ベニマシコ♂♀
最近読んだ本に「十楽の夢」(著者 岩井三四二、文春文庫)があるが、戦国時代の伊勢の長島を中心に、廻船問屋が主人公で、織田信長との戦の物語である。長島一揆のことがよく書かれており、興味深く読んだ。僧侶が民衆に対し行う救済は、一向宗門徒でなければ地獄に堕ちるという教えに疑問を持ち、親鸞聖人の本意を知り、信心の在り方を求める話も含まれている。
物質的に見れば、死によって、身体を構成している諸元素が自然界へ帰るので、炭素や窒素や水素等が質量保存の法則によって、異なった物質となって存在し、自然界へ放出されるため、身体を構成した物質の絶対量は変わらない。死んだ身体はなくなるのではない。むしろ、魂は質量がないため、死によって精神は無になる。何とも味気ないが、生と死を物質面から見れば単純明快である。
食物連鎖の頂点に君臨する人類が、繁栄してきたのは、多くの生物を死に追いやることによって、衣食住の環境を手に入れてきた。決して人の生死だけを問題にするのではなく、人類が生きるために犠牲となったあまねく生物の生死へも、もっと想いを馳せるべきだと思う。(このシリーズ最終回です)