◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

12月11日~20日

2018-12-12 12:16:19 | Weblog

12月20(4名)

小口泰與
目配せで知らす縁先寒雀★★★
越後へと車の列や十二月★★★★
背伸びして偵察顔や寒雀★★★

多田有花
冬の雨はや街灯の点りおり★★★

裸木の彼方に鉄骨の透けて★★★★
裸木自体、鉄骨のように見えないでもないが、そのすっきりと葉を落とした裸木を透かして建設中のたてものであろうか、鉄骨が見える。裸木と鉄骨の取り合わせが愉快だ。(高橋正子)

昼の雨洗われて咲く山茶花よ★★★

桑本栄太郎
青々と畝のつづくや冬菜畑★★★
枯蔓の畑にのこりぬ支柱かな★★★

一枚の皿の孤食や石鼎忌★★★★
12月20日は、原石鼎の忌日。島根県の医家に生まれる。作者栄太郎さんの故郷は、山陰鳥取。同じ参院の生まれで、孤独の影を持つ原石鼎に、今日の一枚の皿に食事に身を重ねて思った。単に妻の留守だったのかもしれないが。(高橋正子)

廣田洋一
休耕の畑の合間に冬菜畑★★★★
狭き庭形ばかりの冬菜畑★★★
月上り夕焼け残る冬菜畑★★★

12月19(4名)

小口泰與
沼の面の彩を分け行く真鴨かな★★★★

泳跡の色の違えし冬の沼(原句)
泳跡の色を違えて冬の沼★★★(正子添削)

神官の居らぬ社や寒鴉★★★

多田有花
イヤーマフしてパソコンに向かいおり★★★
玄関に飾られ籐の聖樹かな★★★
肉球の滑り止めなり手袋に★★★

廣田洋一
改札前手袋の右落ちてをり★★★★
スマホ用指先開く手袋す★★★
手袋外してかざすスイカかな★★★

桑本栄太郎
注連飾り並ぶイオンや入口に★★★
青々と笊に干したり葱洗ふ★★★★
葱は九条葱などの葉を主に食べる葉葱であろう。冷たい水で洗われた葱は清冽というほど青々といきいきしている。笊にあげられ、水を切られるところだ。(高橋正子)

”ご無沙汰”と決まり文句や賀状書く★★★

12月18(4名)

小口泰與
電飾の湖や小犬は着ぶくれて★★★
午後の日の五色の彩や沼の冬★★★★
午後の日差しに色を変える沼の水。午後の日差しの変化を沼の水に見た良さ。五色沼というのもあるが、それでなくても、冬の沼は日差しに色を変えやすい。(高橋正子)

沼の面を飾る五彩や浮寝鳥★★★

多田有花
家々の壁薔薇色に冬落睴★★★★
冬落暉の明るさに、家々の壁が幸せそうに薔薇色に染まる。瀬戸内の夕暮が、明るく詠まれて幸福感に満たされる句だ。(高橋正子)

玄関に冬陽を入れて掃除する★★★
短日や急ぎ取り込む干し物を★★★

廣田洋一
熱燗はこれに限ると九谷焼★★★★
差し向かひちびりちびりと燗の酒★★★
とろ刺身冷えたる舌に燗の酒★★★

桑本栄太郎
中州よりはるか下流や冬の靄★★★
どどどどと冬の入日へ新幹線★★★★
ご無沙汰といつもの措辞や賀状書く★★★

12月17(4名)

小口泰與
浅間山雪定まりてさだかなり★★★
ラガー等の泥塗れなり利根河原★★★★
平成の終り近しや息白し★★★

多田有花
冬山路明るき色で走る人★★★★
冬は色が少なくなるとき。そんな冬の山路を明るい、原色のような色で走る人に出会うと、気持ちがぱっと華やぐ。(高橋正子)

落葉焚く煙の見えし山家かな★★★
冬の雨降りだす山を歩きけり★★★

廣田洋一
着ぶくれや懐薄き長財布★★★
着ぶくれて三人掛けに浅く掛け★★★★
着ぶくれて見えなくなりぬ二重顎★★★

桑本栄太郎
青々と畝の盛りや冬菜畑★★★★
水色の空の彼方やしぐれ雲★★★
主を望む待降節の祈りかな★★★

12月16日(4名)

小口泰與
落葉踏む定かな音や我と犬★★★★
鉢巻の男が囲む焚火かな★★★
漆黒の赤城山より冬の雨★★★

廣田洋一
あかぎれやワセリン塗りし幼き日★★★★
あかぎれのお湯も沁みこむ痛さかな★★★
水仕事終えては塗りし皸薬★★★

多田有花
山上の池に積もりし落葉かな★★★
トレーニングする少年ら冬の坂★★★

瀬戸内や冬青空を友として★★★★
瀬戸内に日々暮らし、日々瀬戸内海を見て暮らした私には晴れた日が多い瀬戸内は、その身になってみれば、冬青空を友としては、実感できること。それを見事に言った有花さんには、感服。(高橋正子)

桑本栄太郎
松籟や寒風荒ぶ建仁寺★★★
せせらぎにせり出し水に実南天★★★★
南天の実が赤く熟れている。伸び放題の南天が水にせり出して、中には水に浸っているものがある。水に浸かる南天の赤い実のきれいなこと。水と南天の取り合わせの妙。(高橋正子)

乙訓の丘よりはるか冬かすみ★★★

12月15日(4名)

廣田洋一
鋤焼きの締めはうどんの煮込みかな★★★
子と二人鋤焼き鍋のたぎりけり★★★★
鋤焼きや隣の嫁も加はりぬ★★★

多田有花
散りきった落葉の山の木々の影★★★
瀬戸内は青空山茶花の映えて★★★★
車通り過ぎれば落葉舞い踊る★★★

小口泰與
渓谷の秘湯の宿や河豚料理★★★
渓流の闇の波音紅葉鍋★★★

座してすぐ灯火に染まり年忘★★★★
朋友や仕事仲間が集まって、今年の労を忘れ、無事を祝う年忘。用意された座に座ると、すぐに灯火にそまるように馴染み、心落ち着く。華やいだ灯火に染まる身に、今年の無事が思われる。(高橋正子)

桑本栄太郎
入口に注連飾り売るイオンかな★★★
水色の青空ありぬしぐれ雲★★★
子の呉れし花の小さき冬薔薇★★★★

12月14日(4名)

小口泰與
同胞の家の年忌や寒牡丹★★★
凍星や静かなる夜の二人酒★★★
夕暮の赤城流石や空っ風★★★★

多田有花
下りゆく落葉舞い散る歩道橋★★★
レモン背に駅を目指すや冬の暮★★★
冬の日を歩き通してのち晩餐★★★★

廣田洋一
水仙花門の前にて俯けり★★★
一輪はそっぽを向きし水仙花★★★

水仙や思ひ出したる海の音★★★★
水仙を見ていて、ふと海の音を思い出した。海の近くの水仙では、越前海岸の水仙が有名だが、そのようなところの水仙であろう。海の音を思い出すと同時にかつて見た水仙郷が思いされたのだ。水仙と海の音の取り合わせが清らかだ。(高橋正子)

桑本栄太郎
玄関に家人待つ猫底冷す★★★
冴えざえと夕刊取りに宵の外★★★

茹でものを待つて窓辺や冬の月★★★★
台所で茹でている。茹で上がるまで、火の傍を離れるわけにはいかない。台所の窓辺からは冬の月が輝いているのが見える。厨仕事のあいだも、冬の月を楽しむ心がゆかしい。(高橋正子)

12月13日(4名)

小口泰與
鴛鴦や一年ぶりに便り来し★★★
火の山のここは溶岩道枯尾花★★★
渓谷のここに湯宿屋大氷柱★★★★

多田有花
<大阪府民の森ほしだ園地三句>
冬なかば星伝説の地を歩く★★★
冬晴に屹立クライミングウォール★★★
散紅葉見送る星のブランコで★★★★

廣田洋一
金色の星の瞬く聖樹かな★★★★
聖樹に飾られた星。金色に瞬く星によって、聖樹がいきいきとして、金の星は、本当にベツレヘムの星となるようだ。(高橋正子)

冷たき手ポケットに入れなお冷た★★★
底冷えのせりあがり来る厨かな★★★

桑本栄太郎
あおぞらの雲の間やしぐれ雲★★★
歩みゆく比叡颪や京の町★★★
芸舞妓祇園の路地に事はじめ★★★★

12月12日(4名)

★柚子の実のたわわに黄なり山の畑/桑本栄太郎
山の畑に柚子の実がたわわ。その黄色がさびしい山の畑を明るくしている。見慣れて、一見平凡なような風景なのだが、平凡で、当たり前のような風景の良さがしずかに伝わってくる心惹かれる句だ。(高橋正子)

小口泰與
あけぼのの障子明りに鳥の声★★★★
あけぼのの障子の明かりは、白の美しさを極めていると思える。ぴんと張った障子に冷気が迫り、あけぼのの光が透ける。耳には鳥の声。春でなくとも、冬のあけぼのも貴重なときである。(高橋正子)

炬燵より出ぬ老犬のおりにける★★★
老いてなお健脚なるや冬銀河★★★

多田有花
冬枯れの湿性植物園をゆく★★★
暮早し道に迷えばなお早し★★★
<大阪府交野市・磐船神社>
見上げたる巨石を拝す冬の午後★★★★

廣田洋一
濃き緑ふわりと浮きし寒椿★★★
空仰ぎ日を吸ふ花や寒椿★★★★
寒椿は花が平らで、空を仰いでいるようだ。その花の咲くままに日が当たり、日を吸い込んでいるようだ。日を吸った花が暖かい色に咲くのも道理だ。(高橋正子)

寒椿落ちたる庭を彩れり★★★

桑本栄太郎
柚子の実のたわわに黄なり山の畑★★★★
山の畑に柚子の実がたわわ。その黄色がさびしい山の畑を明るくしている。見慣れて、一見平凡なような風景なのだが、平凡で、当たり前のような風景の良さがしずかに伝わってくる心惹かれる句だ。(高橋正子)

鞍馬嶺の峰の明るく片しぐれ★★★
バス道の瘤の目立つや冬木立★★★

12月11日(4名)

小口泰與
祝い日のマグロ解体五十集かな★★★
大根干す無くてはならぬ赤城山★★★★
黒塗りの社の床や冬紅葉★★★

多田有花
<府民の森むろいけ園地三句>
室池や冬青空と雲浮かべ★★★
池の辺に残る紅葉を愛で歩く★★★

山茶花の散るほどにまた咲き続く★★★★
山茶花の花は賑やかと思うほどに咲く。散るとそれ以上に花を咲かせているようにも見える。花の盛りの山茶花が詠まれた。(高橋正子)

廣田洋一
鰤を煮て酒を酌みたる夕べかな★★★
日本海の雪を偲びつ鰤を煮る★★★

日本海の匂ふが如き鰤の背★★★★
鰤一本の背の光が鋭い。日本海の海の匂いがしているかのようだ。鰤の美味な時がきて、刺身、鰤大根、照り焼きなど食の楽しみも広がる。それを思えば活きのいい鰤が日本海から釣り上げられた様子も目に浮かぶというもの。(高橋正子)

桑本栄太郎
風強き川端通りや枯銀杏★★★
冬空の嶺に茜や放れ雲★★★★
しがみつく枯葉下枝にありにけり★★★
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自由な投句箱/12月1日~10日

2018-12-09 15:05:27 | Weblog

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之


◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
◆俳句日記/高橋正子◆
http://blog.goo.ne.jp/kakan02
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今日の秀句/12月1日~10日

2018-12-09 15:05:06 | Weblog

12月10日(2句)

★丁寧に掃き清められ冬の滝/多田有花
大阪の四条畷の奥の権現滝は、月に一度護摩が焚かれ、信仰の滝となっているようだ。丁寧に掃き清められて、寒さのなかに、すがすがしい緊張感を感じる。(高橋正子)

★菜園の二列ばかりや葱畑/桑本栄太郎
菜園に二列の葱が作る青々とした景色が生き生きとしている。九条葱の庭菜園なのであろう都思うが、ひと冬に家庭が食すには十分な葱。楽しみである。(高橋正子)

12月9日(1句)

★水仙のつぼみほのかに花壇かな/桑本栄太郎
様々な花に混じって花壇に水仙のつぼみが見える。寒さが強くなるにしたがって、水仙は花を開く準備を進めるが、この時期の水仙はまだ「つぼみほのか」なのだ。(高橋正子)

12月8日(1句)

★サイドカー下り来る毛皮婦人かな/小口泰與
六十代の夫婦の乗ったサイドカーか。毛皮を着た婦人が下りてきた。時代を映すような出達に懐かしさも湧く。(高橋正子)

12月7日(2句)

★心地よく初木枯の山をゆく/多田有花
初めて吹いた木枯は、心地よい寒さだったのだろう。「心地よく」が有花さんらしさが出ていて、よい。(高橋正子)

★ヒヤシンス薫り始めて喪の明くる/川名ますみ
一年の喪が明け、ヒヤシンスの花の香りとともに、新しく前へと過ごせることは、人生を美しく生きている証拠ではないだろう。(高橋正子)

12月6日(4句)

★冬山の常に浅間山(あさま)を仰ぎけり/小口泰與
冬山のとなった浅間山を常に仰ぐ。泰與さんはそういう風に暮らしている。冬が来れば、冬の浅間山に眼や心が行くのである。(高橋正子)

★枯葉踏み山に入るこそ楽しけれ/多田有花
山歩きのベテランの有花さんではあるが、枯葉を踏み、枯葉の音を立てて冬の山に入って行く楽しみは、低山の冬山の楽しみなのだろう。私には、山の木々のなかにいると、ほっこりとするような記憶がある。(高橋正子)

★街灯を包むが如き冬の雨/廣田洋一
冬の雨が静かに静かに降る。街灯を包むように。映画のような光景が思い浮かんだ。(高橋正子)

★生駒嶺の遠嶺となりぬ冬の靄/桑本栄太郎
冬の靄が立ちこめて、いつも見えている生駒嶺が遠い嶺となって望める。柔らかな冬の遠望。(高橋正子)

12月5日(2句)

★一軒に一本土産大根抜く/古田敬二
菜園の大根が見事に育った。一軒あたり、一本土産とする。一本の大根はもらった小家族には、うれしい量だろう。「一軒に一本」に温かさと面白さがある。(高橋正子)

★綿虫の虚空無尽や青空に/桑本栄太郎
「青空に」が効いている。最近と綿虫をぜんぜん見ていないが、子供の頃は、よく見た。井上靖の「しろばんば」の小説が思い浮かんだが、綿虫には、なにかしら、日本的なものがあるような気がする。(高橋正子)

12月4日(5句)

★寒林へ夕日差しけり鳥の声/小口泰與
寒林へ差す懐かしいような夕日。そこに鳥の声が聞こえる。鵯など鋭い鳴き声もあるのだろうが、それが却って寒林を奥行あるものにしている。(高橋正子)

★朝刊や霜踏む音の澄み渡る/廣田洋一
霜の朝。冷たく寒い朝ながら、霜を踏んで庭先の新聞受けまで歩く時の「音の澄み渡る」清々しさ。新聞のインクの匂いまでしてきそうなリアル感のあるいい生活句だ。(高橋正子)

 <赤星山登山>
★短日の陽を惜しみつつ稜線を/多田有花
稜線を歩く楽しみは、季節それぞれにあるのだろうが、短日の山の陽も惜しまれるもののひとつ。(高橋正子)

★笹鳴といえど小枝の重く揺れ/桑本栄太郎
チャッチャッという鶯の笹鳴き。もう聞かれるようになった。さぞや小さい鳥で、小枝の揺れも軽いだろうと思いいきや、「重く揺れ」なのだ。鶯の重さが感じ取れるような句だ。(高橋正子)

★石蕗の花海から遠くに咲きにけり/古田敬二
石蕗の花と海の取り合わせに明るいイメージが湧く。石蕗の花に海があれば、どれほどか印象的で明るい花になることだろうか、との思い。(高橋正子)

12月3日(3句)

<赤星山登山>
★登りゆく背中へ冬の光さす/多田有花
冬山の登山。背中に冬の光を浴びながら、明るい登山が伺える。赤星山は1400メートルを越える石鎚山脈につならなる四国の山。(高橋正子)

★天井をはたくは長身煤払い/廣田洋一
煤払いに長身の人はもってこい。その背丈を使って天井をはたくにも余裕がある。なんでもないようだが、ユーモアがある。(高橋正子)

★雪蛍何かし終えて一つ飛ぶ/古田敬二
初冬のどんより曇った日、いろいろ仕事をしてふっと見ると雪蛍がふわっと一つ飛んでいる。アブラムシ科の綿アブラムシとうものだが、初冬らしさを思わせる虫だ。(高橋正子)、

12月2日(2句)

 <赤星山登山>
★最奥の滝も明るし冬の晴/多田有花
明るい瀬戸内の最奥の滝は、冬でも明るい。赤星山は四国の山。話は別だが、愛媛大学の同学年に赤星君と言う人が居ましたが、ここの出身だったと思う。そのころは、なんで赤星なの?と思ってました。(高橋正子)

★冬耕の稲株白く晒しけり/桑本栄太郎
冬田を打ち返す。稲株を掘り起こすと、風に日にさらされて、稲株は白くなって転がる。あんなにしっかり稲を育てた株が枯れて、白くなる。淋しさも。(高橋正子)

12月1日(4句)

★靄流る黙の浅間や枇杷の花/小口泰與
枇杷の花が香り高く匂う。浅間山は、靄に包まれ沈黙を守っている。枇杷の花と沈黙の浅間山の遠近の風景がしずかで柔らかい。(高橋あmさ子)

★吟行の土産はズボンの草虱/古田敬二
吟行に出掛けて家に帰り着けば、知らぬ間にズボンのすそには草虱がたくさんついている。野に出て吟行したよい時間が証明される。(高橋正子)

★湧き上がる歓喜の歌や十二月/廣田洋一
十二月は街のあちこちでべードーベンの第九交響曲の歓喜の歌が歌われ、また流れ、一年が締めくくられる。日本にもすっかり定着した歓喜の歌である。(高橋正子)

<赤星山登山>
★橋いくつも渡り近づく冬の滝/多田有花
冬滝は水量が少なくなったり、凍ることもある。奥へ奥へと橋を渡ってたどり着いた滝はどうどうと水を落としている感じだ。滝に出会うということは、いい個性に出会うようでもある。(高橋正子)
コメント (5)
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12月1日~10日

2018-12-03 12:17:38 | Weblog

12月10日(4名)

廣田洋一
積上げし本見直して年の暮★★★
遂に来たきっぱりと来た冬の朝★★★★
鰤照焼き油控えて焼きにけり★★★

小口泰與
我と犬赤シャツ着たり漱石忌★★★
産土は今宵も風や燗熱く★★★★
木守や榛名十峰朝日差す★★★

多田有花
<生駒山系権現川ハイキングコース三句>
冬晴にあべのハルカスを望む★★★
丁寧に掃き清められ冬の滝★★★★
大坂の四条畷の奥の権現滝は、月に一度護摩が焚かれ、信仰の滝となっているようだ。丁寧に掃き清められて、寒さのなかに、すがすがしい緊張感を感じる。(高橋正子)

仲冬や嵐の名残そこここに★★★

桑本栄太郎
菜園の二列ばかりや葱畑★★★★
菜園に二列の葱が作る青々とした景色が生き生きとしている。九条葱の庭菜園なのであろう都思うが、ひと冬に家庭が食すには十分な葱。楽しみである。(高橋正子)

中州なる石のさざれや水涸るる★★★
寄鍋の酔えばいつしか闇汁に★★★

12月9日(4名)

廣田洋一
茜雲細まり行けり冬の暮★★★
くつきりと稜線伸びる冬の暮★★★★
落葉までころがり走る冬の暮★★★

小口泰與
熱燗や今宵の風の一段と★★★★
コンビニを出づや焼芋ぱっくりと★★★
潮騒の聞こゆ如きや鮟鱇鍋★★★

多田有花
<四条畷神社三句>
冬紅葉小楠公の石段に★★★
桜井の別れの像に散紅葉★★★
楠巨木冬青空へ凛と立つ★★★★

桑本栄太郎
黒猫の眼木蔭や漱石忌★★★
水仙のつぼみほのかに花壇かな★★★★
様々な花に混じって花壇に水仙のつぼみが見える。寒さが強くなるにしたがって、水仙は花を開く準備を進めるが、この時期の水仙はまだ「つぼみほのか」なのだ。(高橋正子)

新駅の高架通過や冬田晴れ★★★

12月8日(3名)

小口泰與
裸木の枝さしかわす空っ風★★★
曙に置鉤あぐるちゃんちゃんこ★★★
サイドカー下り来る毛皮婦人かな★★★★
六十代の夫婦の乗ったサイドカーか。毛皮を着た婦人が下りてきた。時代を映すような出達に懐かしさも湧く。(高橋正子)

廣田洋一
年締める一句を記し日記果つ★★★★
逝きし人出会ひたる人日記果つ★★★
時々の感情見せて日記果つ★★★

桑本栄太郎
太平洋の波浪高きや開戦日★★★
特攻の遺影若きや開戦日★★★
吟行の夢の中なり枯野行く★★★★

12月7日(5名)

廣田洋一
パソコンに数字打ち込む膝毛布★★★
太陽に電気毛布も干しにけり★★★★
山頂に銀色毛布星を撮る(原句)
山頂に銀色毛布着(き)星を撮る★★★★(正子添削)

質問です。「銀色毛布」は、NASAが開発したという災害時などにも活躍するアルミ毛布のことでしょうか。
山頂の寒さを毛布でしのぎながら、夜空の星を撮る。ロマンティックなことのように思える。(高橋正子)

小口泰與
赤城嶺の支えし空や空っ風★★★
夕暮の落葉ささめく峠かな★★★
今宵また盃差し交わす新走り★★★★

多田有花
散る紅葉空の青さを背景に★★★
心地よく初木枯の山をゆく★★★★
初めて吹いた木枯は、心地よい寒さだったのだろう。「心地よく」が有花さんらしさが出ていて、よい。(高橋正子)
木枯に前山装いを終える★★★

桑本栄太郎
嶺の端のほのと茜や冬落暉★★★
大雪の夜となり鉢植え取り込むる★★★★
鉢ものの部屋に同居や寒波来る★★★

川名ますみ
七七忌一周忌また冬日和★★★★
テーブルに紅茶と蕾のヒヤシンス★★★
ヒヤシンス薫り始めて喪の明くる★★★★
一年の喪が明け、ヒヤシンスの花の香りとともに、新しく前へと過ごせることは、人生を美しく生きている証拠ではないだろう。(高橋正子)

12月6日(5名)

小口泰與
枯蘆や赤城の空のささ濁り★★★
冬山の常に浅間山(あさま)を仰ぎけり★★★★
冬山のとなった浅間山を常に仰ぐ。泰與さんはそういう風に暮らしている。冬が来れば、冬の浅間山に眼や心が行くのである。(高橋正子)

何かにつけ浅間山と共にある。

先駆けて天地揺るがす虎落笛★★★

多田有花
日ごと空透けてゆくかな散紅葉★★★
枯葉踏み山に入るこそ楽しけれ★★★★
山歩きのベテランの有花さんではあるが、枯葉を踏み、枯葉の音を立てて冬の山に入って行く楽しみは、低山の冬山の楽しみなのだろう。私には、山の木々のなかにいると、ほっこりとするような記憶がある。(高橋正子)

木枯のなきまま続くぬくき日々★★★

古田敬二
冬の雨きそうで来ぬまま日暮れけり★★★
重力のなきようふわふわ雪蛍★★★
逞しき前歯で林檎美味そうに★★★★

廣田洋一
扉明け気が付きたるや冬の雨★★★
また一つ喪中挨拶冬の雨★★★
街灯を包むが如き冬の雨★★★★
冬の雨が静かに静かに降る。街灯を包むように。映画のような光景が思い浮かんだ。(高橋正子)

桑本栄太郎
日を透きて緋色疎らや冬紅葉★★★
ことはりも無く冬木なり庭の木々★★★
生駒嶺の遠嶺となりぬ冬の靄★★★★
冬の靄が立ちこめて、いつも見えている生駒嶺が遠い嶺となって望める。柔らかな冬の遠望。(高橋正子)

12月5日(5名)

古田敬二
一軒に一本土産大根抜く★★★★
菜園の大根が見事に育った。一軒あたり、一本土産とする。一本の大根はもらった小家族には、うれしい量だろう。「一軒に一本」に温かさと面白さがある。(高橋正子)

山眠る歳時記の文字見にくくて★★★
暖冬や野菜大きくなりすぎて★★★

廣田洋一
古本をまとめて処分年の暮★★★
いつまでも暖かき街年の暮★★★★
赤き帯細まり行けり冬夕焼★★★

小口泰與
さもなくば赤城颪を浴びに来よ★★★
さういえば岸辺に雑魚や冬の鷺★★★★
さきがけて赤城颪の来たりけり★★★

桑本栄太郎
綿虫の虚空無尽や青空に★★★★
「青空に」が効いている。最近と綿虫をぜんぜん見ていないが、子供の頃は、よく見た。井上靖の「しろばんば」の小説が思い浮かんだが、綿虫には、なにかしら、日本的なものがあるような気がする。(高橋正子)

風を生み音の厳しく冬の雷★★★
吹き溜る綾の錦や散る紅葉★★★

多田有花
冬の夜に塩バター入りどら焼を★★★
冬紅葉ドローンを飛ばす男あり★★★
はつ冬や黄葉多き増位山★★★★

12月4日(5名)

小口泰與
煌煌と白き衣や冬浅間★★★
寒林へ夕日差しけり鳥の声★★★★
寒林へ差す懐かしいような夕日。そこに鳥の声が聞こえる。鵯など鋭い鳴き声もあるのだろうが、それが却って寒林を奥行あるものにしている。(高橋正子)

木守や浅間の雲の金色(こんじき)に★★★

廣田洋一
朝刊や霜踏む音の澄み渡る★★★★
霜の朝。冷たく寒い朝ながら、霜を踏んで庭先の新聞受けまで歩く時の「音の澄み渡る」清々しさ。新聞のインクの匂いまでしてきそうなリアル感のあるいい生活句だ。(高橋正子)

落葉松の葉に金色の霜柱★★★
金星や休める畑に霜の花★★★★

多田有花
<赤星山登山三句>
短日の陽を惜しみつつ稜線を★★★★
稜線を歩く楽しみは、季節それぞれにあるのだろうが、短日の山の陽も惜しまれるもののひとつ。(高橋正子)

赤テープを呼称確認日短か★★★
ようように着く暮早き下山口★★★

桑本栄太郎
笹鳴といえど小枝の重く揺れ★★★★
チャッチャッという鶯の笹鳴き。もう聞かれるようになった。さぞや小さい鳥で、小枝の揺れも軽いだろうと思いいきや、「重く揺れ」なのだ。鶯の重さが感じ取れるような句だ。(高橋正子)

踏みしだく落葉の跡や坂道に★★★
夫婦とも古希となる日や冬の雷★★★

古田敬二
石蕗の花海から遠くに咲きにけり★★★★
石蕗の花と海の取り合わせに明るいイメージが湧く。石蕗の花に海があれば、どれほどか印象的で明るい花になることだろうか、との思い。(高橋正子)

冬くれば目高の餌の食い悪し★★★
神無月鈴鹿山脈黒々と★★★★

12月3日(5名)

多田有花
<赤星山登山三句>
登りゆく背中へ冬の光さす★★★★
冬山の登山。背中に冬の光を浴びながら、明るい登山が伺える。赤星山は1400メートルを越える石鎚山脈につならなる四国の山。(高橋正子)

冬うらら空広々と頂に★★★
一望す燧灘には冬霞★★★

小口泰與
街灯の光りふるわす冬の雨★★★
山風に呑まれし沼や浮寝鳥★★★★
冬の日の湖の岸辺へ暮れんとす★★★

廣田洋一
天井をはたくは長身煤払い★★★★
煤払いに長身の人はもってこい。その背丈を使って天井をはたくにも余裕がある。なんでもないようだが、ユーモアがある。(高橋正子)

網戸には水を放てり煤払い★★★
煤払い気の病も払ひたし★★★

桑本栄太郎
つぴつぴと山茶花揺るる小枝かな★★★
ほつほつと頬に時折時雨降る★★★
笹鳴と云えど小枝の揺れにけり★★★★

古田敬二
雪虫のふわり出てゆく久女の門★★★
雪蛍何かし終えて一つ飛ぶ★★★★
初冬のどんより曇った日、いろいろ仕事をしてふっと見ると雪蛍がふわっと一つ飛んでいる。アブラムシ科の綿アブラムシとうものだが、初冬らしさを思わせる虫だ。(高橋正子)
浜木綿を一抱えして霜除ける★★★★

12月2日(4名)

多田有花
<赤星山登山三句>
滝音を間近に登る冬の山★★★★
苔青き山路をゆくも初冬かな★★★★
最奥の滝も明るし冬の晴★★★★
明るい瀬戸内の最奥の滝は、冬でも明るい。赤星山は四国の山。話は別だが、愛媛大学の同学年に赤星君と言う人が居ましたが、ここの出身だったと思う。そのころは、なんで赤星なの?と思ってました。(高橋正子)

小口泰與
空風や蒟蒻芋のからっから★★★
日と風を廻る郷や掛大根★★★★
今朝もまた見えぬ浅間や竜の玉★★★

廣田洋一
能登産の鰤せり落とす鮨屋かな★★★
脂身に大葉を添へて鰤照焼き★★★
週末やことこと煮たる鰤大根★★★★

桑本栄太郎
土盛りのブルーシートや草紅葉★★★
冬耕の稲株白く晒しけり★★★★
冬田を打ち返す。稲株を掘り起こすと、風に日にさらされて、稲株は白くなって転がる。あんなにしっかり稲を育てた株が枯れて、白くなる。淋しさも。(高橋正子)

主の天降(あもる)その日祈るや待降節★★★

12月1日(5名)

小口泰與
靄流る黙の浅間や枇杷の花★★★★
枇杷の花が香り高く匂う。浅間山は、靄に包まれ沈黙を守っている。枇杷の花と沈黙の浅間山の遠近の風景がしずかで柔らかい。(高橋あmさ子)

急に増ゆ十二月の車両かな★★★★
犬鷲や匠の里の藁人形★★★

古田敬二
吟行の土産はズボンの草虱★★★★
吟行に出掛けて家に帰り着けば、知らぬ間にズボンのすそには草虱がたくさんついている。野に出て吟行したよい時間が証明される。(高橋正子)

姉の骨ことりとツボへ行く晩秋★★★
引き寄せて香りかぎたや枇杷の花★★★

廣田洋一
湧き上がる歓喜の歌や十二月★★★★
十二月は街のあちこちでべードーベンの第九交響曲の歓喜の歌が歌われ、また流れ、一年が締めくくられる。日本にもすっかり定着した歓喜の歌である。(高橋正子)

中天の光澄みたる冬三日月(原句)
中天の光澄みたり冬三日月★★★★(正子添削)
送別会終わりて仰ぐ冬の月★★★

桑本栄太郎
階段の眼下に緋色や冬紅葉★★★
落葉松の散りし舗道の目地赤く★★★★
両側に踏みしだかるる朽葉道★★★

多田有花
<赤星山登山三句>
登山口に一番乗りの冬はじめ★★★
橋いくつも渡り近づく冬の滝★★★★
冬滝は水量が少なくなったり、凍ることもある。奥へ奥へと橋を渡ってたどり着いた滝はどうどうと水を落としている感じだ。滝に出会うということは、いい個性に出会うようでもある。(高橋正子)

登り来て初冬の滝を見上げおり★★★
コメント (5)
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