思いこみの強そうなところは、ちょっと気になるけれど、でも悪くないね。
単なる思い付きでもなさそうだし。
他ならぬ千恵ちゃんの頼みだから、二つ返事で恰好付けたいけれど、生憎私自身これから札幌で、
新しく足場を作らなければならないの。
幸い後盾になってくれる協力者は有能だし、信頼もできる人だけれど、何もかもこれからなのよ」
あやは取りあえず、自分の状況を話してから、千恵のこれかの選択肢について、基本的な意見を
述べた。
一口に服飾関係と行っても、間口は驚くほど広い。どれほどの広さか、一つ一つ上げていても切
りがない。
あやはまずはそのための学校に入る必要があることを告げた。
学校と言っても大学もあるし、専門学校もある。自分は専門学校から始めたが、やはりそれは必
要なことだったと考えている。
「大切なことはどの分野を選び、どこまでのレベルを目標にするかだと思う。単にデパートやブ
ティクの売子になりたいのなら、そういう店で経験を積むことから始めるのも一方法だと思うけれ
ど、どちらにしても最初のスタートラインは充分に考えないといけないわ。
まだ卒業までに一年あるのだから、慌てることはないと思う。
私の所に来るとか来ないとかの話しは、仮にそんなことがあるとしても、ずっと先の話しね」
「まつたくこの子は、いつもこんな風に唐突なのよ。それで周りが振り回されているの」
清子は首を振りながら妹を睨んだ。
「分かりました。充分に納得です。ありがとうございます」
ペコリと頭を下げてから、急に片手を空に向けて突き上げ「うん!」と一言力を込めて言った。