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近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

技術と技能の意味(5回シリーズその3)

2013年02月12日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 視点を変えると、NC旋盤は数値制御によって、人間が判断していた単一作業を数値に置き換えて命令を出すため、大量生産には利用できても、製品の形状が変わる少量多品種生産には向かない。溶接ロボットや、塗装ロボットについても、熟練技能者の作業方法をロボットに教えたもの(ティーチング)であり、同様で、大量生産向けに作られていて、少量多品種生産や試作品には向いていない。最近のマシニングセンターでは、多品種少量生産も可能であるが、それには品種ごとのプログラムが必要で、熟練工の段取りが欠かせない。我が国では機械工といえば、汎用旋盤も、フライス盤も、NC工作機もマシニングセンターも使いこなしており、狭い範囲の単能工を指すわけではない。

 特に、我が国の職業人は、専門家として、製品製作の多様化に対処できる能力だけではなく、開発、設計から、生産、品質管理、メンテナンスや苦情処理までほとんどの業務をこなすオールマイティな多能工(熟練工)である。技能者、技術者と呼んでいても実は多能工である。小池 和雄氏はこのことを知的熟練という言葉を使っているが、本人に聞いたわけではないので、当を得ているかどうかは不明である。

 我が国の人材育成と昇進はジョブローテーションによって、関係する職場を経験し、年数を経るに従い、工員から班長、職長、工場長、管理部門をも経験し、企業の上層部に道が開かれている。技術者として採用されても、従事する期間は短期であれ、現場を経験させる。生産現場を知らなければ応用技術や設計、管理等を担当しても製品開発には結びつかない。高度熟練工が我が国の産業界を支えてきたのであり、高度熟練工とは、技能分野だけでなく技術分野にも長けた人材である。(次回へ続きます)