ひどい人だということは判ったけれど、それだけではなくて、もっと話したいと思う人になった
と思う。
私の方はそう言うことで、和美さんの方はどうなるの。
返事は書くの。会いには行かないの」
「あやさんはさすがに、めまぐるしい仕事をしてきた人間だ。とてもせっかちだ。
だがわしは一つのことを考えるのに、長い時間がかかる人間なのだ。
だから当分は何もしない。多分できない。
今さら償いなんてできるわけもないし、取り返しなんかつかない。生きていると言えることすら
心苦しく憚られる。
それに和美は返事を求めてはいない。
彼女が求めているのは、この手紙をわしが読むということだけだと思う。
返事がなければ間違いなくわしの手に届き、わしが読んだと思うだろう。
だから返事を書かないのが、一番良い返事なんだと、わしは都合良く考えているのさ。
本当のところは先ほども話したように、どうしたら良いのか、何を書いて良いのか、まるで分か
らないだけなんだ。でも、それでいいのさ。それがわしという人間なんだから」
「その内またひよっこり変わるかも知れない。違う自分が現れるかも知れないしね」
高志が少こし笑いを浮かべて言った。
「うん、分かってくれたがね」
鉄さんは口元で微かに笑みを返して、一升瓶を高志に押しやった。
その瓶を受け取り、初めて自分のコップに注いで一口飲んでから、彼は急に声を明るくして言っ
た。