伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ10

2018-03-11 17:13:54 | ジャコシカ・・・小説
 「やあ鉄さん、こんな日に良く漁に出たね」

 「なあに昨日揚げていたのを、今朝の凪(なぎ)の内にと思って持って来たのさ」

 鉄さんと呼ばれた、60歳年輩のいかにも漁師らしく日焼けした男が、分厚い防寒着とトックリ

のセーターからのぞかせた表情をわずかに弛めた。

 太い首と、厳(いか)つい肩、少し腫れぼったい眼に顎の張った面長の顔が、高志に鉱山の工事現場の飯

場生活を思い出させた。

 赤間は鉄さんの向かいに腰を下ろすと、毛糸の手袋のままの両手をストーブにかざした。

 「今日は何を揚げたかね、こんな天気続きじゃたいした漁にはならんじゃろう」

 「冬はいつもこんなもんだ。それでもスケソウにソイ、アブラコは縄でボチボチ獲れる。おかげ

で食うには困らん」

 鉄さんはぼそぼそとした声で返す。

 「鉄さんの前浜はこの辺りじゃ一番の漁場だ。おかげでわし等は一年中旨い魚にありつける。あ

りがたいことだ。

 ところで、この若い衆とはもう会っているね」

 「うん、今朝魚を揚げるのを手伝ってもらった」

 「それは良かった。話がし易い。実は彼は昨日、吹雪の峠でわしが馬橇で拾った。その話は?」

 「聞いた。母さん達から、昨夜猛さんがここに泊らせたらしいね」

 「行きがかり上でね。それでまた行きがかり上の話なんだが」

 猛さんはここで言葉を切って、ぐりぐりと眼をむいて高志と鉄さんを交互に見た。

 さすがに一瞬のためらいを見せたが、意を決したように続けた。


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