しかし、ゆるゆると触(ほど)けた笑顔には、茫洋とした優しさが染み出ている。
高志は父親の猛さん以上に親しさを感じて、すっかり寛いだ気分になった。
鉄さんとも気が合うらしい。それは二人の交わす笑顔を見ていると良く分かる。
それでも彼は控え目に、鉄さんから離れた場所に腰を下ろしていた。
そんな息子に猛さんが、いつもより大きな声で話しかける。
「それで竹下さんの来年の勝負は何だ」
「今年と同じで行くらしい。ただ豆を少こし増やすと言っていた」
「今年は天候が良かったから余裕が出たな」
「そればかりでもない。輪作の都合もあるようだし」
「あの親爺は気が多いからなあ」
高志は聞いていて、その会話に気分の弛む心地良さを感じた。
ここは農業の家だ。漁師の小屋で海の話しを聞くのもいいものだが、農家の団欒の場で耕作の話
しを聞くのも心が休まる。
やがてトキさんがほど良く煮こまれた、アブラコを大ぶりの鉢で出してくれた。
カジカ鍋もストーブの上で、そろそろ食べごろだと騒ぎ出している。
そこえ待っていた、もう一人の家族が帰ってきた。
洋子は土間でコートを脱いで畳み、その上にバックを載せて、きちんと両手で持って入ってきた。
挨拶も落ち着いた物腰で、さすが勤めて3年になるお姉さんだ。4歳下の千恵とは違いが際立つ。
しかし妹と比べるならば、違いは歳の差からくるものばかりではなさそうだ。
飾り気のないショートでストレートな髪形も素っ気無く、それはそれで働く女性の雰囲気だが色
白で面長、眼元も口元も控え目な作りが対照的だ。
高志は父親の猛さん以上に親しさを感じて、すっかり寛いだ気分になった。
鉄さんとも気が合うらしい。それは二人の交わす笑顔を見ていると良く分かる。
それでも彼は控え目に、鉄さんから離れた場所に腰を下ろしていた。
そんな息子に猛さんが、いつもより大きな声で話しかける。
「それで竹下さんの来年の勝負は何だ」
「今年と同じで行くらしい。ただ豆を少こし増やすと言っていた」
「今年は天候が良かったから余裕が出たな」
「そればかりでもない。輪作の都合もあるようだし」
「あの親爺は気が多いからなあ」
高志は聞いていて、その会話に気分の弛む心地良さを感じた。
ここは農業の家だ。漁師の小屋で海の話しを聞くのもいいものだが、農家の団欒の場で耕作の話
しを聞くのも心が休まる。
やがてトキさんがほど良く煮こまれた、アブラコを大ぶりの鉢で出してくれた。
カジカ鍋もストーブの上で、そろそろ食べごろだと騒ぎ出している。
そこえ待っていた、もう一人の家族が帰ってきた。
洋子は土間でコートを脱いで畳み、その上にバックを載せて、きちんと両手で持って入ってきた。
挨拶も落ち着いた物腰で、さすが勤めて3年になるお姉さんだ。4歳下の千恵とは違いが際立つ。
しかし妹と比べるならば、違いは歳の差からくるものばかりではなさそうだ。
飾り気のないショートでストレートな髪形も素っ気無く、それはそれで働く女性の雰囲気だが色
白で面長、眼元も口元も控え目な作りが対照的だ。