2020年が暮れて行きます。世界中がコロナ(COVID-19)禍に明け、コロナ禍に暮れた1年でした。地球に生きる誰一人として門外漢で居られないこのウィルスとの戦いは、かつての第二次世界大戦以上に世界が一つにならねば克服できない災害と言えます。この未曽有の難敵に対して人類は如何に戦えたでしょうか。今も続く戦いの中心となるべき国際連合(UN)と世界保健機関(WHO)の戦いぶりを見てみましょう。
WHOは2019年12月にCOVID-19による急性呼吸器疾患が中国武漢市で発生し、ヒトからヒトへの感染が起きた可能性があるという報告を台湾から受けたのですが、この情報を速やかに国際社会に示しませんでした。その理由は中国の存在です。台湾は中国の圧力でWHOのメンバーから外されており、そこからの報告で中国に不利な情報を世界に発することを躊躇ったのです。2020年4月米国トランプ大統領はこれを「WHOが米国から大規模な出資を受けながら中国の肩を持っている」と批判し、WHOへの拠出金を停止する考えを示しました。更に7月には2021年7月6日付でWHOを脱退することを国連に正式通告したのです。それ以降WHOが先頭に立ってコロナ禍と戦っている姿は見えません。そしてUNも米国のこの動きを阻止すべく動いているようには見えないのです。
WHOの弱さは活動の財源を世界各国からの出資に頼っていることです。この度の米国脱退の動きはトランプ氏が11月の大統領選挙で勝つために、コロナ禍封じ込めに大失敗した自身の不手際をWHOに擦り付けようと画策したものに違いありません。しかしそんな身勝手で愚かな企みに依ってさえもWHOという国際機関の動きが止まってしまうのです。そしてこの弱さはWHOに限りません。UNそれ自体も同じ弱さを持っているのです。UNの財源は加盟各国の分担金に依っています。米国は最大の約2割を分担しますが、同時に最大の滞納国でもあります。UNの縛りは弱く、滞納も脱退そのものも止める力は無いのです。国連総会は重要機関の一つですが、その決議に法的効力はありません。もう一つの重要機関である安保理事会の議決は法的効力を持ちますが、常任理事国である米・露・中の何れかの拒否権発動で殆どの議案が潰れてしまい、ほぼ機能不全の状態です。
1990年の冷戦終結以降、東西の経済が融合を開始し、中国の急速な経済発展もあって世界のグローバル化が進みました。国境のハードルを下げた欧州連合(EU)の誕生・拡大・発展もその最たる成果と言えます。これを第一次グローバル化と呼びましょう。そして今2020年の世界は挫折感に満ちています。EUでは英国の脱退が決まり、中東からの難民受け入れの苦痛に加盟各国が呻吟し、難民排除を目指す右派政治勢力の台頭を招いています。彼らの勢いが更に増せばEU分裂の方向に進みかねません。米国では新自由主義の弊害で極端な富の偏在が起こり、これに怒った低所得層が米国第一主義のトランプ氏を大統領に担ぎ上げました。トランプ氏は地球環境、核軍縮、多国間経済連携、中東紛争国際合意などの悉くを破棄しました。それはこれまでの米国が担ってきた世界のリーダー役を降りることです。世界のリーダーは多少自国に不利があっても世界全体の利益を考えて行動しなければなりません。トランプ氏がこの4年間に取った行動の全ては自己の2期目の再選だけを目指したものでした。
あと数日で始まる2021年から次のグローバル段階を目指しましょう。先ずは国連改革・強化が必要です。立法・行政・司法の分立で民主的な組織にしなければなりません。議会はEUに倣って国家代表でなく、人民代表議員で構成され、議決されたら法的効力を持ちます。安保理は常任理事国も拒否権も無くして内閣組織とし、その首長は議会の多数決で選出されます。司法は行政が人選し、議会の立法を監視します。新国連の財源は各国・各人の所得に応じた累進課税でなければなりません。滞納にはペナルティが課せられます。また新国連からの脱退は許されません。
仏国の経済学者ピケティ氏の書籍「21世紀の資本」によれば「自由主義経済下では資本家に所得が集中していく」とあります。事実昨今では世界の所得上位80人の合計額が下位35億人のそれと同じだと言われています。更に最下位の10億人が食うや食わずの極貧に喘いでいるのです。この極端な貧富の差を放置してはなりません。これまで世界はこれを国連世界食糧計画(WFP)などの「施し」事業にゆだねて根本的な対策を怠って来ました。それが中東やアフリカ、南アジア諸国を中心とする幾多の紛争の主原因です。この地球上で生産しうる食糧や資源には限界があります。従って世界人口も新国連によって計画的に制御されなければなりません。その上で全ての人に「健康的・文化的な生活をおくる権利」を保障すべきです。勿論その原資は世界中から集めた税金です。
来月中に発効する「核兵器禁止条約」は国連総会で可決されたものです。これに倣って「国連改革・強化条約」を国連総会で決議しましょう。「核兵器禁止条約」の場合と同様に安保理常任理事国とその取り巻き国は反対するでしょう。しかし「核兵器禁止条約」の場合と同様に世界の多くの国の賛同を得て成立する可能性はあるのです。成立すればやがて「核兵器禁止条約」の場合と同様に発効することでしょう。こうして新国連が組織され、「次のグローバル段階」への改革がスタートします。その基本はこれまでの野放図な自由主義経済体制でなく、民主主義に基づき、誰一人として取り残さない世界政治体制の構築です。中国をはじめとする非民主主義強権国家は自ずと民主化せざるを得なくなることでしょう。かくして貧困と隷従と戦争の無い世界に近づきます。
戦争が無くなれば約20兆米ドルに迫る世界の軍事費の殆どが不要となり、世界警察組織の経費以外は人々の福祉に充てられます。皆さん、この新国連による「次のグローバル段階」の世界を目指して一歩踏み出しませんか。