャラみたいな女の子・モモカちゃんだった。
アニメ鑑賞が好きということで、内村と意気投合して、話が弾んだのだった。
二軒目でも、殆ど二人で喋っていたし、別れ際連絡先まで交換した。
一週間後、二人は都心のお好み焼き屋にいた。初めてのデートである。
モモカちゃんはモデルなんかではなくキャバ嬢だったが、内村は気にしなかった。
モモカちゃんは、内村に店にくるなと宣言。
それにモモカちゃんは、自分のことを根掘り葉掘り訊かれるのを嫌がるようであった。
さてこの二人の結末は…?
『レンタルベビー』
エリーはロボットの赤ちゃんをレンタルして、長期休暇期間子育て体験をすることにした。
その赤ちゃんはまるで本当の赤ちゃんのごとく、実に精密に出来ていた。
赤ちゃんロボットには「パール」と名づけた、真珠のように肌が白いから。
恋人のアキラと一緒に暮らし、本格的に子育てを経験することになったのだが…。
『壊れた時計』
俺は働いていた居酒屋をクビになってからは、プー太郎状態が続いていた。
しかしAから突然電話がかかってきて、仕事を依頼された、報酬はかなりの額だ。
実は、家賃を三カ月分滞納していて、もうじき追い出される寸前の状態。
Aから依頼される仕事は、かなりやばい仕事なのだが、背に腹は代えられぬ、即引き受けた。
仕事は、あるマンションの一室から、ある彫刻を取ってくるだけなのだが、どうやら盗んでくるようだった。合鍵は既に出来ていた。
そのマンションの一室に、合鍵で忍びこみ、彫刻を探すが、なかなか見つからない。
時間がないので焦っていたら、その部屋の住人が突然帰ってきて、鉢合わせになってしまったのだが…。
『サファイアの奇跡』
未玖はある日冒険してみた。
いつも通う道とは違う、知らない町に足を向けた。
そして、とある神社を見つけた。
その神社で鈴を鳴らして、「お金持ちになれますように」とお祈りをした。
お賽銭なんか入れていなかった…。
未玖は父親を亡くし、母親が働いてなんとかギリギリの生活をしている、そんな貧乏暮らしだったからだ。
未玖はその神社で一匹の猫と出会う。
薄茶色の縞柄で、額だけ少し濃い茶色が幾筋か入っている。
態度は尊大で横柄なのだが、何故か憎めない。
それから毎日、その猫を目当てに、神社に通うことになった。
なんと、その猫はマシュマロが好物のようだった。
稲荷ずしに似ているので「イナリ」と名づけたのだが…。
『クリスマスミステリ』
黒須はクリスマスイブに、本当のパーティーの前に、二人きりで会いたいという、樅木弥生の提案に食らいついた。
黒須は、弥生を殺害する計画をたてていたのだ…。
『水晶の数珠』
直樹はボストンに根城おき、役者への道を模索していた。
バイトで鉄板焼きのレストランで働いているが、華麗なる包丁さばきを披露している時に、調理服の下でスマートフォンが振動していた。
後で確認したら姉だった。
直ぐに電話したら「来週の十四日に帰ってこられないか?」とのこと、父親の誕生日だそうだが、直樹は勘当された身。
断ろうとしたが、父親は癌でこの誕生日が最後になりそうだとのこと。
結局帰ることにしたが、東京駅で新幹線に乗ろうした直前、何故か父親から電話があった。
何故自分が帰ってくることを知っているのか、それになんでスマフォの番号を知っているのか、ちょっと疑問だったが、父親は直樹に対してひどい悪態をついた。
腹をたてた直樹は、成田空港に引き返すはめになったのだが…。
サスペンスあり、心温まる物語ありで、まったく飽きさせない。
各物語、最後のどんでん返しのオチがいい♪
意外性と機知に富み、四季折々の風物を織り込んだ、極上の九編。