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「表現の不自由展・その後」に思う

2019-10-20 19:29:55 | より良き世界のために
 あいちトリエンナーレ2019が75日の会期を終えて14日に閉幕しました。その中の企画展「表現の不自由展・その後」は開幕3日目で中止となり、やっとの思いで漕ぎつけた再開は閉幕6日前のことでした。中止の原因は展示内容に対する抗議です。なかでも従軍慰安婦を思わせる「平和の少女像」と昭和天皇と思われる肖像が焼かれる「焼かれるべき絵」に抗議が集中しました。多数の抗議の中には「ガソリン携行缶を持ってお邪魔する」とした脅迫FAXもありました。このFAXの送り主は威力業務妨害で逮捕されています。そしてこのテロ予告が本企画展を中断させる主因となりました。
 一方河村たかし名古屋市長の発言「日本人の、国民の心を踏みにじるものだ」など政治家による攻撃もありました。更に菅義偉官房長官の発言「補助金交付の決定に当たっては、事実関係を確認、精査して適切に対応したい」が続きます。そして9月末に文化庁は交付採択済だった補助金7800万円全額の中止を決定したのです。これに対して主催者代表の大村秀章愛知県知事は法的手段を講じるとしています。
 この事件については表現の自由を保障した憲法21条への抵触問題、文化を保護・育成する任務を負った文化庁の背任問題などが既に論じられています。しかし私はここで全く異なる視点からこの問題を考えてみたいと思います。
 今放送中のNHK大河ドラマ「いだてん」は記録的な低視聴率に喘いでいますが、10月13日の放送で私はNHKを見直しました。敗戦直後の満州で多くの日本女性が進駐してきたロシア兵の餌食となります。しかし一人の日本人が呟くのです。「これまで日本兵がやって来たことだ」と。NHKは戦争被害のみならず加害の事実にも触れたのです。
 一方先程の河村たかし氏や文化庁の言動はその加害の事実にかかわる物事を今の日本人の目から隠そうとしています。更に自分たちの感覚が日本人全体を代表すると思い込んでいる驕りすらあります。しかし私を含め日本人の中にも事実を直視した上で隣国民と和解し合うべきと考える国民が居るのです。
 「平和の少女像」の作者は韓国人です。現在の朝鮮半島人の心の奥底にこの像が常に在ると全ての日本人が知るためにこの企画展の存在意義があったのではないでしょうか。一方「焼かれるべき絵」の作者は日本人ですが、朝鮮半島の人々や中国人の心の奥底にあるものを表現していると受け取れます。今韓国との関係が最悪の状態になっていますが、真に隣人として和解するためにはお互いの心の内を理解し合わなければなりません。その為には見たくないものを隠したり否定するのではなく、直視した上で和解し合わなければなりません。そして我が国の首相や国会議長などが現地で被害者やその遺族に直接謝罪する必要があります。また改めて個別補償に応じる必要もあるでしょう。
 1965年の日韓請求権協定は朴正煕韓国大統領の働きかけで締結されましたが、個人賠償の為に日本が支払った3億円は経済発展用途に流用されました。この政権は軍事独裁政権であり、言論の自由も無く、当時その事実は韓国民には知らされませんでした。一方今の韓国は民主国家であって言論の自由が保障され、現文在寅政権はその中で選ばれ、韓国民の多数意見を代表しています。ある意味で革命が起きたに等しい不連続性があるのです。「65年の協定を守れ」の一辺倒では済まないと思うのです。
 今中国は共産党の独裁政治が続き、北朝鮮も軍事独裁政権が続いています。もし仮にこの2国が民主化され、言論の自由が保障されたとすれば、民主中国も民主北朝鮮も今の韓国と同様それぞれの国民の多数意見に押されて戦時被害の個人賠償請求問題が起きて来る可能性もあるのではないでしょうか。