世界連邦をご存じない方でも地球温暖化問題については良くご存知の事と思います。 今年の夏はことさら暑く、日本各地でも最高気温記録が次々と塗り替えられ、猛暑日が続いたので身にしみて感じた人も少なくないことでしょう。 南太平洋のツバルなどはサンゴ礁の上の美しい国々ですが、今そこに住む人々は水没の危機にさらされています。 南極や北極などの氷が解けて地球全体の海面上昇が起きているためです。 遠からずそこに住め無くなり移住せざるを得なくなるでしょう。
1997年に締結された京都議定書はこのたびノーベル平和賞を受賞されたアル・ゴアさんが米国副大統領として来日され、イニシアティブをとられた温暖化阻止条約です。 でもそこには米国に次ぐCO2排出国である中国の削減義務は記されておりません。 自らを含む途上国に削減義務が及ぶことに強く反対したためです。 さらに、2001年には米国のブッシュ政権が議定書から離脱しました。 先進国だけに削減義務があるのは公平でなく、米国の国益に反するという理由でした。
その米国は温暖化の表れのひとつといわれた昨年のハリケーン・カトリーヌの衝撃や気候変動がもたらす深刻な諸問題を解き明かした映画「不都合な真実」で警鐘を鳴らしたアル・ゴアさん等の活動もあって、このところ環境問題に対する姿勢を改め、ポスト京都議定書の取り組みのイニシアティブを取ろうとしています。 また国連では1988年に設置された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が温暖化の原因を人為的なCO2の増加と断定するなど地道な努力を続けており、このたびアル・ゴアさんと共にノーベル平和賞に輝きました。
しかし国連や米国を中心としたこのような取り組みで更なる地球温暖化を防ぎ、この未曾有の人類の危機を乗り越えることができるのでしょうか。 はなはだ心もとないといわざるを得ません。 なぜならばこれらがすべて国際つまり国を単位とする話し合いや取り決めつまり条約でしか物事が決まらないからです。 国は国益を最優先にして行動します。 これは上記の中国や米国の行動を見れば一目瞭然です。 そして条約は強制力を持ちません。 自国に都合が悪くなれば一方的に解消できるものです。 はなはだしくは国連からの離脱さえ可能なのが現在の世界システムなのです。
今後もポスト京都議定書の取り組みに向けて、インドネシア・バリでのCOP13や来年の洞爺湖サミットなど世界中でさまざまなレベルでの温暖化対策に関する取り決めや努力が続けられることでしょう。 しかし極力自国に有利になるように努める国はこれからも後を絶たず、また自国に不都合な取り決めからは離脱する国も出てくることと思います。 これは現在の世界システムが国連決議という道義と、条約という縛りしか持ち得ない以上致し方ない能力の限界なのです。 かくして2050年の地球の温度は現在我々が期待する数値をはるかに上回り、大変深刻な危機状態に陥ると予見せざるを得ません。
ではこの未曾有の人類の危機を乗り越えるにはどうすればよいでしょうか。 地球温暖化のような全世界レベルの問題に関してのみ各国の国境を取り払い、世界法を作って統治するしかありません。 その部分に関しては各国の主権を犠牲にすることを許容して貰わなくてはなりません。 しかし人類の存続という命題と引き換えるのであれば我慢していただけるのではないでしょうか。 それには世界レベル問題世界議会、同世界理事会、同世界裁判所が必要になります。
同議会は現在の国連総会とは異なり、各国の人口に大略比例した数の代議員で構成され、世界レベル問題に対する世界法を制定します。 国連総会は大国も小国も区別無く一国一票のため、かえって非民主的といわれ、米国などの大国が国連を疎んじる原因にもなっています。 世界法の中にはこの世界システム全体を賄う資金の調達方法も含まれています。 次に同理事会は世界法の執行機関であり、幾つかの大国を常任理事国とし、幾つかの非常任理事国を五大陸からバランス良く選出して構成されます。 ただし、国連安保理のような常任理事国の拒否権はありません。 世界法に対する国、企業、個人の対応状況を査察・指導し、必要に応じて世界裁判所に提訴します。 同裁判所は世界法に照らして公平な審判を下します。 世界法は条約と異なり罰則を伴った強制力を持ちます。 強制力を具現するものは同理事会の下におかれる世界警察ですが、その構成員は世界中からバランス良く個人の資格で募集され、各自の故国でなく同理事会に忠誠を誓うこととします。
上記のような世界法と世界議会、世界理事会、世界裁判所、世界警察(軍)で構成される世界システムは世界連邦と呼ばれています。 世界連邦はもともと戦争の惨禍や貧困から人類を解き放つ手段として研究され、提案されてきました。 その源流は第二次大戦終結直後の1946年に14カ国の世界連邦主義者グループの代表が集ったルクセンブルグまで遡ります。 しかしそれから61年目の今日でも戦火は依然として中東などで燃え盛っており、貧困も世界の至る所で多くの人々を苦しめています。
過去人類は大規模な戦乱の後にその世界システムを変えてきました。 一回目は第一次世界大戦直後の国際連盟樹立であり、二回目は第二次世界大戦直後の国際連合樹立です。 この伝でいけば三回目つまり世界連邦は第三次世界大戦後でなければ樹立されないのでしょうか。 答えはNOでなければなりません。 核兵器を持った人類にとって次の世界大戦はその滅亡を意味するものですから事前に阻止する必要があります。 それが世界連邦主義者達を突き動かしてきた理由です。 今目前にある地球温暖化問題は人類の滅亡にもつながるという点で第三次世界大戦に匹敵するものではないでしょうか。 人類全体が一致団結してその英知を結集しなければこの難敵には勝利することができないのです。
上記で説明したような、一つあるいは幾つかの人類全体に関わる問題のみに限定された権限を持つ世界政府を世界連邦のミニマリズムと呼びます。 これに対して各国の国境の高さをほぼゼロにしてあたかも地球全体を一つの国家のようにすることを世界連邦のマキシマリズムと呼びますがこれは世界システムの究極の姿であって、現段階では実現性がありません。 各国はその主権、そして国境をできるだけ維持したいのですから、まずは地球環境問題の一点から世界連邦をスタートすべきでしょう。 世界に提案すればこの文頭に掲げたツバルのような危機が差し迫っている国々から手が挙がり始め、次第にその数が増し、やがて世界中が賛同してくれることと思います。
現状、スピードが必要と考えます。
また、軍資金も必要です。
両方を一気に推し進める処方を練っています。
いずれどこかでお会いすることもあるかもしれません。
その節は、どうぞよろしくお願いします。