昨年12月に中国武漢市から始まったCOVID19禍は世界中に広まってパンデミックとなり、もうすぐ1年目を迎えます。この間夏のブラジルなど南半球でも蔓延し、半年後には日本など北半球の夏でも衰えませんでした。まさに季節性の無い新しいタイプのウィルス性インフルエンザと言えるでしょう。恐らく地球上の全ての人が何らかのパンデミックの影響を受けた鬱陶しい生活を強いられていることと思います。人類の進化を現したイラストをあなたもきっと見たことがあるでしょう。初めはチンパンジーにそっくりで、だんだん腰が伸びて頭が高くなり、最後は直立歩行の現代人になる図です。今そのあとにもう一つ更に進化した人類を追加したくなりました。それはマスクを着けた人です。
今年の3月、英国のブラウン元首相は世界の主要国の指導者に対し一時的に「世界政府」を設立するよう呼び掛けました。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて医療・経済両面での危機に対応するためだと言います。「これは一つの国で対応できる問題ではない。協調した世界的な対応が必要だ」と指摘し、まずは医療で緊急対応が必要だとしながらも「医療に介入すればするほど、経済を危機にさらすことになる」と述べました。その上で、強い権限を持つ世界的な「タスクフォース(特別作業班)」をつくり、ワクチンの共同開発のほか、中央銀行による金融緩和や政府による財政出動での協調、新興国からの資本流出の阻止などに取り組むよう求めたのです。
世界は第一次世界大戦の戦禍の甚大さに驚いて世界平和のために国際連盟を設立しました。しかしこれには議決の全会一致主義や軍隊不保持など幾つかの弱点があって僅か21年後には第二次世界大戦が勃発しました。その惨禍は第一次のそれを遥かに上回るものであり、その反省のもとに国際連合が作られたのです。以来75年、国際連合は連綿と続いてきました。議決は多数決主義となり、PKOなど寄せ集めの軍隊も持ちました。その点は国際連盟よりも改善されたといえます。しかしこれでも力不足でした。まともに機能したのは1956年のスエズ動乱までと言われています。その後は東西冷戦が激しくなり、安全保証理事会がまともに機能せず、国際紛争が丸く収められたためしがありません。
国際連合の弱点はそれが単なる国家間のサロン的な集まりに過ぎないことです。各国の国権はいささかも制約されず、各国の得失がまともにぶつかり合います。国連総会の決議は各国に対して強制力を持ちません。唯一安全保証理事会の決議が強制力を持ち得ますが、拒否権を持つ常任理事国の総意が纏まりません。90年以降東西冷戦終結後も米中露の間で拒否権の応酬が続いています。仮にまとまったとしてもその実力組織としての国連軍が存在しないのです。あるのはPKOなど米国を中心とする有志連合ですが、最近は安保理決議にも基づかない、単なる暴力団のような存在になり果てています。そして更に今その米国が自国第一主義のもと、世界の保安官役を辞めたのです。
このコロナ禍は第三次世界大戦にも匹敵する大惨事となることでしょう。有効なワクチンや特効薬が作られ、世界の隅々に行き渡るまでその猛威は収まらないでしょう。その後も世界は食糧と貧困の格差が増大し、人心が乱れ、犯罪が増え、暴動・紛争・戦争さえも起きかねません。私たち世界連邦主義者は今、臍を噛んでいます。世界の環境問題・食料問題・人口問題・貧困問題・地域紛争などを一日も早く解決するために国連を改革・強化しようとして来たのですが、その前にパンデミックという強敵に遭遇したのです。3月の英国ブラウン元首相の発言を好機と捉えましょう。更に4月、米国キッシンジャー元国務長官は「各国の指導者が国家単位で危機に対処しているが、ウイルスは国境を認識しない。個別の努力だけでは限界がある。世界的な協力が伴わなければならない」と強調された。またつい先日ゴルバチョフ元ソ連大統領は朝日新聞への寄稿で「それは国家のレベルを超えたものだ。今回の危機は文明が瀬戸際にあることを示している。人類は包括的な対応を一緒に練り上げる必要がある。国際協力に踏み出し、より信頼できる国際安全保障システムをつくるためだ。」と述べられました。
2017年に国連で採択された核兵器禁止条約はあと数か国が批准すれば発効します。年内には発行すると見られています。この条約を推進したのは国際NGOです。私たち世界連邦主義者も国際NGOとしてこれに続きましょう。私たちはこの3人の元政治家の言葉をベースにして国連改革条約を提案しませんか。核兵器禁止条約と同様、安保理常任理事国とその影響下にある国を除き賛成多数で採択されることでしょう。そして数年後には核兵器禁止条約と同様に発効します。発効すれば国連改革は世界の正義・目標・意志となり、実現への大きなステップになると思うのです。その国連改革条約にどんな内容を盛り込むかは本ブログ内の下記URL「国連改革条約を制定しよう」に書きましたので是非ご参照願います。
https://blog.goo.ne.jp/kanohta/e/50dab572258b296cc331a8679190b43b