ROCK & CINEMA DAYS

映画とROCKと猫が大好きです

さよなら・にゃんこ

2011-11-19 10:08:00 | 
きのうの朝
店を開けてすぐに
1本の電話が入りました。


「お酒屋さんですか?」
はい、酒屋ですが…。


電話の主は
隣の県にある
某施設の職員さんでした。


「実はうちの職員がけさ9時前頃
車でそちらの前を通りがかった時に
猫をひっかけたらしいんです」


一瞬、心臓が凍りついたように感じました。


「お宅様の猫でしょうか。大変申し訳ないことをいたしました」
…いえ、うちは猫を飼っておりません…。
すぐ近くの○○というお店が猫を飼ってらっしゃるようなので
そちらの猫だと思います…。
「そうですか。では○○さんの方へ電話いたします。ありがとうございました」


電話を切った私は
「○○シスターズが死んだ…」
といたたまれない気持ちになりました。


私の店のすぐ近くに
「○○」というお店があります。
そのお店の裏手に
野良の子猫が2匹住みついていました。
最初は5匹いたのですが
ここ最近はいつも2匹だけ姿を見せていました。


2匹は見た目がそっくりでした。
キジ白のきょうだい。
「キジ白」というのは、白い部分が多いトラ猫のことです。





こういう毛色の猫を「キジ白」と言います。
ちなみにこの写真の猫は
大昔、私の実家で飼っていた猫です。


2匹はとても目が大きい美形でした。
オスかメスかもわかりませんが
私は勝手に女の子だと決めつけて
お店の名前をもじり
「○○シスターズ」と呼んでいました。


1匹はとても警戒心が強くて
人が近づくと逃げていましたが
もう1匹はとても人懐こく
「チッチッチッ」と呼べば
足もとに走り寄ってきて
体をすりつけ、のどをゴロゴロ鳴らす
本当にかわいい子猫でした。


夜、店を閉めてから
時々、子猫たちを見に行きました。
○○さんのお店の横に座っていることもあれば
別のお店の駐車場の隅で重なって暖をとっていることも。
姿を見つけると、しばらく遊んでもらう私でした。


だんだん寒くなってきて
特に夜は冷え込むようになりました。
毛布や段ボールでも与えてやりたいけれど
勝手によその敷地に置くわけにいかず
うちでは飼うことはできないし…。


さて
ここ数日は
なかなか猫たちに会いに行くこともできませんでした。


シスターズ、元気かなあ。
車にひかれなきゃいいけどなあ。


冒頭の電話がかかってくる前日
車で近くを走っていたら
シスターズがいつもの場所に
たたずんでいました。


かわいい子猫が2匹
ちょこんと置物のように並んでいる姿は
かわいらしくもあり、悲しくもありました。


そして翌日。
まだ店を開ける前
なぜかセンサーチャイムが鳴りました。


お客さんが店に入ってくると鳴るチャイムです。
まだ鍵は閉まっているから誰も入られないのに
なんで鳴ったんだろう?
光線がどうかなったのかな。


そして電話。
「9時前にそちらの前を…」。
まさにその時間でした。
チャイムが鳴ったのは。


不思議な偶然でした。


私は電話を切ってから
○○さんのところへ行って猫のことを聞きました。



お店の前で車にひかれていたそうです。


私、お寺に連れて行きますから
どうか遺体をひきとらせてください。
そう頼むと、○○さんは
悪いね、とおっしゃいながら
猫が入った段ボール箱をくださいました。


家に帰って
段ボールをあけると
変わり果てた姿のシスター。
顔の判別がつきませんでした。


なんでやの。
なんでひかれちゃったの。
にゃんこ。
なんで。
なんで。


手を合わせました。


動物のお寺に連絡してから連れて行き
供養をお願いしました。


帰宅してしばらくすると
電話をくださった職員さんたちが
お詫びに来てくださいました。


いえ、私の飼い猫じゃないですからお詫びなんて…と言ったのですが
「○○さんのところへ行ったら、あなたが可愛がってたからあなたのところへ行ってください、と言われまして」
とおっしゃいました。


遠いところから丁寧にお詫びに来られた職員さん。
猫をひいても知らん顔して行ってしまう人がほとんどなのに
ましてや、野良猫だと聞いてらっしゃったのに
わざわざお越しくださった方。


すばらしい方です。


私はお詫びされるような立場ではないので
恐縮しながらも
「来てくださってありがとうございます」
心の中でつぶやきました。


シスターの生前の写真が1枚だけあります。
でも、カメラを向けると警戒して逃げるかもしれないので
離れたところから望遠
フラッシュも焚けなかったので全然顔がわかりませんが
生きていた証です。





さよなら にゃんこ。

扉の向こうにいたのは

2011-04-14 11:46:00 | 
生後わずか3ヶ月の命だった猫のPちゃんが亡くなって、はや3ヶ月がたとうとしています。
ここ数日、暖かくなったこともあり
ずっと片づけられずに倉庫に置いたままにしてあったPちゃんの物を
思い切って片づけることにしました。


Pちゃんが厳寒の倉庫で震えながらもぐっていた、保温ベッド
(ベッドというより「おくるみ」に近い)を
ハサミで切って分解し、ゴミ袋へ。
でも、捨てる前に、ベッドにうっすら残っていたPちゃんの毛を数本拾い集めておきました。
ちょっと涙が出てきました…。


Pちゃんの使っていたシステムトイレ。
中の防臭サンド(砂)と吸水シートは、Pちゃんの死後すぐに捨てたのですが
(捨てるとき、Pちゃんのおしっこが染みていた吸水シートを見て号泣でした…)
トイレ本体は片づけられずに置いてありました。
「よーし、天気はいいし、あったかいし、洗って片づけるぞぉっ!」
おひさまの下でゴシゴシ洗い。
乾かして、買ったときの箱に入れました。
まだまだきれいだから、捨てるのはもったいない。


また使うことがあるかもしれない。おそらくないだろうけど。


「すっきりしたね、Pちゃん」
いつもPちゃんが座っていた場所に話しかけました。
その場所には、今も毎日花と水を供えてあります。


システムトイレは意外と大きいので
なくなってしまうと、とても広く感じます。
そのトイレが置いてあったのは
外へ通じる扉の前。


扉と言っても
もう何十年も開けていません。
なぜかと言いますと
その扉の向こうは、すぐお隣の家の外壁。
しかもお隣との間はわずか30センチほど。
人が通れる幅ではありません。
せいぜい野良猫がたまに通るぐらいです。


だから扉を開ける必要がないので
戸口を針金でしばり、開かないようにしていました。


ところが先日、晴れているのに風が強く
「春一番?」と思いながら倉庫に入ると
例の何十年も開けていない扉が
風のせいで「これでもか!」と言うぐらい開いていました。


どんだけ強い風やねん!と思いつつ
初めてその扉の外に出てみました。
そう、私はその扉の外に出たことがなかったのです。
ここで生まれ育ったわけではないですからね。


外はお隣の壁が目前にあり
地面に雑草や落ち葉が散らかっています。
「ふうん、こんなふうになってるのか」
扉を閉めようかと思いながら少し先の地面に目をやると
………?


小枝や落ち葉の合間から何か見えました。
「え?え!え!え!え!」


骨。


ほね~!
猫の白骨~!


はい。
にゃんこの白骨でした。


思わず座り込んで手を合わせました。
なんてこったい…。
かわいそうに…。


子猫の白骨。
Pちゃんの兄弟かもしれない。


Pちゃんを供養して頂いているお寺に電話しました。
猫の骨を見つけたけど、ゴミとして捨てるのはかわいそうで…と話すと
こちらへ持ってきてください、と快くおっしゃっていただけました。
よかった…。



小さな段ボール箱に
花柄の包装紙を敷きました。
本物のお花じゃないけどごめんね、と呟きながら
ビニール手袋をはめて
手を合わせてから
骨を拾いました。


骨はほぼ全部つながっていました。
でも地面の土に張り付いていて、なかなかはずれません。
「折れないでよ~!がんばれにゃんこ!」
びくびくしながらも力を入れてひっぱり
なんとか折らずに箱に入れることができました。


「もう残ってないかな?忘れ物ないかな?」
そう言いながら、土の上の落ち葉をどけて地面をさわりました。
「よくわかんないや。でも、もういい?にゃんこ。お寺に行こうか」
段ボールを持って車に積み、動物供養のお寺へ。


お寺は他にもお葬式の動物がいたらしく
職員さんは忙しそうに動きながらも
私の持っていった段ボールを、うやうやしく受け取ってくださり
「ご苦労様でございました。さ、亡くなった子の位牌にも会ってやってくださいね」
と声をかけてくださいました。
そしてお経を唱えながら段ボールを運んで行かれました。
ほっとしながら、お寺の中にあるPちゃんの位牌のところへ行き
「Pちゃん、Pちゃんの兄弟だよ。よかったね」と手を合わせてきました。


骨の話なんて…と
気分を悪くされた方がいらっしゃったらごめんなさい。


でも
同じ兄弟なのに
1匹は飼い猫としてかわいがられ
もう1匹は、誰にも知られないまま骨になって…というのが
なんともかわいそうで。


にゃんこ、これでよかったかな?
成仏できるかな?


開かないようにしっかり縛り直された扉に向かい
何度もそう問いかけてます。

不思議な話・Pちゃんは死んだけど

2011-02-04 12:01:00 | 
「親に置いていかれた子猫・Pちゃんのおはなし」
「Pちゃんの最期~ごめんねPちゃん」
と、2つの記事を書かせていただきました。


生まれて3ヶ月
うちの猫になってたった2ヶ月
あまりにも短い命でしたが
家族みんなに、たくさんの楽しい思い出を遺してくれました。


死んでから毎日
倉庫内のPちゃんのいた場所に
花とエサとお水を供えて手を合わせています。


動物供養のお寺で初七日供養をしてもらい
その次の日のことです。
Pちゃんが死んでちょうど1週間後の日。


倉庫から成猫が走って出てくるのが見えました。
見覚えのある猫。


あっ!
Pちゃんのお母さん!


このへんではあまり見かけない
シャム猫のような毛色のポテッとした成猫。
間違いありません。
Pちゃんが倉庫に置いてきぼりにされた日に
子猫を1匹、口にくわえて逃げていった猫です。


Pちゃんのお供え場所に行ってみると
エサがきれいに食べられていました。
「なんて親なの。Pちゃんを捨てていったくせに、死んだらお供えを食べていって」
私は憤慨しながらエサを供えてあったお皿を片づけました。
「ごめんねPちゃん。他の猫が寄ってくると困るから、ごはんはもう出さないね」。


その夜のことです。
倉庫から「みゃあ~、みゃあ~」と子猫の鳴き声がしました。
何?なんで猫が?
びっくりして倉庫に行くと
Pちゃんのお母さんと、その子供が座っていました。


!!!!!


私も驚きましたが
猫たちも驚きました。
母猫は私の姿を見ると倉庫から走り出て道路を渡り
子猫がくるのを待っています。
子猫はと言うと、みゃあみゃあ鳴きながら座り込んでいます。


私も座り込んで、舌をチッチッチッと鳴らしました。
子猫は、私が危害を加えない人間だと判断したのか
相変わらずみゃあみゃあ鳴きながら、倉庫の中をあちこち探検し始めました。
そう、生前Pちゃんがよく入っていた空の段ボールや、荷物の隙間に。
Pちゃんと同じことをしています。


やがて母猫が戻ってきました。
子猫の横にぴったり座り
頭をなめたり、首すじをくわえようとしたり。
愛おしくてたまらないといった感じです。


「どうしてその子だけ連れて行ったの。
 どうしてPちゃん捨てて行ったの。
 Pちゃんは待ってたのに。
 寒空の下、お腹すかせて泣いてたんだよ。
 ママ、寒いよ、お腹すいたよ、こわいよ、ママって」


猫にこんな感情を抱くのも変な話かもしれませんが
子猫を愛しむ母猫を目の当たりにすると
そう思わざるを得ませんでした。


「でも」
 私は不思議でした。
「今まで現れたことなかったのに
 なんでちょうど1週間後の日にやってきたんだろう。
 それに、ちょうど今ぐらいの時間だ、Pちゃんが車にはねられたのは」。


母猫と、子猫と、私。
しばらく倉庫内に座り込んでいました。
やがて母猫が外へ出て道路を渡ると
うしろから子猫もついて行きました。
2匹の姿は夜の闇の中へ消えていき
それきり私の前に出てくることはありませんでした。


Pちゃんが呼んだのかな。


なーんてね。


ほんとの話です。




Pちゃんの最期~ごめんねPちゃん

2011-01-26 21:17:00 | 
前回のブログ
「親に置いていかれた子猫・Pちゃんのおはなし」の
Pちゃんが、ゆうべ死にました。


Pちゃんがうちで保護されたのは
昨年の11月26日。
死んだのは1月25日。
まるまる2ヶ月間
わが家を癒してくれました。


前の話を読んでいただければおわかりになることと思いますが
うちは商売をやっていて
店舗付き住宅です。
食品を扱っているので
動物は飼わないようにしてきました。


うちの倉庫で生まれて
親に置いてきぼりにされた子猫。
家では飼えないので
倉庫の隅に「にゃんこエリア」をつくり
「Pちゃん」という名前をつけて
育てました。


人間に接したことがなく
怖がってなかなか懐いてくれなかったPちゃん。
保護して3週間後の私の誕生日に
とつぜん「ミャアー」と鳴きながら膝に乗ってきて
のどをゴロゴロ鳴らしてくれました。


それからは
うそのように人見知りしなくなったPちゃん。
商品の配送をしてくれるドライバーさんが
倉庫に納品している間
ちょこんと横に座って見学していました。
「かわいいですね」
ドライバーさんたちに言われ喜んでいた
親バカならぬ飼い主バカの私。


倉庫は夜間、冷蔵庫以下の気温になるほど冷えます。
でも万が一のことを考え、電気を使う暖房器具は使えません。
あまりに寒くて可哀想なので
冷え込んだ大みそか、湯たんぽを買ってきてやりました。
この湯たんぽはPちゃんのお気に入りとなり
熱いお湯を入れ替えてやるたびに
みゃあ~とかわいい声で寄ってきました。


保護したときは、生後1ヶ月。
母乳しか飲んだことがなく
ネズミより少し大きいぐらいの、大人の片手に乗る大きさでした。
みるみる大きくなり、倍以上の大きさに。
「おっきくなったね~!」
保護当時を知る人たちは一様に驚いていました。


キャットフードを1日に4回食べていました。
エサの時間になると、私の姿を見るだけで「みゃあ!みゃあ!」と鳴いてまとわりついてきました。
お皿に入れようとすると、まだ入っていないのに
お皿の周りをぐるぐるまわります。
「こらこら、そんなことしたらお皿に入れにくいよPちゃん」
毎回同じセリフの繰り返し。


いつも、しきりに耳を掻くPちゃん。
「猫疥癬かなあ。早めにお医者さんに見てもらおう」
こういう時のために、買っておいた猫用のキャリーに入れ
初めての動物病院。


「ノミもダニもいませんよ。きれいな耳です。
発育状況もいいですね。歯が全部まだ乳歯だから、いずれ生えかわります。
掻きすぎて湿疹ができているから、薬を出しましょうか」
優しい先生の言葉にひと安心。
ワクチンや避妊手術のことも教えてもらいました。
「これからもよろしくお願いします」
そう言って、帰りの車の中で
「Pちゃん、よかったね!疥癬じゃないって!健康だって!」
おびえて鳴くPちゃんに、一所懸命に声をかけました。

病院でもらった薬の袋です。
ちゃんと「ピーさま」と書かれていて
思わず微笑みました。


そして次の日。
Pちゃんの住んでいる倉庫は
店の向かいにあります。
5メートルぐらいの道路をはさんでいます。
昼はとても車の通行が多いのですが
夜は格段に少なくなります。



昼は車が怖いので
倉庫から道路に飛び出さないPちゃんですが
夜は車が少ないことと
私たち家族が自宅に帰ってしまってひとりぼっちになるので
ここ最近、道路に飛び出すようになりました。


危ない!
一計を案じた私は
夜、Pちゃんが倉庫でエサを食べているすきに
倉庫の入り口に柵を置くようにしました。


柵を突破しようとするPちゃんにこちら側から
「じゃあね、おやすみPちゃん。また明日ね」
と声をかけ、シャッターを閉めます。
Pちゃんの寂しそうな顔に毎回悲しくなりながらも
「家の中で飼えないからしかたないの。ごめんねPちゃん」。


そんな日が何度か続くと
Pちゃんは柵を置かなくても
道路に飛び出さなくなりました。


私は油断していました。
Pちゃんも油断していました。


病院に行った次の日は
店の集金日で配達もあり、なかなかPちゃんと遊んでやれませんでした。


店からふと倉庫を見ると
Pちゃんが倉庫の前に座ってこちらを見ていました。
いつもはそんなところにはいないのに。
首をかしげ、寂しそうな顔でこちらを見ていました。


配達から帰ってくるのが少し遅くなりました。
Pちゃんのエサの時間も遅くなりました。
おなかがすいたPちゃん、ゴミ箱の中のキャットフードの袋を漁っています。
そんなことしたことがないのに。


「これこれPちゃん、ゴミ箱の中に入らないで。今ごはんあげるから」。
フードをお皿に入れようとすると
いつものように「みゃあ~」と鳴きながらクルクル回ります。
「ごめんねー、遅くなって」。


そして、夜。
いつものように、倉庫のシャッターを下ろす前に
Pちゃんにフードをあげに行きました。
でもその前のエサの時間がいつもより遅かったので
まだあまりお腹がすいていないようでした。


じゃあ先にPちゃんの湯たんぽのお湯をとりかえよう。
私が湯たんぽをとると、Pちゃんが「持ってかないで!」と言うように、湯たんぽにしがみつきました。


「Pちゃん、熱いお湯に替えないと。ほら、もう冷たいでしょ?」
そう言いながら、湯たんぽを取り上げました。
Pちゃんはというと、トイレに走って行っておしっこをし始めました。


よし、おしっこしてる間に湯たんぽのお湯を替えてこよう。
私は店に戻って湯たんぽの水を捨て、熱いお湯を入れました。


湯たんぽを持って外に出ると
店の前にPちゃんが倒れていました。


Pちゃん?!


一瞬、寝ころんでいるのかと思ったのですが
あわてて近寄ると
Pちゃんの口から血が出ていました。


Pちゃん!Pちゃん!


抱き起こすと
目は開いているけれど、眼球が動きません。
口も開いたままで、血が流れています。


Pちゃん!なんで?なんで?Pちゃん!


かすかに心臓が動きました。
病院!病院!Pちゃん死んじゃう!


Pちゃんを抱いて店の中に飛び込むと、夫が出てきました。
「Pちゃんが!Pちゃんが車にはねられた!動物病院に電話してえ!」
私は泣きながら叫び
PちゃんPちゃんPちゃんPちゃんPちゃーーーーーん!
と、Pちゃんを床に置いて呼び続けました。


私の声に驚いて
2階で受験勉強していた次男が走ってきました。
次男は猫が大好きで、小さい頃から飼いたくて飼いたくて
やっと飼えたPちゃんを、妹のように可愛がっていたのです。


きのう行った病院に夫が電話しましたが
遅い時間なので誰も出ません。
「あかん、時間外やから繋がらん」
夫が言いましたが
「どこの病院でもいいから電話してえ!Pちゃん死んじゃう!」
私は叫びました。


救急病院を紹介してくれる市のサービスに夫が電話しました。
「おい、この辺の病院はどこも急患でいっぱいだから、名古屋の病院まで行かないとだめらしい。
けど、もう無理やろ…。瞳孔が開いちゃってる…」
夫がPちゃんを見て言いました。
「でもさっき心臓動いてた…病院いけば…」
私は泣きながら言いましたが、確かにもう心臓も動いていません。


わぁぁぁぁぁぁぁぁあ!
Pちゃんごめんねごめんね!
私のせいで死んじゃった!
私がエサの時間ずらしちゃったからだめだった!
エサを食べてる間に湯たんぽを替えればよかったんや!
前のエサが遅かったから、時間ずれちゃった!
倉庫の外にでたら、うしろについてくるのわかってるのに!
何のために柵を用意してたんや!


Pちゃん、私を追いかけて道路渡ってきたんやね…。
私が店の中に入ったら、ちょうど車が来て
いつもは車が来たらあわてて倉庫の中にかくれるのに
倉庫の反対側にいたから、戻ろうとして飛び出したんやね…。



ごめんねごめんねごめんねPちゃん!
私のせいで死んじゃった!


わんわん泣き叫ぶ私を夫と次男が抱え上げ
「おまえのせいじゃない!Pの寿命やったんや」
「お母さんのせいじゃないよ。絶対違うよ」
交互に声をかけてくれましたが



「私がエサの時間ずらしたから~!
柵もせずに湯たんぽ持って外へでたから~!
Pちゃんが追いかけてくるのわかってるのに~!
私が湯たんぽにお湯入れてる間にPちゃん死んじゃった~!
さっきまでPちゃん、湯たんぽとるなってしがみついてたのに
トイレでおしっこしてたのに
なんでなんでなんでPちゃ~ん!
こんなに血が出てかわいそうに…。
かわいそうにPちゃん
痛かったね、痛かったね、ごめんねPちゃぁぁぁぁん!」


私は号泣しました。
親が死んだ時も、ここまで泣き叫びませんでした。


「ほら、そんな冷たい床の上にPを置いてやるな。
もう家の中に入れてやれよ。
あったかい部屋に寝かせてやれ」
夫が倉庫からPちゃんの段ボールベッドを持ってきました。


ベッドにPちゃんを寝かせ
そのままファンヒーターのある部屋に置きました。


「Pちゃん、ほら、暖かいでしょ。
私たちはこんな暖かい部屋に住んでるんやよ。
Pちゃんは寒い倉庫に住ませて、ごめんね。ごめんね。
あんな寒いとこにずっといて、Pちゃん偉かったね」


「ほーら、P。あったかいやろ。
世の中にこんなあったかいもんがあるとは知らんかったやろ」


口々にPちゃんに声をかけました。
次男が一所懸命にPちゃんの目を閉じさせようとしていましたが
「Pちゃん、全然目を閉じてくれんよ。お母さんの方ばかり見てる」
と言いました。


血だらけのPちゃんの口と鼻を拭いてやりましたが
頭を動かすたびに鼻血が出ます。
頭のてっぺんを撫でてやると、出っ張ったものに触りました。
「頭蓋骨が割れてるよ。だから頭を動かすと鼻血が出るんや」
次男がぽつりと言いました。


その夜は
Pちゃんの隣に布団をしいて寝ました。
猫と一緒に寝ていた子供時代を思い出し
「Pちゃん、きょうは暖かいとこで寝ようね。
私ね、Pちゃんと一緒に寝るのが夢やった」


朝になり
「Pちゃん、おはよう」と声をかけてPちゃんを見たとたん
またまた涙が止まらず
「Pちゃん!Pちゃん!Pちゃん!」
と号泣する私の声を聞いて、次男が2階から降りてきました。
次男は私の両肩を抱え
「お母さん、いつまでも泣いてたら、Pちゃん成仏できんよ。
お母さんのことが心配で、Pちゃんも困っちゃうよ」。


次男はいつも
「俺の部屋にPちゃんが寝てて、朝はPちゃんが起こしてくれるのが理想やなあ。
んで、俺のうしろからとんとんって階段降りてくるの」
と口癖のように言ってました。
猫が好きで、でも飼っちゃだめだと言われてて
やっと猫が飼えて夢のような生活だった次男。
悲しくてしかたないはずなのに、涙を見せずに私を励ましてくれます。
なんて情けない親だ、私。


ふたりでPちゃんの体を初めて洗ってやりました。
「ほーらPちゃん、気持ちいいでしょ。
いっつも耳のうしろ掻いてたね。
洗ったから、もう痒くないよ。
お医者さんがね、Pちゃんはノミもダニもいなくてきれいですよって。
成長の具合もいいですねって」


体を乾かしてやると
いつものPちゃんのニオイがしました。
夫はこのニオイを「ケモノ臭い」と言っていましたが
そのたびに「いいニオイやん。私、猫のニオイ好きやよ」と言い返してました。


Pちゃんのニオイがする。
頭も、お腹も。
私、Pちゃんのニオイが好き。


次男と二人で動物供養のお寺にPちゃんを連れて行きました。
お寺の人に「花とPちゃんの好きだったものを持ってきてください」と言われていたので
Pちゃんが母猫のおっぱいを思い出していつも吸っていた手袋
キャットフード
湯たんぽ
いつも遊んでいたプラスチックのミカン
そして花屋さんでブーケを作ってもらいました。


お寺に着いたら
Pちゃんの大好きな雪が降ってきました。
先月の雪の日、生まれて初めて雪を見たPちゃんは
はしゃぎまわって、雪を食べようとしたぐらい喜んでいました。
「ほら、Pちゃんの大好きな雪やよ。みてごらん」
次男がPちゃんの顔を出させました。


お坊さんに供養していただき
Pちゃんの位牌を納めました。
最期のお別れの時は
Pちゃんの顔を見てまた涙がとまらなくなりました。


たくさんの位牌を見た次男は
「こんなに大勢ともだちがいたら、Pちゃんも寂しくないよ」
と言いました。
「Pちゃんのお骨は観音像の下に埋めます。
位牌は6年間ここにありますから、いつでも見に来てください」
お寺の人に言われ、また涙。
ほんとに情けない親だ、私。


そしてお寺から帰ってきて
このブログを書いてます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
写真をほとんど撮ってやれなかったのが心残りですが


保護した当時のPちゃん。
倉庫の隅っこを走り回って逃げていたので
顔がまっくろに汚れています。




飼うことになり、トイレを買ってやったのですが
トイレだとわからず、隠れ場所だと思って
遊んでいます。




死ぬ1週間前。
寒いので、日の当たる場所をみつけてひなたぼっこ。



同じ日。
柱に上るのが大好き。



目が大きくてまん丸で、ちょっとタレ目のかわいい子でした。

顔がうまく撮れなかったので
きのう撮ってやるつもりでした。
でも配達で帰宅がおそくなったので撮れず。
まさかその夜に死ぬなんて
思ってもいなかった。



気持ちの整理ができてないので長文になってすみません。
読んでくださった方、ほんとにありがとうございました。


親に置いていかれた子猫・Pちゃんのおはなし

2010-12-25 15:55:00 | 
「倉庫に猫が住んでますね」。
11月が終わろうという時
商品を配送してくれているドライバーさんがおっしゃいました。


「え!猫ですか?」
「はい。商品を搬入してたら、倉庫の2階からこっちを見てましたよ」


倉庫の2階の一角には
昔、物置として使っていた屋根裏があるのですが
あまりに古くなりすぎて危険なので
人が入れないように封鎖してあります。


どうもそこに野良猫がはいって子供を産んだようです。
そういえばその直前、倉庫に猫が入っていくのを見たことがありました。
あわてて追いかけたのですが見あたらず
2階にも探しに行ったのですが
例の屋根裏は人が近づけないようになっているので探せませんでした。
「どこに行ったんだろう?商品にイタズラされると困るなあ」。


その夜
子猫をくわえた親猫が
倉庫の2階から走って降りてきて
外へ去ったのを見たと夫がいいました。
ああ、出て行ってくれたんだ。
ほっとしつつ、猫好きの私としては、ちょっとひっかかるものがありました。


閉店時間になり
倉庫のシャッターを下ろしに行った夫が
「ちょっと、手伝ってくれ。倉庫に子猫が隠れてる」と
慌てて私を呼びに来ました。


ビールびんが20本入ったプラスチックケースのことを
業界用語(笑)で「P箱」といいます。
P箱を逆さにして並べると、しっかりとした台になるので
重い商品を積んでおくのに利用しています。
P箱を並べてベッドに活用される方もよくいらっしゃいますね。


その並べたP箱の下に
子猫が隠れていました。
夫が手を入れて捕まえようとしますが
おびえた子猫は
P箱の下を走って逃げまどいます。


私も舌をチッチッチッと鳴らして近づこうとしましたが
子猫は倉庫の中を縦横無尽に走り回って、捕まえられません。
やっとのことで夫がP箱の下の子猫をつかみました。
ミャーーーーッ!!
それまで声を出さなかった子猫が、悲鳴のような声をあげました。


夫に首すじをつかまれた子猫は
ほんとに小さくて
でも目が大きくてまん丸、ちょっとタレ気味の
とてもかわいい三毛猫です。


「外に放してやれば親が連れに来るだろう」
夫は子猫を倉庫の横に放してやり
「ほれ、もうすぐ母ちゃんが迎えにくるぞ!長生きするんやぞ!」
そう声をかけ、子猫も鳴きながら歩いていったのですが…。


次の朝
またもや倉庫の横にきのうの子猫が佇んでいました。
ミャア~、ミャア~と鳴き続けています。
「親、来ないやん。どうしよう」
「おなかすいてるんだろうな。でもエサをやるわけにはいかないし」


うちは店舗兼住宅なので
動物を飼うのは自粛してきました。
店に毛が舞ったり、動物のニオイがつくのを避けていたのです。
息子たちが幼い頃、犬や猫を飼いたいと言いましたが
店をやっているからダメだと諭してきました。


だから、飼えもしないのに
無責任にエサをやったりしたら
自分でエサを探して生きていくことはできなくなるし
周辺にフンをしたり、うるさく鳴いたり、子供を産んだりと
近所迷惑になってしまいます。


ここは心を鬼にして放っておこう、と
猫好きの私にはかなり苦行だったのですが
無視を決め込みました。
そのうち姿が見えなくなり
ほっとしたのも束の間


倉庫内の車庫に入ったら
「ミャアー」。
え!車庫に入っちゃったか!
探してみると、何十年も置きっぱなしの機械類や工具類の合間に
ちょこんと座っています。


でも、生まれてから一度も人間と接したことのなかった子猫。
こちらが手を伸ばすと、ささっと逃げます。
そしてまた「ミャアーミャアー」と鳴き続け。


「ごめんね、うちでは飼えないから、ごはんあげられないの」
そう言って、倉庫の向かい側にある店舗に戻りましたが
道路を挟んでいても「ミャーッ、ミャーッ」の声が絶え間なく聞こえます。


「猫がいる!」
近所の小学生が寄ってくる。
「あら、にゃんこがいるよ。かわいいねえ」
孫を連れたおばあさんが見に来る。
「奥さん、猫飼ってるんですか?」
仕入れ先の担当さんが聞いてくる。
「猫ですか!うちも3匹飼ってますよ!」
集金して帰ったメーカーさんが、戻ってきて話しかける。
ちょっとした招き猫?
にしても、猫好きさん意外に多いんだなあ。


丸2日何も食べてない。
親もこない。
この子、死んじゃうよ。
でもエサやれないし。


みゃあーっ、みゃあーっ、みゃあーっ。


ううむ、芥川龍之介の「杜子春」の気分だわ。
家で飼えないけど…倉庫なら…まっいっかー…いいよな。うんうん。


花かつおを小皿に入れて子猫の前に置いたのですが
おなかすいてるはずなのに、ニオイをくんくんと嗅いだだけで食べない。
「ひょっとしてこの子、母乳以外のもの食べたことないんじゃ…!」


ドラッグストアへ走り
子猫用の離乳食を買ってきて与えました。
やはりこれも最初は食べてくれなかったのですが
少し口にして、やっと食べ物だと認識した様子。
あっという間に完食しました。


ただ、倉庫で飼うといっても
倉庫は寒い!
床も壁もコンクリートで、通気する構造なので冷気が入り
冬は冷蔵庫より気温が下がります。
段ボールにバスタオルを敷いて置いてやったら
中に入ってちょこんと座りました。
でもこれじゃ夜は寒かろう。


いくら寒いとはいえ
夜中は万が一のことがあるので、電気製品を使ってやることができません。
使い捨てカイロも、もし濡らして発火したりすると危険です。
ホームセンターへ行って
保温材と断熱材を使った猫の布団を買いました。
ヒーターでぬくぬく、としてやることはできませんが
これでも少しは冷えから守ってやれるでしょう。


そしてトイレ。
猫のトイレはプラスチックのトレー型、とばかり思っていましたが
今はドーム型で、砂が飛び散らない構造の物があるんですね。
倉庫は寒いから、これはいいやと購入。
砂もニオイを吸収するつくりになっていて
浦島太郎のように驚いてばかりの私。


布団もトイレも
おっかなびっくりしながら使ってくれた子猫ですが
警戒心の強さは半端ない。
なんせ親兄弟としか接したことがなかったんですから
人間=恐怖
なんでしょうね。
毎日エサをやるので、近づいてはくれるものの
こちらが手を出すと、さっと後ずさり。
かわいい鳴き声もまったく出さなくなりました。


そして約3週間。
たまたま私の誕生日の朝
いつものように
「Pちゃん、おはよう」と声をかけてエサをやりました。
そうそう、名前はPちゃんです。
P箱の下に隠れていたのでPちゃん。


すると突然
「みゃあ~」と鳴きながら
Pちゃんが頭をすり寄せてきて
私の膝に、ちょこんと乗りました。


「ええええ?なになにPちゃん!」
突然のことにびっくり。
Pちゃんは膝の上でくつろいで
のどをゴロゴロゴロ。


やっと心開いてくれた~!
しかも私の誕生日に!
これはサプライズプレゼント。


でもPちゃんは
兄弟とじゃれあった経験が少ないのか
噛みつき加減やひっかき加減がうまく調節できません。
遊んでいるつもりでも
手におもいっきり噛みついたりひっかいたり。
あっという間に私の手は傷だらけ。痛い痛い。


こりゃたまらん、と
100円ショップで指先をカットした手袋を購入。
これで噛みつかれても平気。


手袋を着けてPちゃんの相手。
Pちゃんが膝に乗ってきて
手袋に気づきました。


するとPちゃん
手袋についているボアを噛みだしました。


よく見ると、噛んでるんじゃなくて
ちゅーちゅー吸ってるんです。
吸いながら、前足で交互に
手袋をギュッギュッと押してる。


母猫のおっぱいを思い出したんだ…。


子猫はおっぱいを吸う時
前足で母猫の乳房を押しながら吸うんです。
押して母乳を出させるんですね。


手袋のボアが
母猫のお腹の毛並みに似てたんでしょうか。
Pちゃんはいつまでもボアを吸いながら
前足で押しています。


「Pちゃん、それおっぱいじゃないよ。吸っても何も出ないよ」
声をかけましたが、もちろん通じるはずもなく
目を閉じて、いつまでも吸いながら押しています。
手袋はぐちゃぐちゃ。


Pちゃんだって、おっぱいが出ないとはわかってるんですね。
それでもお母さんを思い出して、いつまでも吸ってる。


「Pちゃんのお母さん、どこ行っちゃったんだろうね」


ある日突然、お母さんがいなくなったPちゃん。
私と一緒。


どれぐらいの時間、吸ってたでしょうか。
ようやくボアから口を離したPちゃん
私の顔を見て
「にゃあ~」。


猫の言葉はわからないので
Pちゃんの鳴いた意味もわかりませんが
怒っていないことは確かでした。


大きくなあれ。
Pちゃん。