サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

やったぜ、ブラインドサッカー日本代表 パラリンピック出場に王手!

2011年12月23日 | ブラインドサッカー

ブラインドサッカー日本代表、韓国に勝利し勝ち点3ゲット!
しかも劇的な逆転勝ち!
いやあ興奮しました。仙台まで来て生観戦した価値がありました。

寒風の中、12時前に試合会場に到着。
会場はなんと野球場。ライト付近に壁がセッティングされ、観客は一塁側スタンドから観戦。

第1試合は、すでにパラリンピック出場を決めている強豪中国とイランの対戦。
中国は前日に2-0で日本に勝利、勝ち点3を獲得。イランは韓国と1対1で引き分けている。
中国チームは2年前に観た事があるが、イランは初めて。
ペルシャ語と中国語の飛び交う中、キックオフ。
前半3分にはイランの6番が切り返しから強烈なシュート。しかし身体能力抜群の中国のGKが弾き出す。
6番の選手(シャルハビザデ?)を見て、かつてのイラン代表、アリ・カリミとマハダビキアを思い出した。共通するのは球際の強さ、そして強引さとテクニックを併せ持つこと。
6番は体の入れ方もうまく、ボールを奪われない。ドリブルも、いわゆるブラインドサッカー的なドリブルではないように見えて、ターンなども実にうまい。
過去、晴眼者のなかでサッカーをやっていたのだろうか。
しかし、その後は基本的には両チームとも1人が攻撃、3人は自陣で守り、得点の気配は見えない。(ブラインドサッカーは、4人のフィールドプレーヤーとGKの計5名でプレーする。GKは晴眼者)。中国はシュートも放てない。
しかし後半に入り、中国がPKを決め、1対0とイランを破った。
その結果、中国は勝ち点6で決勝進出決定。イランは勝ち点1のまま。


第2試合には日本代表が登場。観客も次々と詰めかけた。
ちなみに同時刻には、同じく仙台市内で東北ドリームスvs JAPANスターズのチャリティマッチが開催されている。
試合中は声を出した応援がほとんどできないので、試合前にサポーターが熱い気持ちを選手たちに伝える(もちろん俺も)。
1敗している日本は、この試合に敗れるとパラリンピック出場の夢が早くも絶たれてしまう。
重要な一戦が14時過ぎにキックオフされた。

先発は、アキ(田中章仁)、オッチー(落合啓士)、カトケン(加藤健人)、ヤンマー(山口修一)、GKはゴリ(佐藤大介)。

日本代表の国際試合を観るのは2年ぶりになるが、戦術的にもかなり進化を遂げている印象を受けた。
例えば2年前の大会時は、パスをつないでいくサッカーを指向してしていることはわかるものの、現実的にはパスがつながらず、攻撃が分断されることが多々見受けられた。
その時の対戦相手は中国だったが、壁を使ってGKからパスを送り、前線の選手が1人ドリブルで攻め込む中国の方が、面白くはなくともある意味、理にはかなっていた。

今回の日本代表は、他の3カ国のように1人が攻めて個人技で崩すのではなく、前からプレスに行き、機を見て2人目、3人目が上がっていったりなど分厚い攻撃を見せると同時に、GKがボールを持った時などには選手が両サイド(壁)に開き、うまく壁を使うなど柔軟性を持った進化を遂げていた。
また選手交代も、以前と比べてとてもうまく機能し、ポジションチェンジもスムーズに見えた。
ただ、攻撃から守備への切りかえが遅れたり、その際のポジショニングが悪くスペースが埋められていない場面が多々あり、失点につながらなくてもよいがというふうに試合を観ていた。

この1戦にかける日本選手の気合は並々ならぬものがあり、勝ちたいという気持ちはピッチからビシバシと伝わってきたが、気持ちが空回りした点もあったのか、ファールも多く、前半20分(くらい)には韓国に第2PKを与えてしまう。
選手や観客が祈るような気持ちで見つめるなか、韓国の選手が枠を外してくれた。
前半終了間際には、アキが素晴らしい上がりを見せ、韓国ゴールを脅かすが、前半を0対0で折り返す。

しかし後半6分、先制点をあげるたのは韓国。
薄くなったDFの間隙を縫うような形であれよあれよと言う間にゴールされてしまった。

その後、トモ(黒田智成田)が次々に韓国ゴールに攻め込む。
トモは本当に体の入れ方、使い方がうまい。
とにかくまずは1点を返さないと、パラリンピックへの道は絶たれてしまう。

そしてむかえた後半16分、日本の左CKのチャンス。
ガッツを見せていたオッチーが、ドルブルで持ち込み右足を振りぬく。
豪快のシュートがゴールネットを突き刺し、1対1の同点。
ガッツポーズも豪快だ。

その後も日本がチャンスを作り出すが、残された時間もあとわずかとなった終了間際、
トモが右サイドから持ち込んで素早い振りからシュート!
GKに当たったボールがゴール内に吸い込まれる。
日本の逆転!
観客席のほぼ全員が即座に立ち上がり、喜びを選手達と共有する。
「ヤッター」
そして終了のホイッスル。
日本勝ったー!

明日(24日)、イランに勝てばパラリンピック出場が決まる。
第1試合の韓国vs中国戦で、韓国が引き分け以下の結果に終われば、日本はイランに引き分け以上でパラリンピック出場が決まる。


試合が終わって通路を歩いていると、
前方を親子(母と娘)が歩いていて、会話がもれ聞こえてきた。

母「目の見える日本代表も、目の見えない日本代表も、同じなんだよ」

…思わず、落涙。


明日は、ブラインドサッカーの“ジョホールバル”。
イランに勝ってパラリンピック出場を決める歴史的な1戦になるはずだ。
見逃すな!
キックオフは14時だ。