腕貫ってなに?うでぬき。事務仕事中に袖が汚れないように嵌める筒状の布製品。
両腕セット2000円程度で購入可能です。
安楽椅子探偵の新ヒーローは正体不明な公務員!
市民サーヴィス課・臨時出張所
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『贖(あがな)いの顔』
漆島和哉(うるしま ともや)は兄の浩範(ひろのり)から、勤めている福色(ふくしき)通運を辞めることを打ち明けられる。
しかも4月4日までに…。
浩範の身に生じたのは、それは一昨々年4月4日から始まる。
三年前の4月4日午後四時頃、〈ミラ・ボレロ〉というマンションに立ち寄った。
鳩が一羽406号室(ラグビー部の先輩・忠津川〈ただつがわ〉の部屋)に強烈にぶつかるのを目撃した。
後で知ったが、同じ4月4日に忠津川は、部屋のベランダから転落死していた。
一昨年の4月4日には〈タワーハウス櫃洗(ひつあらい)〉に荷物を届けにいったら。
そのマンションの4階の真ん中あたりの部屋に、鳩が猛烈に突っ込んできたのを目撃。
その部屋の住人兵本(ひょうもと)という人物が、青酸カリで服毒死していた。
そして昨年4月4日午後四時にならんとする時、〈イヒツ・レジデンス〉というマンションの401号室の和辻直(わつじ ただし)さんへ配達にいき、インタホンでちゃんと応答があったので、部屋へ向かったら、その和辻さんがミニスカート姿の小柄で華奢な女を刺し殺していた。
そして三度、鳩が部屋に突進してきた…。
浩範自身呪われているかのような恐怖を感じ、今年も4月4日が迫ってきているのだった…。
『秘密』
水無瀬清広(みなせ きよひろ)氏は、自分(佐浦滋比呂〈さうら しげひろ〉の代わりに殺人犯として服役してくれた恩人であった。
もう四十年も前の話で、爾来一度も相まみえることもなかった、その水瀬氏の死去知り、今日は葬儀に駆け付けたが…。
未だに不思議なのはなぜ水無瀬氏は、自分の身代わりになってくれたのかだった…。
『どこまでも停められて』
腕貫探偵に相談にきたのは、〈タワーハウス櫃洗〉最上階15階の角部屋住む速水本一郎(はやみ もといちろう)であった。
自分が借りている駐車スペースに、必ず月曜日の朝、よその車が駐車されている。
自分は車を持っていないが、マンションの資産価値が落ちるとの不動産屋の口車に乗ってしまい、借りている次第だが、勝手に停められるのは心外である。
ナンバーを調べて管理会社か警察に知らせようとするのだが、駐車場に降りたら、もう車はいない…。
『いきちがい』
住吉ユリエ(腕貫探偵をダーリンと慕う女子大生のお嬢様)の企画で、霧乃星(きりのほし)幼稚園の同窓会を開催した。
十年後に開封される予定のタイムカプセルが、みんな忘却していて、別の工事の折に掘り出された。
そこでユリエは1席もうけることにしたのだが、参加者は当時の担任の国香祐子(くにか ゆうこ)先生・ユリエ・小泊瀬海人(おはせ かいと)・富里奈緒美(ふざと なおみ)・村山晴子(むらやま せいこ)そして、丸茂大輔(まるも だいすけ)、彼というより彼女と表現する方があっているような、栗色のショートヘアの若い娘に変貌を遂げていた。
どうやら華の女子大生、ではなく、男子大学生らしい。トーンがやや高めの、普通の女性のものとしか聴こえない声でそう明かされても他の出席者たちはなかなか信じられないらしく、揃ってぽかんと口を半開きにしている。その胸の膨らみやウエストの括れはもちろん、ひとりひとりに丁寧に笑顔を向ける所作もいちいちコケティッシュだ。
それから、国香先生は遅れてくるとのことだった…。
さぁそれら様々な要因が、殺人事件のトリガーを引くことになろうとは、誰も予想だにしなかった…。
ユリエは今回の事件に対し、非常に心を痛めるが、ダーリンこと腕貫探偵がそれを癒してくれることだろう…。
黒いスーツとネクタイ、勤務中は装着している黒の腕貫、鉛筆のように細い腕貫探偵であるが、その黒縁めがねの奥の目は、総てを見通し、快刀乱麻を断つごとく謎を解くのである!