医大生の青春と葛藤を描いた日本映画の名作「ヒポクラテスたち」。
楽天レンタルが期間限定で旧作無料だったので借りてみました。
この映画が公開された1980年は
私もリアルに大学生だったので
映画館で観ることができました。
この年の日本映画は元気でした。
「ヒポクラテスたち」にも出演していた、鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」。
いまやソフトバンクのお母さん、樋口可南子が若く美しい「戒厳令の夜」。
伝説の俳優・松田優作と小林麻美が出演「野獣死すべし」。
松坂慶子の美人度最高潮「わるいやつら」「五番町夕霧楼」。
カドカワのお金の掛け方がハンパなかった「復活の日」。
海は死~にま~すか~の「二百三高地」。
そして忘れちゃいけない
世界のクロサワの「影武者」もこの年公開でした。
30年の時を経て観てみた「ヒポクラテスたち」。
当然ですが、まずキャストの若さに驚かされます。
一緒に観ていた次男(19歳)は
内藤剛志・阿藤快・斉藤洋介があまりにも若すぎてまったくわからなかったそうです。
確かに!
内藤剛志なんかロン毛のカーリーヘアだし
阿藤快は役柄のせいもあって、松岡修造のように見えます。
でも柄本明は見た瞬間わかったそうですよ(笑)。変わらない人なのよね。
最終学年の医大生たちが
大学病院で実習を通して医療の現実を体験していきます。
正義感に燃える学生もいれば
自信喪失していく学生もいます。
大学の寮では
国家権力と医療について、激論する学生たちがいます。
医大では、二浪三浪は当たり前。四浪五浪も珍しくないので
学生と言えど年齢は様々です。
そんな中で現役合格した1年生などは、「少年」の言葉がぴったりくる幼さです。
主人公もかつては
様々な医療問題について抗議運動に加わった過去があります。
でも最終学年の今は
ただ実習をこなして試験を受け、卒業に向かう普通の学生です。
しかし自分自身について、漠然とした疑問と不安を持ち続けています。
その不安感は、恋人が悪徳病院の堕胎手術で不妊になってしまったことにより頂点に達し
やがて精神に異常をきたしていきます。
ストーリーだけだと重く深刻な映画のようですが
軽いタッチで描いているので
笑いあり、ホロっとくるところありの楽しい作品です。
なんと手塚治虫が医師役で出演していたり
原田芳雄も説教の多い執刀医役で登場します。
北山修がCT技師役でフォーク・クルセダースについて熱弁を振るうシーンは
今見ても笑えます。
端々に織り込んでいる実験映画的な手法は
当時の若手監督や学生の自主制作映画で流行していたやり方です。
30年たった今あらためて観てみると
なつかしいと同時に新鮮な感じを受けます。
このころ、学生の自主制作と言えば8ミリでした。
ビデオカメラなんてとても買える代物じゃなかったし。
価格が現代とは2ケタぐらい違ってたと思います。
素人でもきれいな映像が撮れるようになった今
8ミリの粗い映像は却って印象的です。
この映画が公開当時話題になったのは
解散・引退したキャンディーズのランちゃんの
復帰第一作だったということもあります。
ランちゃんの役どころは重要でした。
主人公と同じグループで実習する女子学生。
ずっと優等生で過ごしてきて
勉強ができたから、成績がよかったからという理由だけで医大を受験して合格。
だけど医者になりたかったわけじゃない。
単位もとれて、実習が終われば国家試験。
でも自分は医者になる資格があるのか?
実習していくうちに、彼女は自問自答を繰り返し
すべてを放棄してしまいます。
次男は映画を観ながら
「喫煙者多すぎじゃね?」と言いました。
あ、ほんとだ。
登場人物全員たばこ吸ってます。
そうだね。今じゃほとんど見ない光景だわ。
30年前の京都の学生たち。
寮の様子も飲み屋の雰囲気も
私がリアルに思い出せることばかりです。
そういえば
大学で同級生だった男子が
この映画の撮影現場を見に行ったそうで
出演していた新人女優(妊娠中絶したいと来院した女子高生役)と
一緒に写真を撮らせてもらったと言ってました。
その彼も
今では大手新聞社でコラムを執筆する論説委員です。
時の流れを感じます。
これは公開当時のパンフレットです。
映画のパンフレットというか、ATGの機関誌なんですけど
パンフとして売られていました。
中には映画の台本がまるまる載っています。
表紙の真ん中に載っているのがランちゃん。
その右下が手塚治虫
左下が斉藤洋介
一番下の右端が内藤剛志です。
夫は試写会でこの映画を観たそうです。
「京一会館」という、当時の映画マニアの聖地で。
舞台挨拶に来ていた内藤剛志が
背が高く、存在感があって
すごくかっこよかったそうですよ。
ところでその夫ですが
私が観ているうしろから覗き込んで
「おっ、『ヒポクラテスたち』かぁ。なつかしい。ランちゃんかわいかったなあ」としゃべり出しました。
そこまではいいのですが
「そういや古尾谷雅人って最近映画に出ないなあ」
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マジで言ってんだよねこれが…