一人想うこと :  想うままに… 気ままに… 日々徒然に…

『もう一人の自分』という小説を“けん あうる”のペンネームで出版しました。ぜひ読んでみてください。

2005-11-11 21:58:12 | 日記・エッセイ・コラム
kutu1-3
 奥様は朝からせっせとご主人様の靴を磨いている。
でも、よく見ると今朝ご主人様が履いて行った靴と全く同じデザインの靴だ。
「どういうことだ?」と思ってそばによると、奥様は靴の底を見せてくれた。
kutu2-3
「ハハーン、冬靴だあ~」
そう、奥様はいつ雪が積もってもいいように、冬靴を磨いていたのだ。
 僕は下駄箱の中を覗いて見た。
すると他にも同じデザインの靴がある。
全てリーガルのウイングチップだ。
奥様に訊くと、夏用と冬用それぞれ2足づつ、計4足あるそうだ。
ご主人様は学生の時からこの年になるまで、リーガルのウイングチップしか履いたことがないそうだ。
でも、ガチガチのトラッドというほどでもないらしい。
どうやら理由は別にあるようだ。
靴屋に行って、「あれでもない、これでもない」と言って、選んだり履いたりするのが面倒くさいらしい。
リーガルのウイングチップなら、何十年も昔からデザインとサイズは全くと言っていいほど変わっていない。
だから別にご主人様が行かなくても、奥様が代わりに買って来れる。
これが一番の理由らしい。
 ご主人様は衣服や靴には本当に無頓着だ。
放っておくと、とんでもない格好をしている時がある。
奥様が帰ってきて、あわてて着替えを出している。
そんなこともしばしばだ。
なぜ奥様が着替えを出すかって?
恥ずかしい話だが、いまだにご主人様は自分の下着や靴下が箪笥のどこにあるのかさえわかっていない。
 そんなご主人様の靴を磨いている奥様の背中から、「本当に世話がやけるんだから」という声が聞こえたような気がした。


コメント
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