ROCK & CINEMA DAYS

映画とROCKと猫が大好きです

またタイタニックか

2008-06-20 21:13:46 | 映画
挑戦的なタイトルをつけてしまったけれど
私は「タイタニック」のアンチじゃないんですよ。
むしろ逆。
この前テレビでやってた時
「またタイタニックか」と思いながら
最後まで観てしまいました。
そして感想。
「よーできた映画やなあ。感心しますね」。

この映画は、主人公ふたりのラブストーリーがウケて大ヒットしたわけですが
私的には、はっきり言ってどーでもいい。
なんでジャックが美人とは思えないフツーの女の子に一目惚れしちゃったのか。
そこからして感情移入できなかったので、
まあ、このふたりの話は、8割方どーでもよかった。

私が感心したのは
この映画の骨組みと言うか、構成。
まさに「映画のストーリーというのは、こうやって組み立てるもんですよ」といわんばかりの、映画の教科書のような作品だったからです。

ストーリーは、タイタニックの事故で生き延びた女性の回想で始まるわけですが
これがうまいですね。
いきなりラブストーリーにせず
回想として語らせていく。
ともすれば甘甘になりがちな話を、ワンクッションおいて
「これは、もう終わった話なんだよ」と締めてから始める。
なんともうまい。よく考えた。
刑事コロンボとか、古畑任三郎みたいなもんかな。

私が一番感心したのは
実際にあった出来事と
作り話とを
クロスさせて
また離したところです。

タイタニックの事故は、実際にあった話ですね。
ふたりのラブストーリーは、映画上の作り話です。

実際にあった「タイタニック」という豪華客船の中で
実際にはなかった男女のラブストーリーが展開されます。
そしてタイタニックは海に沈み、長い長い年月を経て眠ったままです。
一方、作り話であるふたりのうちのひとり、ローズは、
調査団にラブストーリーを聞かせ、話し終えると
眠ったまま天に召されます。

つまり
この映画の中で
作り話の世界の人間たちは
現実にあったタイタニックの中でさまざまなストーリーを展開し
最後には
作り話の世界に還っていくのです。

それはラストシーンが物語っています。
ローズは天に召され、当時のタイタニックの中に入っていきます。
老女だった彼女は、当時の17歳の姿に戻っています。
中で出迎えてくれる人々は、全員事故で亡くなった人です。
そしてあの時のままのジャックがローズを抱きしめます。

ここで「映画・タイタニック」のおとぎ話の部分は
ハッピーエンドになるのです。

もう、参りました!って感じですね。

最初に、「ふたりのラブストーリーは8割方どーでもいい」と書きましたが
あとの2割は感動しましたよ。
その2割はどこかって、やっぱラストですよ。
だって、84年ぶりですよ。
84年待って、やっと再会できたんですよっっっ。
84年…どんだけ~な年月ですね。
おそらく84年も待ち続けられる相手なんて、ほとんどの人がいないでしょう。
そんなに生きてないしね、だいたい。
84年ぶりのキス…ギャラリーたちのスタンディングオベーションに混じって
こっちまで立ち上がりたくなります。

でもタイタニックには悲しい現実がたくさん描かれてましたね。
特に、救命ボートが足りないんで、
安い客室の乗客たちが見殺しにされるところ。
地獄の沙汰も金次第か~と
凹むシーンでした。




ROCK1973年

2008-06-14 23:01:15 | ロック
私が毎日聴いているFM局が、今週はスペシャルとして
各番組が1970年から2000年までのうちの1年をピックアップして
その年の洋楽ヒットをかけるというありがたい企画をやっています。

月曜から明日の日曜まで、全部の番組がいずれかの年を担当します。
どの番組がどの年を担当するのかは、聴くまでわからないという、
商売上手ですね。Radio-iさん(笑)。

で、
私が好きな番組のひとつ、土曜の夜8時から10時までやっている
「トラヴェリン・ロック」。
70年代ロックをかけまくる番組です。
この番組も今週は企画に参加、ちょうど今聴いてるんですが
なんと1973年担当ですと。
私が中学1年生の年。こりゃ聴かなあかんやろぉ。

いきなりT-REXの「20Century Boy」です。
それからスレイドの「CUM ON FEEL THE NOIZE 」(←若い方へ・スペルまちがってるわけじゃないのよ!こういうスペルなの!)
グランドファンクの「AMERICAN BAND」
ドゥービーの「LONG TRAIN RUNNIN'」
などなど、私たち世代の人は、ラジオの前でキャーキャー騒いでるんじゃないでしょうか。

1973年は、重大事件として、ストーンズ来日中止騒動があげられていました。
この年って確か「アンジー」発売したよなあと思っていたら、予想通り「アンジー」が流れました。
私がストーンズの曲の中でも珍しくキライ…いや、好きではないもののひとつですが。
だって陰気くさいからねぇ。歌詞も演歌っぽいし。
だけど流行りましたね。私もシングルレコード買いましたもん(キライやのになんで買うんやて!)。

さらに1973年は、ビッグアーティストがデビューした年でもあったそうです。
“ボス”ブルース・スプリングスティーンやレーナード・スキナード、
クイーン、エアロスミス。
エアロスミスは過去のブログにも書きましたが、初来日ライブに行ったくらい好きでしたね。
ただ、エアロスミスはレコードジャケットのセンスが悪いので有名でした。
確かにsoppo

でも、4枚目の「ROCKS」はそれまでのジャケットよりはマシになって、
曲もすごくかっこよくなってました。
初めて友達の家で発売されたばかりの「ROCKS」を聴いた時は衝撃でした。
1曲目の「BACK IN THE SADDLE」がむちゃくちゃかっこよくて
「おぉ-、かっこええ~」と友達と騒いだものです。
特にベースがいい、と意見が一致しました。

ベースのトムは地味だったんで、よく友達と「仕事せーよトム」と偉そうに言ってたんですね。ほんとに生意気なガキだったわ。
「この曲のベースすごいやん!トム、やる時はやるなあ!」
「ちゃんと仕事してるやん!」
と私たちの間ではトムの株急上昇。
しかしその後、「BACK IN THE SADDLE」だけはギターのジョー・ペリーがベースを弾いていたとの情報が入り、
「…トム、メインの曲でベース弾かせてもらえんってどうよ」
「やっぱりヘタなんやないの。わざわざジョーが弾くくらいやから」
と大暴落でした。

「ROCKS」は日本でも大ヒットして、ファンとしては次のアルバムが待ち遠しかったです。
そして5枚目のアルバム「Draw the Line」が出たわけですが、ジャケットが…。
「せっかくジャケットのセンス良くなってきたのに、また元に戻ったー!」
と、これは私の友達が発した言葉です。私が言ったわけではありませんよん。

1973年はグラムあり、ハードあり、プログレありでロックの戦国時代みたいでした。
レーナード・スキナードの「FREE BIRD」が流れてますが、いい曲だなあ。死んじゃったなあ…。
この2年後にはパンクが台頭してくるんですね。

この企画はいいんだけど、私はひとこと言いたい。
きのう1975年の担当をした番組で
レッド・ツェッペリンの「フィジカル・グラフィティ」が発売された年だとひとしきりアルバムの紹介をしたあと
「TRAMPLED UNDER FOOT」です、と言って「THE ROVER」を流したのにはビビった。
しかもDJは間違いに気づかず、曲が終わってからも
「レッド・ツェッペリンの TRAMPLED UNDER FOOT でしたっ」
と元気よく言ってくれたのにはhihihi
スタッフも誰ひとり間違いに気づかなかったと見え、オンエアされた曲をHPで検索したら、1日たった今も「TRAMPLED UNDER FOOT」と表示されたままなんですが。






シャイニング

2008-06-12 21:55:24 | 映画
「人生が変わる1分間の深イイ話」という番組を、毎週息子が観ています。
私はあまりこの番組は観たいとは思わないのですが、宿題があろうがテスト前日であろうがテレビの前で教科書広げながら観ている息子に、ついついつきあって観てしまってます(←テレビ観ながら勉強すんじゃねえ!)。

まあ、私も仕事したり家事したりしながらなのでじっくりと観ているわけではないのですが、ここんとこ映画にまつわる話が多くないですか?
んで、びっくりしたのが「シャイニング」の話でした。

監督のキューブリックは、主人公の妻役のシェリー・デュヴァルが狂った夫から逃げようとするシーンのカットでなんと
NG127回
出したそうです。ギネス記録だって。ふぇ~。

追いつめられて頭の中が真っ白になった状態をシェリーに体現させるために、わざとNG出し続けたんだそうです。
完璧主義のキューブリックらしいとは言え、そりゃやりすぎだろぉ。
シェリーもジャック・ニコルソンもよく耐えたもんだ。さすがプロ。

さっそくそのシーンを You Tube でおさらい。
懐かしくなって、他のシーンも次々観ていきました。
「シャイニング」を観たことのない息子は
"Here's Johnny!!!"のシーンで、「こえええぇぇぇえ」とウケてました。
あと、いきなり双子の姉妹が現れるシーンも「こわっ。何こいつら」だそうです。

「シャイニング」は私が大学生の時公開されました。
「バリー・リンドン」以来ひさびさのキューブリック作品ということで、どんな映画だろうと友達の間でも話題になりました。
オカルト映画らしい、という情報が流れ
「いまごろオカルト~?」
と、みんなでのけぞったものです。
70年代初頭に「エクソシスト」「ヘルハウス」「悪魔のいけにえ」などなどオカルトやらホラーやらが大ブームとなり、70年代後半の「サスペリア」で頂点に達した感がありましたからね。
「なんでいまごろ?キューブリックって、時代を先取りしすぎてるか遅れてるかどっちやの?」
「先取りしすぎて次のオカルトブームまで行ったってことじゃない?」
なんて会話をしたものです。

でもね、初めて「シャイニング」を観た時は、全然こわくなかったんですよ。
オープニングはちょっとこわかったですけどね。あの音楽が。
なんつーの、直接的なこわさじゃないのね、他のオカルトやホラーみたいに。
たとえば「リング」とか「悪魔のいけにえ」みたいに、観ながら「ぎゃ~!」と叫んでしまうこわさではないんです。
そういう恐怖映画に慣れてしまっているので、「シャイニング」を観終わったあと、映画館の客たちが
「全然こわくないやん」
と言って出て行くのを聞きながら「同感同感」と心の中で思っていました。

しかし、しかしですよ。
映画を観てから2~3日後、ふっと思い出してみると

    ぞぞぞぞぞぞぞぞ~
と背中に悪寒が走るんですよ。
この恐怖は何?
観た直後は全然こわくなかったのに。
なんかさ、まるで、若い人は運動した直後に筋肉痛になるけど、年くうと何日かしてから筋肉痛になるって状況と似てませんか。
きっと「シャイニング」は、「恐怖」を感じる神経をゆーっくりゆーっくり辿っていって、到達した頃には全身を恐怖で征服してるって映画なんでしょうね。
こわっ。
画期的な兵器かよっ。

キューブリックで思い出しましたが
私のザ・モスト・フェイバリット・ムービーの
「時計じかけのオレンジ」。
あの映画で主役のマルコム・マクドウェルが
ルドビコ療法という犯罪者矯正治療を施されているシーンで
あわや失明、という危ない状態になったそうです。
(映画では、両目を閉じられないように器具で固定されていました)
確かにあのシーンのマルコムの眼は充血して真っ赤でしたが
ほんとにヤバかったんですね。
しかもキューブリックは
謝罪もなく治療費も出さなかったとのことで
マルコムはかなり立腹して
訴訟をおこしたとかおこさなかったとか…という話です。

「シャイニング」では、もちろんジャック・ニコルソンの狂気的な演技がみどころではありますが、あの子役もすごかったですね。
公開当時、11PMでメーキングビデオを流してましたが
キューブリックの「○○の方を見て!」「そこに隠れて!」と言う端的な指示だけで
言われた以上の演技をしてしまうんです。
あの子は今も役者なんでしょうか。

あ、「深イイ話」に戻りますが
ゆうべはチャップリンの名言が紹介されてました。
曰く、

「人生はクローズアップで観れば悲劇
だがロングショットで観れば喜劇だ」


う~ん、これは納得!
さすがチャップリン!








「オール1の落ちこぼれ、教師になる」の宮本延春さん

2008-06-02 17:11:35 | 
「金八先生」のドラマでも紹介されたという、ご存じ奇跡の高校教師・宮本延春さん。
けさの新聞に彼のコラムが載っていたので読んでみたんですが、やっぱりこの人はすごい。

コラムの内容は、中高生向けの助言なのです。
どうも月一回のペースで掲載されているようですね。

今日のテーマは「なぜ幸せになりたいのか」。
要約してみると、こういうことです。↓
     
××××××××××××××××××××××××××××××××××××

人間が生きる理由は、幸せになることが目標、と言っても過言ではない。
そして幸せの基準は、人それぞれである。

しかし
自分が幸せだと感じる心は
幸せしか知らない人には育たない。

自分が幸せだと感じるためには
幸せを測るための物差しが必要である。
その物差しとは
「不幸な経験」
「不幸を感じ取れる感受性を磨く経験」。

つらさを経験して今の幸せを知ることができる。
病気を経験して健康のありがたみを知ることができる。

自分が遭遇する「つらいこと」「いやなこと」は
幸せな時間やすてきな場面を増幅してくれる貴重な経験である。

そう考えれば、つらいことにも意味があるのではないか。

××××××××××××××××××××××××××××××××××××

ほぉ~と朝から納得してしまいました。
私が前回のブログで、杉山登志の遺書についてちょろっと触れたことと、同じではないにしても遠からずな見解なんで、うれしかったですね。
ちょっとおこがましいですが(笑)。

この宮本延春さん、今さら紹介するまでもないと思うんですが、一応書いておきます。
小学生の時にいじめで不登校になり、勉強をまったくしないまま中学校に進学。
かけ算の九九も2の段までしか言えず、書ける漢字は自分の名前だけ。
成績はオール1で高校進学もムリ。
中学卒業後、大工の見習いなど苦労しながら成長し、
23歳の時、恋人に貸してもらったアインシュタインのビデオを観て感銘を受け、大学進学を志す。
小学3年生のドリルから勉強を始め、24歳で定時制高校入学、3年後には名古屋大学理学部物理学科に合格。
大学院まで進んだのち、自らの希望で母校の数学教師となる。

この「オール1の落ちこぼれ、教師になる」を読んだんですが、
これだけ波乱の半生が書かれているにもかかわらず
文面がまったくギラギラしてないんですね。
サラーっと読み進める。

たいていこういう自叙伝というのは、書き手の話し口調で書かれているのが多くて
(ゴーストライターが書いているからかもしれないけれど)
「俺ってこんなすごい経験してきたんだぞー!」みたいなパターンだけど
これはそういうところが全くない。淡々としてる。
自分を客観的に見てるんですよ。だから押しつけがましくない。
教師に向いてると思いますね。

タイトルは「落ちこぼれ」だけど、宮本さんは頭が悪いわけじゃないんですよね。
むしろ逆な人です。
でないとこんな奇跡は起こらなかったでしょう。
誰もが宮本さんのようになれるわけじゃない。
頭がいいだけじゃなく、彼の場合は桁外れの集中力があったんです。
それと「目標設定」。

宮本さんは「名古屋大学へ行って物理の研究をする」という、揺るぎない目標を設定しました。
その目標に、自分の生活すべてをシフトしたんだから、もう「参りました」としか言えないでしょう。
もちろん、周りの方々の協力がなければ、結果はどうなっていたかわからないですけれど。

宮本さんの場合は、バカだと思われていた人間が、実は頭がよかったと発掘された希有な例ですが
実際には、発掘されないまま(本人も頭のいいことに気づかず)人生を終えていく人がたくさんいるんでしょうね。
悲しいことではあります。