HEART OF STEEL
ネオ・ハード・ボイルド!
鋼の心を持つ女、探偵・里子の事件簿。
夫が謎の死に方をして、結局夫のあとをついで探偵業に入った、夫の死に疑問を持ち、それを追及したい意思もあり、やけそく的な気持ちもあった…。
夫が残した、メーカー不明の三十八口径のリボルバー(絶対に足はつかないといっていた)を、いざというときに持って挑むのである。
『雪のマズルカ』
「あなたが笹野里子先生ですか?」先生づけで呼ばれたのは初めてだ。
「依頼したい仕事があるんですが」「電話では受け付けないことにしています」
「は?」「依頼人と直接会って話をきいてからお受けするかどうか返事をします。面会の日時と場所は今相談に応じられます。よろしければ」
「意外と面倒なんですね」「お気に召さないのでしたら、どうぞ他にへ」
是非とも受けてもらいたいってことで、現れたのは滝本だった。
代理人で、運転手つきの高級車で迎えにきた…。
『氷の炎』
ある日、突然自宅に電話が入った。里子は無視しようと思ったが、結局とってしまった。
相手は四十代後半の男とおぼしぎ男だった。
里子は事務所にくるように命じて、男は承諾して、自宅に電話したことをわびた。
その男は、スターの村田青二だった。
愛人の凍野もえのことを調査して欲しい、「いったい何者なのか」…。
『アウト・オブ・ノーウェア』
二人の少年がいた。
日本の果てにある「施設」で暮らしていた。
「アウト・オブ・ノーウェア(どこからともなく)」やってきて、また「トゥ・ノーウェア(どくへともなく)」去っていった。
少年甲は頭がよくて邪悪だった。少年乙は力が強くて邪悪だった。
笹野里子のもとに、姉の高石ミナが何者かに殺害された。その犯人を突き止めてほしいとの依頼を、妹の高石ミノがしたが、それは警察の仕事と断るが、全然警察ではらちが明かないということだった。
それにひどい殺害状態で、その死体を見たとき、嘔吐してしまったらしい。
朋愛産業の網代(あじろ)和雄とつきあっていたとのことだったが…。
『ショウダウン』
笹野里子はある日、死んだ夫の幽霊か幻かがやってきた。
実は夫は探偵業をやっていたが、二年前乗っていた車が熱海の崖からダイブした。
助手席には女がいた。あるクラブのナンバーワン・ホステスだということだった。
二人の体内からは大量のアルコールが検出された。警察は事故だと結論を出した。
しかし里子は、夫はいいかげんな人間だったが、慎重にことを行っていたので、その死に方に疑問を持っていた。
夫は「君に自由になってほしい」「ぼくに会う前の君のように」と言い残し消えた。
その後、妙な依頼人が現れた。
その男も代理人だった。男の名は埼甲(さいこう)和男。
依頼人は国会議員で、近々に改造される内閣の重要なポストに就任することが内定しているらしい。
その議員の名は繁村丁次、里子も知る大物である。
反社会勢力の男と密会している写真を送られきたそうで、それを写したのが、里子の夫らしい…。
かなりハードボイルドな内容だが、時折芦原節が出て、プッと笑ってしまう場面もある。