「いや、案外的外れな考えではないぞ。高さん今日はそう言うことで、娘達の護衛をやってくれ。
漁はわし一人でやる。
なあに、大声出したり鈴を鳴らしていてくれりやいいんだ」
「鉄さん脅かさないで下さいよ。それじゃやっぱり出るんですか」
高志は完全に真顔になって、ストーブの前で胡坐をかいて茶をすすっている鉄さんを見た。
鉄さんはその言葉にちょっと考えてから言った。
「高さんがいてくれりゃ大丈夫、わしも安心だ」
「僕は安心ではありません」
「出ないよ」
「本当に」
「本当だわしが保障する。でも山は急な坂ばかりだ、高さんが付いてくれりゃ、何かと心強い、
たのむよ」
「分かりました。護衛やらせてもらいます」
「ごめんなさい、悪いですね」
清子がすまなそうに言った。
「いいえ」
高志は厭々という風でもなさそうに笑って「皆の分鈴はあるんだろうね」と誰にともなく言った。
「4人分あります」
すかさず千恵が答えた。
その答えを聞いて初めて高志は不安を覚えた。