
絶対に必要な人
都心のビルの森はいつも混みあっています。
その中には様々な会社があり、多くの人が仕事をしています。ある会社、ある組織の構成員の中には絶対に必要な人と絶対必要でない人、そしていてもいなくてもいい人がいるものです。
私と同じく入社した彼は競争相手になる人物ではありませんでした。今日も彼は部長に呼ばれて叱責されました。
「君は、いったいやる気があるのか。えっ。」
「それが、ですから、、、それが、ですから、、、申し訳ありません。」
彼は、言葉もちゃんと言うことができず頭だけを掻いていました。上司からあれやこれや失敗を指摘されるのが常で、そういう時になると、男らしさというものは目をこすってみても見つけることができないくらい哀れにな姿になりました。
部長が腹立ち紛れに投げつけた書類を彼は一つ一つ片付けるのでした。
「またか。どうしてあんな風に生きるんだか、まったく。」
一緒に勤務している同僚さえも哀れな彼の後姿に一言二言、言うのでした。ですがそれもしばしの間、何やかや言われて出て行っても、何もなかったようにお盆にコーヒーを載せてきて皆に配りました。
「さあ、コーヒータイムです。」
私は、そんな彼が情けなくさえ思いました。自分の将来もちゃんとできないくせに、人のためにそんなことをするのか、残業する後輩たちの世話をしようと退社時間を遅らせることも多々ありました。
そんな彼が休職届けを出しました。奥さんが悪い病気になったからでした。
「パク主任、今まで、ありがとう。入社同期も多くいないけど、最後まで一緒にいれなくてすまない、、、。」
彼は涙まで浮かべて別れを惜しみましたが、私は形式的な挨拶以外しませんでした。私は、彼が会社を辞めても別に変わるものは無いと思っていました。
ですが、、、彼のいないことは私たち皆にとって、とても大きなことでした。
毎朝に飲んでいた香り高いコーヒーを期待できなくなっただけではなく、机の上のカップにはシミのついたまま埃ばかりが積もりました。ごみ箱にはごみがあふれ、書類は何がどこにあるのかごちゃごちゃになり、人々はだんだんいらいらした顔に変わって行きました。事務室にいっぱいあった余裕は消えたのです。
私はふとキム主任が入れてくれたコーヒーが恋しくなりました。ふと彼のいなくなった席に近づいた時、彼の使った机のガラスの中に小さなメモ紙の文章の一節が目に入ってきました。
「私が楽なときは誰かが苦労して耐えていて、私が少し苦労している時には誰かが楽にしているのだ。」
少し足りないようだけれど実はいつも満ち溢れていた同僚。キム主任こそ私たち皆にとって楽をくれる、私たちにとって絶対に必要な人だったのです。