伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

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ジャコシカ41

2018-05-18 19:24:14 | ジャコシカ・・・小説
 しかし、ゆるゆると触(ほど)けた笑顔には、茫洋とした優しさが染み出ている。

 高志は父親の猛さん以上に親しさを感じて、すっかり寛いだ気分になった。

 鉄さんとも気が合うらしい。それは二人の交わす笑顔を見ていると良く分かる。

 それでも彼は控え目に、鉄さんから離れた場所に腰を下ろしていた。

 そんな息子に猛さんが、いつもより大きな声で話しかける。

 「それで竹下さんの来年の勝負は何だ」

 「今年と同じで行くらしい。ただ豆を少こし増やすと言っていた」

 「今年は天候が良かったから余裕が出たな」

 「そればかりでもない。輪作の都合もあるようだし」

 「あの親爺は気が多いからなあ」

 高志は聞いていて、その会話に気分の弛む心地良さを感じた。

 ここは農業の家だ。漁師の小屋で海の話しを聞くのもいいものだが、農家の団欒の場で耕作の話

しを聞くのも心が休まる。

 やがてトキさんがほど良く煮こまれた、アブラコを大ぶりの鉢で出してくれた。

 カジカ鍋もストーブの上で、そろそろ食べごろだと騒ぎ出している。

 そこえ待っていた、もう一人の家族が帰ってきた。

 洋子は土間でコートを脱いで畳み、その上にバックを載せて、きちんと両手で持って入ってきた。

 挨拶も落ち着いた物腰で、さすが勤めて3年になるお姉さんだ。4歳下の千恵とは違いが際立つ。

 しかし妹と比べるならば、違いは歳の差からくるものばかりではなさそうだ。

 飾り気のないショートでストレートな髪形も素っ気無く、それはそれで働く女性の雰囲気だが色

白で面長、眼元も口元も控え目な作りが対照的だ。 

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