一人想うこと :  想うままに… 気ままに… 日々徒然に…

『もう一人の自分』という小説を“けん あうる”のペンネームで出版しました。ぜひ読んでみてください。

2005-11-20 20:28:11 | 日記・エッセイ・コラム
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 ご主人様の車は、かれこれ15年にもなる結構なご老体だ。
しかし、ご主人様は一向に買い換える気はないようだ。
長年無茶な使い方にも耐えてきた。かなり愛着があるらしい。
でも、さすがに最近は故障が多くなってきた。
 ついこの前も、奥様が買い物に行こうとした時、エンジンルームの下から水が漏れているのに気がついた。
ご主人様を呼んでボンネットを開けると、クーラントが噴いた痕がある。
エンジンを回すとクーラントが「ザーザー」と漏れ出した。
「まずいな、これは」
 翌日、仕事の合間を見て、工場に車を持っていった。
工場といってもディーラーの整備工場ではない。
ご主人様の友人、H社長がやっている整備工場だ。
 車を持って行くと、すぐにいつものメカニックがやって来た。
「どうしました?」
「ラジエターがいかれたみたいだ。クーラントが噴出している」
ご主人様がそう言うと、メカニックはボンネットを開け、故障箇所を確認した。
そして、ご主人様に言った。
「2時間待ってもらえれば、すぐに直しますよ」
「エッ?」と思った。
素人のご主人様にも事の重体さはわかっていた。
ラジエター交換なら1~2日入院かな? と。
それが2時間でやると言う。
半信半疑ながらすぐにやってくれ、と頼んだ。
 待つこと2時間。
本当に2時間でラジエター交換をやってのけた。
持つべきものは信頼できる整備工場とメカニックだ。

 ご主人様の車の大きな故障はこれだけではない。
去年の今頃もあった。
走っている途中に5分おきにエンジンが止まる。
再始動はできるのだが、また5分後にエンジンが止まる。
この時もすぐにH社長の整備工場に車を持っていった。
原因追求に時間がかかり1週間ほど入院した。
エンジンの噴射ポンプではないか。と薄々わかったところでH社長の茶目っ気がでてしまった。
「餅は餅屋だからディーラーに出してみよう」
それを聞いたご主人様は言った。
「ディーラーで直せるわけないよ」
しかし、H社長はニヤニヤしながら多少取引のある向かいのT系列のディラーに車を出してしまった。
 待つこと1週間。
帰って来た答えは、「エンジンテストの結果、どこも問題ありません」
とのことだった。
 ご主人様は車を引き取り、走り出した。
すると、5分後にエンジンは止まった。
すぐにH社長の工場に行き、ご主人様はまくし立てた。
「だから無理だって言ったろ。ディーラーで直せるわけないよ。もう!!」
H社長は頭を掻きながらニヤッと笑い、一言。
「Yさん、1週間時間くれ」
 それからまた1週間待った。
原因はやはり噴射ポンプで、交換すると完全に直った。
この時ほどご主人様のディーラー不信が募ったことはなかった。
でも、考えてみると、ディーラーというのは車を売るのが商売である。
古い車を修理し、長く乗っていられると商売上がったりだ。
そのためか暗に車を買い換えるように勧めてくる。
ご主人様の周りでも、年式の古い車の修理をディーラーに頼むと、高額の修理費を見積もられたり、修理不能と暗に言われた人たちがいる。
古く、愛着のある車を乗り続けるには、やはりH社長のような工場や優秀なメカニックの存在が不可欠だ。
彼らがいる限り、ご主人様の車はまだまだ走り続ける。


コメント
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