FESCO成長の軌跡(2)
「省エネ(顧客指向型)ESCOだけでは、会社は継続できないのではないか」
そんな不安と焦りも感じ始めたころであった。
ただ、今振返って結果として言えることは、「苦境の抜け出す答えは必ず現場にある」という格言の正しさである。
それまで一生懸命に行ってきた工場の省エネ総合診断によると、それも工場の規模が大きければ大きいほど、ある一つのことが分かってきた。
その工場において大幅な省エネやCO2の削減と経済的にバランスできる方策は、木目の細かい「需要側の手法」ではなく、大胆な「供給側の手法」しかないという事実である。
つまり、エネルギー消費量を削減させるという本来の省エネ方策のみにこだわっていると、なかなか顧客の要求に応えられないし、かつビジネスとしても魅力に乏しい。工場を稼動させるためのエネルギーの調達の仕方が適正なのかどうか。そのような工場全体のエネルギーバランスを見るという視点の重要性が分かってきた。
「コージェネレーションシステム」
そのように呼ばれる熱電併給型分散電源によって、工場の敷地内で自家発電を行い、その発電によって派生的に生じる熱を蒸気やお湯に変えて、生産プロセスや工場空調に有効活用する。
これによって、大幅な省エネとCO2削減は可能になり、かつ経済的にも買電と比較してトータルで安価になる。案件によっても差はあるが、少なくとも10%から大きければ30%というような削減率となる。
まさに「環境と経済を両立」させるエネルギー効率化の「エースで4番バッター」ということになる。
この手法をESCO方式、つまりシェアード・セイビングス契約によって、顧客に初期投資負担をさせることなく、ESCO事業者がコージェネ設備を所有し、電気と熱を工場に供給する。
この方式が「供給側ESCO」と位置づける顧客事業所における「自家発電代行事業」または「オンサイト事業」と呼ばれるビジネスモデルである。
創業4年目頃から、この種の顧客ニーズに対応すべく、省エネESCO事業の営業体制を徐々に転換させていった。その効果が収益面に出てきたのが、5期目以降であり、創業5年目にしてやっと単年度黒字化に成功したのである。
実は、このビジネスモデルが急速に拡大したのには、もう一つ大きな理由があったが、その点については、次回に詳述したい。