長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

近藤史恵著【マカロンはマカロン】

2017-10-26 18:13:42 | 本と雑誌

下町の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マルは、スタッフ四人、カウンター七席、テーブル五つ。
フランスの田舎を転々として、料理修行をしてきた変人シェフ三舟さんの気取らない料理と、身も心も温めてくれるヴァン・ショーは大人気。
そして、実はこのシェフ、客たちの持ち込む不可解な謎を鮮やかに解く名探偵でもあるのです。
シリーズ第三作目。
『コウノトリが運ぶもの』
<パ・マル>のギャルソン高築君が、近くにあるパン屋<ア・ポア・ルージュ>にオリーブオイルをもらいに行った時、最近同じ通りにできた自然食品店の安倍さんを紹介される。
ビストロと聞いて、安倍さんの目が揺らいだ。
「あの…わたし、乳製品アレルギーで…」という。
高築君は「あらかじめそういって予約していただけば、乳製品をまったく使わない料理もお出しできますよ」といったが、安倍さんはそそくさと帰ってしまった。
その安倍さんから<パ・マル>へ予約が入った…。
『青い果実のタルト』
何故かその日<パ・マル>では出したことのない、ブルーベリーのタルトはないのかと二人の客に聞かれる。
スーシェフの志村さんが、ノートパソコンを持ってきて「これのせいみたいですね」
パソコンを開いてインターネットにつなぐと、あるブログを画面に立ち上げた。
そこには間違いなく<パ・マル>の料理の写真が載っていたが、「デザートはブルーベリーのタルトでした!」と書いてあった。
ないはずのブルーベリーのタルトの写真も掲載されていた…。
『共犯のピエ・ド・コション』
<パ・マル>に久しぶりのお客、村上さんがやってきた。
今は館野という姓になっていた。
離婚して、一人息子の冬樹君と暮らしているらしい。
「実は来月その冬樹が誕生日である」というので、<パ・マル>で、誕生祝いをやってもらうことになった。
館野さんは再婚するそうだ、一番の理由は人見知りの冬樹君が何故か、その相手男性になついていることだそうだ…。
『追憶のブータン・ノワール』
犬飼さんは<パ・マル>の常連客である。
とにかく肉食である。
7年間の遠距離恋愛の末、中国の女性と結婚することになったそうだ。
だがその彼女に豚の血を使うブータン・ノワールの話をしたら、拒絶反応されたそうだ。
その彼女になんとか、一口でもいいから、ブータン・ノワールを食べてもらいたいと彼はいう…。
『ムッシュ・パピオンに伝言を』
ランチのラストオーダ寸前、お洒落な粋に蝶ネクタイをした紳士が飛び込んできた。
鴨のローストに、ソテーした無花果や桃のなどのフルーツを添えた一皿が、紳士の前に置かれたとき、勝手口のほうから声がした。
近所のブランジュリーのパン職人である中江さんだった。
バケットを届けにきてくれたのだ。
試作品を作ったので食べて欲しいとのこと…。
珍しいブリオッシュ・サン・ジュニだった。
ふと気づけば、例のカウンターの紳士が、ずっとこちらを見ていた…。
『マカロンはマカロン』
「予約していた羽田野ですが」四十代の女性がそう名乗った。その女性がふっくらしているのと対照的な、棒のように痩せて長身な若い女性がその後ろにいた。
「好きなものを頼んでいいわよ。これも勉強だから」年かさの女性はいっている。
なんと、その羽田野さんが、実は三舟シェフの修行中の知り合いだった…。
『タルタルステーキの罠』
ある日、高築君が妙な電話を受けた。
タルタルステーキは出せるか?それをその日のメニューに載せれるか?といった不可思議な質問だった。
良の返事をすると、また改めて電話するとのこと…。
後日その予約が入ったが…。
『ヴィンテージワインと友情』
男女四人の若い客が、「ワインの持ち込みはできるか?抜栓料はいくらか」を聞き、三週間目の土曜日六人の予約を入れた。
三週間目のその日のランチタイム終了の頃、若い華奢な女性が六本入りのワインバックを持ってきた。
どれもソムリエの金子さんが、目をむくほどの高級ワインだった。
七時過ぎにそのグループはワインを持ってきた女性を除いて、<パ・マル>に集合していたが、なにやら不穏な空気である…。

東野圭吾著【犯人のいない殺人の夜】

2017-10-21 16:17:09 | 本と雑誌

1990年7月30日 初版第一刷発行
『小さな故意の物語』
達也が死んだ。枯葉のように、屋上からひらひら落ちて死んだ。
小学校からいつも親友だった行原達也の、高校校舎の屋上からの転落死に疑問を持った、中岡。
あの慎重な達也が何故屋上の、それも柵の上なんかに乗っていたのか?
警察は、自殺で処理しょうとしている…。
中岡は独自に調査を開始するが…。
『闇の中の二人』
永井弘美が担任するクラスの生徒、荻原信二からの電話で「弟が死んだので今日休みます」とのこと。
詳しく聞くと「弟は殺された」らしい…。
信二の弟はまだ生後三カ月だった。
なんとも不思議な話だった…。
『踊り子』
孝志の水曜日のスケジュールは、英語塾で勉強することだった。
だが最近、少し帰りが遅くなっている。
実は孝志が塾に通う途中にS学園という名門の女子高があって、その裏口から入って、体育館でひとり新体操のレッスンをしている少女の様子を覗くようになっていたのだ。
孝志の唯一の楽しみになっていたのだが…。
『エンドレス・ナイト』
朝かかってきた電話で厚子は目覚めた。
「こちら大阪府警のものです」「じつは、ご主人の田村洋一さんが何者かにナイフで刺され、お亡くなりになられたんです」
厚子は二時間後、新幹線の二号車両のシートに座っていた。
大阪の店を任された洋一だったが、厚子は大阪が嫌いで猛反対したのだ。
それで、今は東京と大阪で別居生活をしていたのだが…。
『白い凶器』
A食品株式会社の敷地内で、材料課安倍孝三の死体が発見されたのは、この日の早朝だった。
七時に守衛が見回りをはじめたところ、本館の裏の通路でみつけたのだ。
死体はコンクリートの通りの上で大の字になっていて、大量の血が流れ出していた。
どうやら六階の材料課から落ちたようだが…。
『さよならコーチ』
アーチェリー選手の望月直美が、タイマーをかけ、電気のコードを胸と背中につないで自殺した、しかも、その自殺する光景をビデオに残して。
そのビデオを残されたコーチは、直ぐに警察に連絡した。
所轄署の刑事は髭をはやして、目が丸く人がよさそうだったが…。
『犯人のいない殺人の夜』
日本でも指折りの建築家岸田創介氏の家で、殺人事件が起こった。
その場いたのは、創介氏とその夫人の時枝、そして息子の正樹と隆夫、隆夫の家庭教師である拓也だった。
そこには胸にナイフの刺さった女が横たわっていた…。
拓也は脈を確認すると「だめですね」と首をふった。
犯人がいないのに殺人があった!?
でも犯人はいる…。
七篇とも、思わず唸る切れのよい本格ミステリーで、秀作ぞろいである。



有栖川有栖著【長い廊下がある家】

2017-10-16 15:02:30 | 本と雑誌

『長い廊下がある家』
廃村に踏み迷った大学生の青年は、夜も更けて、ようやく明かりのついた家に辿り着く。
そこもやはり廃屋だったが、三人の雑誌取材チームが訪れていた。
この家には幽霊が出るというのだ…。
地下にある二つの邸を繋ぐはずの、長い、長い廊下。
そこで殺人が起こる、思い違い、錯誤、言い逃れに悪巧み。
それぞれに歪んだ手掛かりから、臨床犯罪学者・火村英生が導き出す真相とは?
閉ざされた扉の前で、誰の耳にも届かない叫び声があがる…。
『雪と金婚式』
田所安曇と夫の雄二は、二人で金婚式を祝っていた夜、雪が降ってきた…。
ロスアンジェルスに暮らす娘夫婦と孫娘が映るビデオを見て、二人は相好を崩す。
幸せ一杯の安曇の唯一の屈託は、離れに転がり込んだ義弟の重森弼の身の振り方だった…。
翌朝、その弼が離れで殺されているのを、安曇が発見する…。
『天空の眼』
本探しが好きな有栖川有栖、今日も阿倍野筋に面した書店をうろうろしていたら、、背中から「有栖川さん」と声をかけられた。
マンションでお隣さんの真野沙織だった。
彼女は私立高校の英語教師だ。
その彼女から相談をもちかけられた。
城北大学に通う、かつての教え子から「心霊写真を撮ってしまったから、よくないことが起こりそうで心配なんです」と、相談を受けたとのこと。
一方とある空き家の屋上から、仰向けに落ちたらしい死体が発見された。
兵庫県警察本部の樺田警部以下が出動を要請され出向いた。
死んでいたのは、城北大学商学部三年、富士野研介。
しかし、この事件にあの心霊写真が関わっているそうなのだった…。
『ロジカル・デスゲーム』
入試の合格発表も終わり、ひと息ついた二月二十日。
火村の研究室に一通の速達が届いた。
差出人の名前は千舟傑とあった。
火村はその千舟に言葉巧みにおびき出されて、とんでもないゲームに付き合わされることになった…。
まっすぐな道が、歪んでみえるように。
罠に、おちるように。
悪意ある者の奸計に、火村英生の怜悧な頭脳が挑む。
抜群の安定感持つ著者の作品、安心して読めることだろう!



東野圭吾著【放課後】

2017-10-11 15:49:56 | 本と雑誌

第31回江戸川乱歩賞受賞作にて、大ベストセラー作家のデビュー作。
何故か私はまだ読んでいなかった、他の作品を多く読んでいるのに…。
同じく江戸川乱歩賞受賞作の小峰元著「アルキメデスは手を汚さない」に感動し、小説を書こうとした著者。
アルキメデスよりずっと秀作である。
その後の作家としての活躍ぶりが、顕著にそれを顕しているだろう。
さて主人公前島は、本来地元の国立大学の工学部の情報工学科を卒業し、エンジニアの道を歩もうとしていたが、東北に転勤辞令が出て、これには親の反対もあり、数学教師の資格を取得していたのこともあり、こねで私立清華女子高等学校とういう名門の女子高に職場を得た。
彼は「マシン」とあだ名されていた、つまり数学をかってに教えかってに終わらせる授業内容だった。
決して教師として、優秀でもなんでもなかったが、そもそも数学の授業を熱心に聞く生徒は少数派であった。
その前島が、最近だれかに何故か命を狙われていた。
ホームから突き落とされそうになったり、感電させられそうになったり、頭上から鉢植えが落ちてきたり…。
そんな中、校内更衣室で生活指導の教師が密室状態の中、青酸中毒で死んだ…。
教師を二人だけの旅行に誘う問題児、頭脳明晰の美少女で剣道部の主将、先生をナンパするアーチェリー部の主将。
犯人と思しき生徒は次から次へと現れる。
そして、運動会の仮想行列で、皆の目の前で第二の殺人が…。
最後まで息が抜けないミステリー、著者の原点の作品として、多大に評価する。


アンソロジー【しあわせなミステリー】

2017-10-02 17:44:45 | 本と雑誌

人の死なないミステリー♪
心がじんわりあたたまる4つの物語。
伊坂幸太郎著『BEE』
普段は超恐妻家の営業マン…、本当の職業は殺し屋(兜)。
その兜が同業者の(スズメバチ)に命を狙われている。
私生活では自宅の庭の金木犀に本物のスズメバチが巣を造っていた。
兜は殺し屋の(スズメバチ)と本物のスズメバチの両方の駆除を強いられる…。
う~んややこしい!!
中山七里著『二百十日の風』
地元の自然を守ろうとする城崎夏美と、産廃処理施設を誘致しようとする久部圭一。
久部は強引に産廃処分場を建設しようとするが…。
そこに産休教師に代わって赴任してきた、高田三郎という教師がからんで、事態は意外な方向に…。
柚月裕子『心を掬う』
米崎地検で検察事務官を務める増田暘二、直属の担当検察官の佐方貞人、刑事部副部長の筒井義雄の三名で酒処「ふくろう」で飲んでいたとき、おやじから「届かない手紙」の話を聞かされた。
なんでも、常連客のひとりが北海道の娘に出した手紙が、十日経っても届かないとのことだった。
翌日増田は同じ事務官の佐々木信雄から食堂で、面白い話を聞かされる。
市内にいる叔父が、埼玉に住んでいる佐々木の従妹に手紙を出したが、二週間経っても届いていないとのことだった。
この話を佐方に話すと、考え込んでしまった。
そしてその二つの郵便物紛失の件を調べるように指示される…。
吉川英梨著『18番テーブルの幽霊』
原健太は、イタリアンレストランのギャルソンで中学時代のクラスメートだった瀬名幸治から、この一カ月レストランを悩ませている”幽霊事件”を解決して欲しいと依頼され、レストランにやってきたのだが…。
健太に解決して欲しいというわけではなく、実は健太の継母麻希が今は警視庁の鑑識課員だが、元々捜査一課の敏腕刑事だったことを、瀬名は人づてに聞いたからである。
健太は年の離れた妹の葉月と一緒に、先にレストランにやってきたのだった。
麻希は急な家宅捜査が入り遅れてくる予定だった。
ここ一カ月、毎週火曜日の午後六時から八時まで18番テーブルに予約が必ず入るが、予約はバラバラで、予約方法も電話やファックスだったり、インターネットだったり。だけど客は現れたことは一度もないとのことだ…。