鴨着く島

大隅の風土と歴史を紹介していきます

国産ワクチンは前途遼遠

2021-06-04 10:02:18 | 日本の時事風景
昨日からこちらでは「梅雨末期の豪雨」に近い雨が降り続いている。今朝9時頃まで薩摩・大隅地方には大雨警報が出ていた。5月の総降雨量が平年の2.5倍くらいになったといい、今年の梅雨、入り口でこの盛況では半端なく、今後の大雨が心配される。

さて、日本の新型コロナワクチン接種で、医療従事者に関しては、ようやく3分の2で2回目の接種が終わったという。

2月末から始まった医療関係者への先行接種が、やっと終盤に差し掛かって来たというところだが、しかし反面、約500万人への接種が3か月経ってもまだ完全には終わっていないということでもあるから、その遅さには呆れる。

65歳以上の高齢者への接種は、予約が取れない高齢者が続出した割には順調に進み、すでに1000万人を超える高齢者が1回目を済ませ、2回済ませた人たちもいるという。だが政府の言う「7月末までに3600万の高齢者すべてに接種を終える」というのは難しいかもしれない。

仮にすべてが順調に進んでも、東京オリンピック開会式の7月23日の時点では、まだ高齢者の2回目の接種が継続しているわけである。オリンピックに関心が高く、競技観戦を非常に楽しみにしている中高年や家族連れたちはそのあとになるというのでは、何とも気の毒な話だ。

私の考えは国産ワクチンを開発した上で「もう一年の延期」だが、先日、東京都の小池知事が「延期するとオリンピック施設の大会後の利用予約がすべてキャンセルになり、それでなくとも一年待ってもらっていることから、延期は考えられない」と言っていた。

利用予約もだが、選手村の払い下げや多額の協賛金を負担している会社への配慮もあるのだろう。組織委員会の橋本聖子会長も今年の開催をどうしても推し進めたいと述べており、政府サイドからの「中止(延期)したい」との思惑は全く無くなったようである。

まあ、開催するにしても、ワクチン未接種者がわんさかいる状態だから、いかにして感染爆発を防ぐかの対策に絞られるわけで、これはある意味で「賭け」だろう。

アメリカやイギリス、フランスなど先進国の新聞メディアはこぞって開催反対の論陣を張っているが、止められないのはIOCのごり押しと、それを資金面で「操っているように見える」テレビ系のアメリカメディアへの配慮だろうか?

彼らのおかげで気候の良い秋の開催を阻まれた上に、まだ忖度しなければならぬとは情けない「開催国日本と東京都」だ。

いま日本では、4社が新型コロナ用ワクチンの開発をしているという。

第一三共、塩野義製薬、アンジェス、KMバイオロジクスだが、このうちアンジェスが最も早く、去年の6月から治験を開始しているのでもう出来ていてもよさそうだが、遅い理由は分からない。

中で最大の製薬会社「第一三共」のは、いま日本に輸入されているファイザーと同じ「mRNA」を使うものだそうで、やっとこの3月から治験が開始された。

「mRNA」(メッセンジャーRNA)というのは今一よく分からない。侵入した新型コロナウイルスの遺伝子を読み取って複製することで体内の細胞に免疫反応を誘発させるやり方で、従来のDNAを使うよりはるかに早く効果が現れるそうだ。

ただ、mRNAを体内に入れると強い拒絶反応によって壊されてしまうのが欠点だった。それを可能にしたのが「壊れないように油膜に包む」方法だった。

これを開発したのが、ハンガリーからアメリカに渡り研究者となったカリコー・カタリンという女性で、つい先日、この人と京都大iPS細胞研究所のノーベル賞学者山中伸弥氏がリモートで会談するのを視聴する機会があった。

ハンガリー時代にすでにヒントのような着想があり、それをアメリカでの研究で成し遂げようとしたが、なかなか芽が出なかったそうで、山中教授の同情を誘っていた。山中教授によると、この研究と今度のワクチン実用化の成果によってノーベル賞受賞は間違いないそうだ。

日本でも5年前に東大の教授でアメリカに留学していた石井健氏が、mRNAを使ったワクチン開発プロジェクトを立ち上げたのだが、「ワクチンなんて子どもの病気用だ」と予算化もされずに立ち消えになったという。

この1年を見て、「日本ではワクチンが国防や外交の要という発想がなく。全勢力を挙げて開発するという政府の指導力がなかった」と石井教授は語っている。

国防と外交はアメリカ頼み――という日本の戦後の情けない状況がこの一言に凝縮されているように感じられてならない。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿