スマートネットという思想
FESCO創業時の第二の基本戦略である「バーチャル・コーポレーション戦略」をいかに機能させるか?
固定的な事務所を保有せず、ネット上に存在するまさに「バーチャルな会社形態(仮想企業体)」をと言葉にするのは容易であるが、実際問題として、これをどのように日常の会社経営の中で実現していくか?
この点はコンソーシアム時代から、結構悩みながら考え続けたテーマであった。
「複数企業の人間が、一つの場所に集まらず、いかに効率的・効果的に情報交換をおこない、それぞれの知識と知恵を共有しつつ、一つの会社組織として顧客が満足してくれるサービスを提供していくか?」
この運用を誤れば、複数企業であることがむしろマイナスとなり、高コスト体質の組織に成り下がる。
「インターネットによるIT革命始まりの予感」
1997年創業当時は、95年の「ウィンドウズ95」の市場デビューに象徴されるように、IT技術の潜在力の大きさに世の中が気づき始めた時代。
私自身がコンピュータを始めとしたITリテラシーが高かったのかというと、まったく逆で、米国でのアップル・マッキントッシュの「可愛らしさ」との出会いで、やっとコンピュータを使えた程度であった。当時は、まだ「初歩的なマックファン」の一人であり、マックしか使えなかった。
しかし、所属していた日本総研という情報システム会社には、当然のことながら、ITおたく的な優れた人材には事欠かず、彼らからの日常の刺激が、IT音痴の私がITの無限の可能性に目覚めさせてくれた。
「スマートネット」という発想は、そんな私が命名したFESCOの「バーチャル・コーポレーション戦略」を支える情報システムのコンセプトである。
私は今でもITシステムの開発というのは、徹底的にユーザー側に立つことが不可欠だと思っている。つまり、IT技術の素人の方がむしろ新しいシステム開発には必須であるということだ。
「あれもしたい、これもしたい!」
「こんなことできないの?」
「もっと簡単にできないの?」
「これじゃ使えないよ!」などなど。
こうした素人的ユーザーの生の声をシステムエンジニアに投げつけることが、彼らの開発魂を掻き立てる。日本総研の開発メンバーには、随分生意気で扱い難い顧客だったと思う。
ただやはり、今から思うと当時のITインフラ環境は、私の要求に対してあまりにもプリミティブであった。
「スマートネット」が、本当の「スマート」になれるのは、「Web2・0時代」の到来を迎えたこれからが本番なのではないかと思っている。