長尾景虎の戯言

読んだり聞いたりして面白かった物語やお噺等についてや感じたこと等を、その折々の気分で口調を変えて語っています。

赤川次郎著【三世代探偵団・次の扉に棲む死神】

2020-08-22 21:37:12 | 本と雑誌


著者真骨頂【痛快ミステリ新シリーズ開幕!】
かしまし女三世代。
祖母(天才画家・天本幸代・あまもと さちよ〈72歳〉)&母(お嬢様女優・天本文乃・あまもと ふみの〈40歳〉)&娘(女子高生・天本有里・あまもと ゆり〈16歳〉)が怪事件に挑む!
天才画家の祖母と、生活力皆無な女優の母と暮らす女子高生(私立・興津山〈おきつやま〉学園高校1年生)、天本有里。
母の所属する演劇に出演中、目の前で母の代役の女優(演出家の風宮悠二〈かざみや ゆうじ〉の妻さくら〈31歳〉)が殺された。
次いで風宮の劇団〈空洞〉の別の女優小倉(おぐら)クレア(24歳・日本人の母親とスウェーデン人の父親との間に生まれて美形)が狙われ、有里は次第に一連の事件に巻き込まれることに。
さらに、有里の通う興津山学園高校では、事務長原口恒子(はらぐち つねこ〈50歳〉)に何やら秘密がありそうで…。
皆が皆、怪しすぎ!
信じられるのは三人だけ。
かしまし女三世代が“絆”を武器に真犯人を追う!?
ってなことなのだが、他の主な登場人物としては、まずは有里と同じ高校に通う同級生であり親友の城所真奈(きどころ まな)、二人とも演劇部所属。
風宮悠二は、この興津山学園高校の演劇部の顧問もつとめている。
有里の母文乃とは古い友人なのだ。
興津山学園高校の事務員で、生徒からお姉さんのように慕われている三田洋子(みた ようこ)。
その洋子の弟で、定職にもつかず、いつもぶらぶらしている広士(ひろし)。
その広士とやがて結婚することになる、謎の女アケミ。
捜査にあたる刑事村上良治(むらかみ りょうじ〈40歳〉)
この刑事が、およそ有里が想像していた刑事と、まったくイメージが違っていたのだ。
おっとりした感じで、あんまり「切れる」印象はない。
背はありそうだが、あまり強くはないようだ。少々頼りなげである。
有里の祖母天本幸代の大ファンでもある。
また、文乃の別れた亭主、つまり有里の父親でもある坂田望(のぞむ)。
ここまで読んで頂いた方にはピンときたと思われますが、三姉妹探偵団のキャラやら年齢を変えた、そんな雰囲気の小説であります。
まぁ暇つぶしに読む分には、十分に私は面白いと思いますけど…。

西澤保彦著【リドル☆ロマンス・迷宮浪漫】

2020-08-10 20:10:01 | 本と雑誌


長身痩軀を黒いスーツに包んだ男(?)は、流暢な日本語を操る。彫りの深い顔だちのせいで、まるで外国映画を吹き替えで観ているかのような非現実感が漂う。背中まで伸ばした黒髪が新緑のような光沢を放ち、昏(くら)い光をたたえた双眸、くっきりと形のよい鼻梁、そして尖った顎が、女性のような(むしろ女性そのもの?)白い顔だちを、さらに美しく際立たせている。年齢国籍不詳。
ハーレクインと名乗ったその人物は(いや最早人間でさえないのでは?)、何でも願いを叶えてくれる“魔法使い”…そう聞いて、ここへやってきた。しかし、その噂を誰に聞いたのか、このオフィスのある高層ビルまで、どうやって辿り着いたのか、どうしても憶(おも)い出せない。
部屋の大きなピクチャアウインドウの外には高層ビルの夜景が拡がっている。燦然たるイルミネーションの前に佇立(ちょりつ)するハーレクインの美しさは、ひと際、映える。
ハーレクイン、本人は“道化役”“滑稽な”“斑(まだら)模様の蛇”「言葉自体に斑とか雑色という意味合いがあるのですよ。中世無言劇の道化役も、よく斑模様のタイツを穿いていたとか」と説明するが、もしかしてその正体は“悪魔”なのかもしれない…。

報酬はあなたの「心」。
あなたの気づかぬ「あなた」を探る。
謎の美形心理探偵(サイコ・ディテクティブ)「ハーレクイン」登場!

『トランス☆ウーマン』
神崎理恵(かんざき・りえ)は、ハーレクインに対して、「袴田浩平(はかまだ・こうへい)と一緒になりたい!」とうったえる。
本来自分と結婚するのが決まっていた彼が、伊藤美鈴(いとう・みすず)に奪われたのだというのだが…。

『イリューシン☆レィディ』
菱伊早百合(ひしい・さゆり)は、ハーレクインに対して、「わたし、高校を中退して、実際には大学へ行っていません。すぐ結婚して、子育てと家事に追われていたから。なのに、ふと自分が、高校を中退した後で大検を受け、ある女子大を卒業したんだ、と、そんな錯覚に陥ることがあるのです。自宅の中を探せば卒業証書だって見つかるはずだ…そんな妄想にかられて」。つまり時折、記憶がはっきりしないことがあると、いうのだが…。

『マティェリアル☆ガール』
油又霧絵(あぶまた・きりえ)は、自分のぶよぶよの身体を、元の身体に戻して欲しいと、ハーレクインに対して願うのだが…。

『イマジナリィ☆プライド』
撫河咲(なぶかわ・さき)は、記憶を失い、しかも播万悠有紀(はま・ゆうき)自身から同姓愛の関係にあったと告げられたのだが、自分の身体にはそんな覚えもなく戸惑っている状況を、とつとつとハーレクインに対して話すのだが…。

『アモルファス☆ドーター』
田南裕司(たなみ・ゆうじ)は、日柳幸太(ひさなぎ・こうた)を生き返らせて欲しいと、ハーレクインに対してうったえるのだが…。

『クロッシング☆ミストレス』
冠城久仁子(かむらぎ・くにこ)は、「あの時、もしも冠城ではなくて、直栄(まざかえ)クンのほうを選んでいたとしたら…」と、自己愛に浸ったような無邪気な微笑を浮かべながら独り言ちる。
「あたしの人生は、どうなっていたのかな、って」
そんなふうにハーレクインに対して話すのだが…。

『スーサィダル☆シスター』
浮里千津子(うきざと・ちづこ)は、妹の知子(ともこ)が、「自分はひとの心が読めてしまうから」という。
それというのも知子は、自殺未遂を繰り返し、その理由についてこう説明するのだと、ハーレクインに対して話すのだったが…。

『アクト☆オブ☆ウーマン』
宇出津智(うぜつ・とも)は自分に対して、工月晃(くつき・あきら)が、大切な家族を奪われた恨みを晴らそうと、虎視眈々とその機会を狙っていると思い込んでいた。
さてハーレクインは、今回はどう対処するのか…。

愛の形は色々存在する、それを白日の下にさらさせるのが、ハーレクインではないかとも思える…。
それぞれが、短編でありながら、一話一話が、すごく奥深いのが、本当に恐ろしい…。

『murderous authoress・解説に替えて、あるいは西澤さんごめんなさい』:篠田真由美
まるで、著者に対するオマージュともいえる、今まで紡がれた物語の番外編のように、短編の小説の形にした解説である…なかなか興味深い、だが本編を読む前に先読みするのはご法度で、ネタバレしているように思うから、くれぐれもご注意を(^^♪