◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

12月21日~31日

2018-12-22 15:41:38 | Weblog

12月31日(4名)

小口泰與
大利根の流れに朝日年送る★★★★
利根の流れに朝日が射し、朝日が利根の流れと共に流れ過ぎて行く。「年送る」気持ちが利根の流れと共にある。(高橋正子)

あおあおと年越す赤城風もなし★★★
大利根の瀬尻瀬頭年歩む★★★

多田有花
過ぎし日のアルバム整理大晦日★★★
写真とはすべて過去なり大晦日★★★
大歳や記憶ばかりが鮮やかに★★★

廣田洋一
大晦日暮行く富士を仰ぎけり★★★★
めでたさに一富士・二鷹・三茄と俗に言われるが、洋一さんの生活には富士山が見える生活があるが、大晦日の富士山の暮行く姿を仰ぐと特別の感懐が湧くというものだろう。(高橋正子)

海老天の蕎麦を啜れり大晦日★★★
大年の汗を流せり露天風呂★★★

桑本栄太郎
大歳の嶺の白きや今朝の窓★★★★
大歳の今朝の窓の景色が様変わり。嶺に雪が白く積んでいる。いよいよ新年を迎える空気が張りつめてくるようだ。(高橋正子)

切り上げて散髪へ行く大晦日★★★
しぐるるやフード被りて警備員★★★

12月30日(5名)

廣田洋一
家中を掃き清めしや松飾る★★★
注連を張るお神酒の香り漂へり★★★★

松飾る我が家の灯り灯りけり★★★★
松を飾った我が家に灯り灯り、清らかな静けさに包まれる。新年を迎える人住む家の清らかさいい。(高橋正子)

小口泰與
妻が撒く日毎の餌や寒雀★★★★
妻が撒く餌に毎日やって来る寒雀。寒雀の愛くるしさはもちろんだが、妻のやさしさや少女のような面差しさえもが見えてきてほのぼのとした句だ。(高橋正子)

歳晩やジャクージの泡むくむくと★★★
数え日や酔うて話すは過去の事★★★

多田有花
鉄塔の上の青空年暮るる★★★★
カフェオレに餡パンひとつ年惜しむ★★★
ベランダに差す陽明るし小晦日★★★

桑本栄太郎
カレンダーの一日を残し年迫る★★★
平成の御代の終いや年惜しむ★★★★
準備終え手抜き夕餉や小晦日★★★

川名ますみ
北風吹きて空の碧さを授かりぬ★★★★
北風が吹き、雲を吹き払った。寒さが増して、空の碧さが磨かれ、珠のような青空となる。その碧さを授かったと思う心。(高橋正子)

進むほど静かになりぬ年用意★★★★
小晦日急いて挨拶して別る★★★

12月29日(4名)

廣田洋一
ひととせの禍福あざなふ古暦★★★
振り返る旅行の日々や古暦★★★★
一年使った暦をしまうとき、めくりなおしてみると、様々なことを思い出されるが、旅行の日々が特にたのしく思い出される。楽しいことがあった一年は、よき一年としたい気持ち。(高橋正子)

古暦日めくり締める七福神★★★

小口泰與
パソコンを仕舞て仕事納めかな★★★
大利根に釣する人や年惜しむ★★★★
鯉のえらゆったり動き十二月★★★

多田有花
母連れてお墓参りや年の暮★★★★
老母を連れてのお墓参りは、なによりの親孝行途思う。健やかな母いてのこと。年の暮のお墓参りに一年の安寧を思う。(高橋正子)

北の山終日雪の雲の中★★★
年の瀬のフロントガラス天気雨★★★

桑本栄太郎
数へ日や予定の一つづつ消えて★★★
一つ終へ又想い出す年の暮れ★★★★
年の瀬や駐車スペース無き店舗★★★

12月28日(4名)

小口泰與
数え日や餅つく音もなかりける★★★
力入れ年行く蕎麦を打ちにけり★★★★
年越し蕎麦となる蕎麦であろう。野趣味のある蕎麦は、力をもって打たれるのがいい。

彫り深き赤城の襞や松迎★★★

廣田洋一
濡れティシュー各自に配る仕事納★★★
用済みの書類を捨てて御用納め★★★
掃除機の音の静まり仕事納め★★★★

多田有花
数え日の山を下れば墓に出て★★★★
この事実。墓地は山裾にあって、山を下ればそこに墓があり、そこに暮らすひとびとの人家に繋がる。数え日だからこその思いだ。(高橋正子)

年の瀬の沖輝かしく晴れて★★★
ゆっくりと年惜しみつつ山路ゆく★★★

桑本栄太郎
異国語の祇園の路地や風花す★★★★
風花の舞う祇園の路地を異国の観光客が行き来する。風花も異国語も寒い祇園にいっそう艶やかにしている。(高橋正子)

水仙の香る車内の家路かな★★★★
疼く歯に目覚む朝や寒波来る★★★

12月27日(4名)

廣田洋一
駐輪場少し潰して飾売★★★★
松の枝輪飾り付けて買ひにけり★★★
一つ売り一つ取り出す飾売★★★

小口泰與
濃紺の朝の赤城や枯尾花★★★
仰ぎ見る師走の夜空万華鏡★★★

社会鍋喇叭の音も風に消ゆ(原句)
社会鍋喇叭の音の風に消ゆ★★★★(正子添削)
「も」ではなく、一つに焦点を絞り、はっきり言うのが効果的と思います。句に余情がでます。(高橋正子)

多田有花
産土の社の前に門松立つ★★★
数え日の山に登りて海を見る★★★
裏白を採る人に会う山路かな★★★★
年末山路を歩くと、正月用の裏白を採る人に出遭う。それを見ると正月がくるなあと、思う。裏白のさわさわとした音が聞こえそうだ。(高橋正子)

桑本栄太郎
煤逃げのパチンコ店やご同輩★★★
暮れ泥むビルに入日や冬燈し★★★
喧騒の中の孤独や冬の街★★★★

12月26日(4名)

小口泰與
冬ばらの梢(うれ)に雀や山の風★★★
榛名嶺へ一朶の雲や冬黄葉★★★★
覆いたる牛舎の屋根の落葉かな★★★

廣田洋一
数へ日や米びつの中確かめる★★★
数へ日や正月ねぶた映されし★★★★
数へ日やつい夢を見し宝くじ★★★

桑本栄太郎
投函を終へて安堵や冬入日★★★★
歳晩の済まさなければならない事の一つに御礼状や、賀状を書くことがある。そんな手紙をポストに入れて、冬の入日に迎えば安堵の気持ちが湧く。安堵の気持ちに冬入日が決め手となった。(高橋正子)

うつすらとビルに茜や冬ともし★★★
剪定の瘤となりたる冬木かな★★★

川名ますみ
年の暮郵便受けに葉書増え★★★★
懐かしきひとの夫人へ賀状書く★★★
年の暮泣き出しそうな目は空を★★★


12月25日(5名)

川名ますみ
ヘルパーに夕べの柚子湯気付かれし★★★
散紅葉ひとひら窓にとどまりぬ★★★
持ち寄りし色のにぎやかクリスマス★★★★

小口泰與
噴煙の南へ伸ぶや年惜しむ★★★
撒かれたる餌や梢の寒雀★★★
山風に負けず雄叫び寒鴉★★★

廣田洋一
ケーキ買ひ赤ワイン酌む聖夜かな★★★
ヨガ終へて出でたる街は聖夜かな★★★
天皇の来し方映す聖夜かな★★★★

多田有花
<六甲全山縦走路・終盤三句>
極月の坂登りゆくサイクリスト★★★

年の瀬の稜線笹に覆われて★★★★
年の瀬の山はどうなっているのか、興味が湧くが、有花さんが歩いた稜線は笹に覆われていたのだ。生家の父は、年末には山に羊歯や松の枝を取りに出かけたが、わが生家の山も思い出した。落葉の重なる道を挟むような笹の稜線。笹音もその風景は私も好きだ。(高橋正子)

歳晩の六甲宝塚へ下る★★★

桑本栄太郎
灯芯にあぶら注ぐや蕪村の忌★★★
海鳴りや大鍋掛けて大根炊く★★★
寒柝や夜更けのビルに響きをり★★★★

12月24日(3名)

廣田洋一
雨上がり雲かき分けて冬満月★★★★
冬の雨があがり、雲をかき分けてのぼる満月。寒さも寒さ。洗われたような冬満月の光がきれいだ。()高橋正子)

金星に負けじと照らす冬の月★★★
休日のシャッター街や冬の月★★★

小口泰與
トラックの入庫数多師走かな★★★★
ジ゛ャクージに身体預けて年の暮★★★
数え日やへら浮子ぴくり動きける★★★

桑本栄太郎
青空の高き梢や枯木立★★★★
枯木立が聳え、青空に梢がレース模様のようにくきりと見える。高き梢の先々まで、瑞々しい命が届いている。(高橋正子)

暮れなずむ空にビルあり冬ともし★★★
宵空に星のきらめく聖夜かな★★★

12月23日(4名)

小口泰與
山風や木の葉時雨の九十九折★★★
雨の中梢(うれ)より立たぬ寒雀★★★★
雨の中、濡れながらもじっと梢に止まったままの寒雀。シルエットのようになって、じっと耐えている寒すずめに心寄せた句。(高橋正子)

冬の蜂丸くかたまり山の風★★★

廣田洋一
んの付く野菜数へる冬至の餉★★★
雨止まず日の入り見えぬ冬至かな★★★★
譲位する帝の涙か冬の雨★★★

多田有花
金物と紙に分別古暦★★★
歳末の六甲山を歩きけり★★★
山下りて播磨の魚で忘年会★★★★

桑本栄太郎
底冷や家具のみしみし軋み居り★★★
海鳴りや大鍋かけて大根炊く★★★

水脈長く左右に曳けり鴨の群★★★★
鴨の群が寒さにも拘わらず、水脈を左右にのびのびと曳いて泳いでいる。それぞれが泳ぐ水脈が交差し、水面はにぎやかである。(高橋正子)

12月22日(5名)

小口泰與
朗々と老師の読経寒牡丹★★★
日と風の育てる郷の掛大根★★★★
開かんとして固まりし冬のばら★★★

廣田洋一
朝風呂や柚子二つ入れ浸かりけり★★★★
柚子二つが面白い。家庭の柚子湯なら二つで必要十分。柚子湯の朝風呂が粋でさわやか。(高橋あmさ子)

柚子湯して柚子を絞れる独りかな★★★
柚子の香のふわりと満ちし湯殿かな★★★★

多田有花
まだ暗き冬至の朝へ起きだしぬ★★★
雨あがる冬至の山を歩きけり★★★★

裸木にくっきりと啄木鳥の影★★★★
啄木鳥は意外にも小さい鳥だが、止まり方といい、特徴ある鳥だ。裸木にその正体を透かしている。それを見つけた驚きと楽しさ。(高橋正子)

桑本栄太郎
青畝忌の植えたるように田のみどり★★★★
植えたるような田のみどりは、ひつじ田のみどりだろう。青畝忌はその「青畝」の号のごとき、田のみどりがさわさわと育っている。(高橋正子)

柚子の実とブリキ玩具や冬至の湯★★★★
身を放つ吾に寄り来る柚子湯かな★★★

川名ますみ
冬至風呂突つけば柚子のよく回り★★★
湯の中に気づけば柚子の寄り来たる★★★★
風呂出るも柚子を片付けかねており★★★

12月21日(4名)

小口泰與
一条の日矢の的なり浮寝鳥★★★★
水面に浮く浮き寝鳥。照り陰りに浮寝鳥も照ったり曇ったり。今は一条の日矢が射して、浮寝鳥の羽の色、その寝姿がくっきりと浮かび上がった。「日矢」なので「的」なのだ。(高橋正子)

寒蜆母の在所の味したり★★★
一筋の光の帯や浮寝★★★

廣田洋一
神楽終へ天の鈿女は婆となり★★★★
緋の袴あでやかに舞ふ巫女神楽★★★
稲わらの大蛇坐ませり神楽殿★★★

桑本栄太郎
海鳴りの遠くに聞こゆ懸け大根★★★★
冬日さす壁打ちコートや音弾む★★★
採り跡の葉つぱ襤褸や冬菜畑★★★

多田有花
枯蓮や池に溢れる日の光★★★★
冬の陽を背に頂に立ちぬ★★★
上着脱ぐ播磨灘には冬霞★★★
コメント (1)
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