長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

近藤史恵著【歌舞伎座の怪紳士】

2020-11-28 17:30:00 | 本と雑誌


岩居久澄(いわい くすみ)、27歳。無職。実家暮らし。将来がちょっと不安だけど…。
転機は、思わぬところからやってくる。
祖母にもらった一枚のチケットが、私の人生を変えた。
生活に不満はないけれど、不安はある。
多摩市の実家(母娘の二人暮らし、母・美和子〈みわこ〉は久澄が高校生のときに離婚していて正社員〈大手化粧品会社のラボ〉として働いている、姉の香澄〈かすみ〉も医師として働いていて、一人目黒でマンション暮らしをしている)での家事手伝いをしている岩居久澄は、心のどこかに鬱屈を抱えながら日々を過ごしていた。
実は久澄は一度就職していたのだが、上司の陰湿な虐めにあい、パニック障害を発症してしまい、外出もままならないようになり、退職を余儀なくされたのであった。
今でもメンタルクリニックに通っている。
収入は母親の毎日の弁当作りで月一万円と、香澄が衝動買いをしてしまった、黒いチワワのワルサを毎日二度散歩させる報酬が月二万円で、月収は三万円。
もう三年も自宅警備員、つまりニートをやっているのだ。
そんな彼女に奇妙なバイトが舞い込んだ。
祖母(荒木しのぶ/76歳・実は離婚した父方の祖母)の代わりに芝居を観に行き、感想を伝える。ただそれだけで、一回五千円もらえるという。
二つ返事で了承した久澄は、初めての経験に戸惑いながら徐々に芝居の世界にのめり込んでいく。
歌舞伎、オペラ、演劇…。どれも楽しい。けれど、久澄には疑問があった。
劇場でいつも会う親切な堀口と名乗る老紳士。あの人っていったい何者…?
私が行く芝居に必ず「彼」がいるのは、なぜだろう?
様々な事件に遭遇しながら、やがて久澄は立ち直っていく…。

実は私もパニック障害を経験しているので、久澄の過呼吸について我が身を振り返るような気分でありました。

有栖川有栖著【インド倶楽部の謎】

2020-11-19 21:32:10 | 本と雑誌

二〇一八年九月五日 第一刷発行。
著者は『国名シリーズ』を八作品出していたが、その後長期間中断していた。
本作は久々に発行されたもので、神戸を舞台にした、お馴染みの火村&有栖コンビの長編本格ミステリ。

前世から自分が死ぬ日まで—-すべての運命が予言されているというインドに伝わる「アガスティアの葉」。
この神秘に触れようと、神戸の異人館街の外れにある屋敷(インド亭・全体としてはコロニアル様式なのだが、インド風の装飾が柱や鎧戸の周辺などに随所に施され、隣人たちがこう呼ぶ)に〈インド倶楽部・有栖が作中で勝手に名付けた〉のメンバー七人(ある神秘な絆で結ばれた〈輩・ともがら〉)、インド亭(戦前から戦後にかけてインド人の大家族が住んでいたが、帰国したので、その後持ち主が転々とし、五年前に手に入れた)の持ち主・間原郷太(まはら ごうた・有名なナイトクラブ・〈ニルヴァーナ〉のオーナー・その名からマハラジャと呼ばれる・四十八歳)、その妻・洋子(ようこ・四十九歳)、加々山郁雄(かがやま いくお・有名なプロモーターで間原郷太の友人であり、心強いビジネスパートナーでもある・五十歳)、井深リン(いぶか りん・ヨガインストラクターで〈ヨガスタジオ・リン〉の経営者・メンバー中最年少・二十代~三十歳位か?)、坊津理帆子(ぼうつ りほこ・私立探偵・三十九歳)、佐分利栄吾(さぶり えいご・臨床心理士・三十三歳)、弦田真象(つるた しんぞう・ストリートミュージシャン?・三十五歳)が集まった。
その他に、間原夫婦の一粒種の愛娘・花蓮(かれん・十七歳・高校二年生)も、たまにこの会に参加することもあるが、この日は友達とミュージカルを観劇した後、その友人とお喋りしたりして帰りは遅くなった。
今回の会は、インド人のナーディー・リーダーであるラジープに、メンバー中三名(加々山郁雄・坊津理帆子・間原郷太)が「アガスティアの葉」のリードをやってもらうための集まりだった。
井深リンの要請で、出戸守(でと まもる・便利屋?・三十半ば)が、ラジープを連れてきたのだった…。

その数日後、イベントに立ち会った者が相次いで(出戸守と坊津理帆子)殺される。
まさかその死は予言されていたのか⁉
捜査(フィールドワーク)をはじめた臨床犯罪学者の火村英生(ひむら ひでお)と推理作家の有栖川有栖(ありすがわ ありす)は、謎に包まれた例会と連続殺人事件の関係に迫っていく!
火村にとっては今回の犯行動機が理解の範疇外だった、事件解明には非科学的な「輪廻転生」こそが重要な鍵となるのだ…。


祝アーモンドアイ八冠達成💛

2020-11-04 01:22:51 | 日記・エッセイ・コラム

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天皇賞秋を勝利し、やっと八冠馬になった。
芝コースのみでは史上初となる。
JRAは三週連続でミラクルを見せてくれた(^^♪
コロナ過で暗いこの世相に、一縷の光を投じたのではないか?と私は感じた次第である。
レースはなんとダノンプレミアムが逃げた、これまで末脚にもうひとつ伸びを欠いていたので、思い切った戦法に出た。
アーモンドアイも好位につけて追随、直線ではダノンプレミアムをかわし先頭に躍り出るも、クロノジェネシス(秋華賞・宝塚記念)か伸びてきた、さらに鋭い脚を使いフィエールマン(菊花賞・天皇賞春連覇)も後方から追い込んできた。
結果、半馬身凌いでアーモンドアイが1.57.8(上がり33.1)で勝利した。2着は5番人気のフィエールマン(上がり32.7)、そのクビ差3着は2番人気のクロノジェネシス(上がり32.8)、4着は6番人気の果敢に逃げたダノンプレミアム(上がり34.0)、5着には4番人気のキセキ(上がり34.1)が入線した。
尚、3番人気だったダノンキングリーは最下位の12着に沈む。
2歳時の馬体重(450㎏)に戻っていたのも原因か?またはGⅠレースでは通用しないのか?はたまた故障か?なんとも不甲斐ない結果に終わった。

史上最強牝馬・アーモンドアイ
血統背景
父親はロードカナロア(香港スプリント2勝・スプリンターズS2勝・安田記念・高松宮記念等短距離で活躍)日本ダービー馬のキングカメハメハ産駒。遡ればミスタープロスペクター系。
母親はフサイチパンドラ(エリザベス女王杯)、サンデーサイレンス産駒、遡ればヘールトゥリーズン系。
父親の血統背景を遡ってよく見れば、そんなにスプリンター系の血統とはと、私としては首かしげるのだが…。

アーモンドアイは2歳デビュー戦の新馬戦を負けて2着だった、距離が1400mと短かったのか、自慢の末脚も爆発できず。やはり父親の実績を考慮し、スプリンターとして育てようと陣営は考えたのかもしれない。
続く未勝利戦では、見事上がり33.5の末脚爆発で、本領発揮、今回は距離も1600mに伸びていた。
そして続くシンザン記念(同じくマイル戦)も、稍重の馬場コンディションながら、末脚34.4で快勝した。
さて、いよいよ桜花賞(1600m)!末脚33.2と爆発、見事一冠目を獲得。
そしてオークス!これは距離が2400mになるので、かなり懸念された、父親の実績のこともあるのだが。結果は中段から一気に差して、33.2の脚で快勝して、二冠目。
いよいよ秋華賞(2000m)、これも上がり33.6で快勝、見事牝馬三冠馬となった。
この後はジェンティルドンナ的挑戦で、なんとジャパンCに果敢に挑戦し快勝する!
翌年古馬となり、ドバイに渡り、ドバイターフ(1800m)を快勝。
帰国後安田記念に出走するも、スタート直後の不利もあり3着に終わる。
その秋には、天皇賞に出走し、好時計で堂々と快勝。
その後は、香港Cの予定だったのだが熱発で回避、止む無く予定外の有馬記念に出走。
しかし、初めての競馬場のトリッキーな中山コースに戸惑ったのか、2500mの距離が合わなかったのか、まぁ順調でなかったのは事実だったのではあるが、なんと9着に終わって競馬ファンは驚かされた。
翌春(今年)は、ヴィクトリアマイルで快勝したが、安田記念は2着に終わっていた、どうもこのレースと相性が悪いようだ。ただ右回りが苦手というわけではないが、東京コースは至極得意であるようである。
来年3月で引退予定だが、今後どうするのか?
この馬はレース間隔を十分にとった方が調子はよいようなので、十冠を目指すのもよいが、陣営の慎重な考慮に期待するものであります。