しかしわしは、未だ二人に対して、どう答えどう説明して良いか分からないんだ。
謝罪や釈明で済むことではない。
もちろん許しなど望むべくもないし、望んでもいない。みんなごまかしになる。もっと逃れよう
もない、絶望的な答えでなければならないんだ。
それがわしには分からない。
もしかしたら、わしは考えることが苦手な人間だから、やはりただ何かが現れるのを待っている
のかも知れない。
それで、流れ歩いてきたのかも知れない」
鉄五郎が言葉を切ると、その音に耳を澄ましているかのように、漬物を噛んだ。
それからコップに残る焼酎を、一気に空けて締めくくるように言った。
「まあ、手紙について言えることは、そんなところだ。どうやら二人には余計な心配をかけてし
まったが、これからわしがどうするとか、どう変わるかということは何もないんだ。わしは相変わ
らず今まで通り、自分のことしか考えられない、無責任な人間のままなんだ。
ただあやには一度、きちんと自分の過去のことについて話さなければならないと思っていた。
あやのお父さんとお母さんには話したのだから、丁度良かった。良い機会だった。
なんだかまた少こし、自分が変われる気がしてきたよ」
鉄五郎の眼がいつになく、優しくあやを見ていた。
「鉄さんのことが少こし、ほんの少こしだけれど解って良かったと思うわ。たぶん解ったなんて
言えないくらいだと思うけれど。
でも良かったわ。身近にいる人のことを、私はもっと解らなければならないと思っているから。
やっとそのことに、気が付き始めたところだから。きっとこれからは、鉄さんのことが違って見
えてくると思う。