伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ215

2023-07-10 04:58:39 | ジャコシカ・・・小説

 それまではいつまでここに留まるのだと、何か焦りのようなものが募ってきていたのに、あの日

 

からはここにいなくてはならないと、強く思い始めた。

 

 あやのためだとは言わない。そんなことは決してない。私は根っからの自分のことしか考えない

 

人間なんだから。

 

 だがらここに留まれ、ここを出て行くなと命じた声は、それがわし自身のためだとも聞こえたの

 

だ。

 

 体の弱い妻を捨て、幼い我が子に僅かの愛情をかけることすらできなかったわしが、ここで他人

 

の子のために、生来の欲求を抑えて留まるなんてことはできるはずがないんだ。

 

 それなのにわしはここにいなくてはならないと思ってしまった。

 

 いや、ここにいてもいいんだと思ってしまった。

 

 そんな風に自分がどんどん変わって行くなら、慌てて死ぬこともないか、なんて思ったりし

 

て・・・・。

 

 まったく、何かを待っている分けでもないのに考えてしまう。何故かって、でもそんな時は決し

 

て答えなんか見つからからないんだ。

 

 特に、とりつかれたみたいに考えている時は、ますます分からなくなる。

 

 そしてある時、突然何かが起こるんだ。

 

 妻にも何かが襲い、和美にも何かが起きた。

 

 二人ともただ生きていくしかない。

 

 今度の手紙でそのことが良く分かった。

 

 わしは二人に対して罪深いことをした。

 

 どうしょうもない、自分のことしか考えられない、無責任な人間なんだ。


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