鴨着く島

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広島平和記念式典2022

2022-08-06 13:27:03 | 日本の時事風景
広島への原爆投下からまる77年、78回目の暑い夏がやって来た。


(NHKの生中継画面から)
8時に始まった中継で、実況のアナウンサーは「広島は午前8時現在晴れで27℃、湿度は82%」と言っていた。
おそらく最低気温は25℃を上回る熱帯夜だったのだろう。大型テントの中の外国人席に座る多くの参列者は気温もさることながら、湿度が高いのでしきりに団扇か扇を使っていた。

今年の話題は、何と言ってもご当地出身の岸田衆議院議員が総理大臣になり、初めての広島平和祈念式典に参列することになったことだろう。

それと国連の事務総長であるグテーレス氏が事務総長として初めて参列したことも意義深い。

グテーレス事務総長は、昨年開かれた核兵器禁止条約締結国会議の席上で、日本へのオブザーバー参加を期待していた人物である。

日本が世界で最初の被爆国であり、その悲惨な体験から広島市および長崎市は毎年核廃絶を訴えていることは十分に承知しているのだが、国としてはNPT(核不拡散条約)を通じてのみ「核兵器の無い世界」を訴え続ける立場に終始しているのを歯がゆい思いで見ていることだろう。

また核兵器禁止条約を主導してノーベル平和賞を受賞した「ICAN」(核兵器廃絶国際キャンペーン)からも、グテーレス事務総長と同様の疑問が投げかけられている。

日本が容認しているNPTとは現在の公認された5つの核大国だけが保有を許され、そのほかの国々は所有してはならないーーという条約で、その核保有国とは取りも直さず国連安全保障会議の五つの常任理事国(米英仏ロ中)である。

日本はその中のアメリカとは1960年以来、相互安全保障条約(1951年の旧安保に対して新安保)を結んでおり、したがってアメリカの核の傘のもとに安全を保障されているがゆえに、その核が無くなってしまっては元も子もないと考えているので、核兵器禁止には踏み切れないのだ。

昔よく「日本の常識は世界の非常識」と言われた。この格言(?)は「日本人は水と安全はタダだと思っているのだが、水はともかくとして、安全は相当な防衛への意志と防衛力を持たなければならないのに、アメリカと結んだ安保でアメリカが日本を守ってくれるから安心だ」という「平和ボケ」に対する箴言であった。

核兵器に関しても同様で、政府の「アメリカの核(の傘)によって日本は安全なのだから、核兵器禁止は考えられない。でも唯一の被爆国として、核保有国と核非保有国との間の橋渡しをして、核兵器のない世界に導く」という主張は、自民党とアメリカ国防省の一部でしか通用しない論理で、世界から見れば「何言ってんの?」だろう。

日本がアメリカの核の傘から抜け出し、フリーになった上で「核保有国と非保有国との橋渡しをする」と言わなければ、世界を納得させられないのだ。

つまり日米安全保障条約という国連憲章上疑義のある「二国間軍事条約」を廃棄した上で、「唯一の被爆被災国として、核兵器の保有そのものを廃絶するように訴える」と言うのなら筋が通るのだ。非保有国は拍手喝采し、核保有国も廃絶への道を探るようになるだろう。

そのような平和へのイニシアチブは日本に与えられた責務ではないだろうか。(※「世界平和統一家庭連合」などというまやかしの平和団体に鼻毛を抜かれている自民党こそが「平和ボケ」そのものだ。)