仕事したい。使って私を」
「千恵、お前突然何を言い出すのよ」
清子は目を丸くして妹を見た。
千恵は驚く姉を無視して続けた。
「ねえ聞いて、私末子でしょう。それで一番上の姉さんは峠の農家に嫁いでいるし、兄さんは父
さんの跡取っているし、清子姉さんは地元で勤め人してるからここで結婚するでしょう。
だから私は家を出て、少こしくらい遠くへ行っても、父さんも母さんも許してくれると思うの。
今までにそれとなく伏線を張ったり、信号送ったりして地慣らしはしているの。
暗黙の了解は取り付けてるから大丈夫だと思っている。
私ここを出て都会で自分のやれること見つけたいの。だから、ずっとあや姉さんに憧れていた。
今度あや姉さんが帰ったのを知った時は、本当に息が止まるほど驚いたわ。何だか訳も分からな
くびっくりした。
どうしてそんなにショックだったのか最初は分からなかったのだけれど、やがて気が付いたの。
私、あや姉さんの所で働くんだって。
あや姉さんと同じ道を歩くんだって。
いいでしょう。私を連れてって」
彼女の顔は真剣だった。
もう先程までの釣りに興じていた少女の顔は消えていた。
さすがにあやは当惑を隠せない。
彼女は最初戸惑い顔で千恵を見ていたが、やがて真顔で言った。
「千恵ちゃんてしっかりしているのね。考えて計画を樹て、いろいろ準備の手まで打っている。